ぶっとべ！　いきなり旅でしょう？！｜リアクション

ぶっとべ！　いきなり旅でしょう？！

（……屋敷野ェ……）
　実は通信が入りっぱなしでそのときの会話が丸聞こえだった庚は、とりあえず聞かなかったことにして周囲を見渡した。
　犬にぺろぺろされてたじろぐヒゲボタモチの様子を見ながら、彼はふぅ、とため息をついた。

　その後、気を取り直し、再びバイクに跨る庚。だが……、恵山を過ぎたところで庚に異変が起きた。
「５月下旬から６月にかけてはつつじが大変綺麗なんですよ！　……今は３月で寂しいですけど」
　梢の説明を聞き、そういえば温泉は冬季休業だから今はやってないな、と思っていた庚は、僅かに顔を顰めた。
（もうちょいで函館なんだが、なんつーか、いよいよケツが痛くなってきた……）
　彼のお尻にも限界が迫っていたのである。寒さと痛み、疲労で、彼のお尻は悲鳴を上げていた。庚は思わず歯を食いしばった。
（函館着く頃にはこう、なんだ……割れてんじゃねぇか？）
　なんて思ってしまう。そんな事を考えるほどに、彼（のお尻）は疲労していた。が、道路標識に書いてある距離を見ると、あと少しで函館に着く。
「もうすぐですよ庚くん！　あと少しで函館ですっ！」
「おーっしゃあっ！」
　梢の励ましを受け、気合を入れる庚。傾き始めた太陽が、そんな彼らの影を伸ばしていた。

　函館に到着した一行は、痛むお尻もそのままに、とりあえずお土産探検隊として町に繰り出した。
「……撮影終わったら、色々食べていいから……。どーせ戻るのは出発した日の数分後なのでなんなら１泊ぐらいしてもOK」
　と、お尻をさすって遠い目をしたボタモチがそんな事を言ったのでとりあえず撮影を優先にしたのである。
　だが、彼らを待っていたのはおしゃれな町並みを歩くカップルたちだった。微妙に甘い空気漂う町に佇む梢たち。
「それにしても、函館の観光地って……、リア充スポットですよね」
「まぁ、なぁ」
　梢の呟きに、庚が相槌を打つ。スタッフたちはそんな２人の表情もばっちりカメラに収めている横でボタモチは暖かい眼差しを２人に向けている。
　庚はボタモチからガイドブックをひったくると素早くめくり、梢に差し出す。
「とりあえず十字路だっけ？　そこで生チョコでも買ってこうや。あとは市場か？　ホッケとか買ってくべぇよ。俺用に」
「そうですね！　市場に逃げましょう！！」
　庚の提案に乗り、梢が頷く。そんな２人にボタモチが庚からガイドブックを奪い返し、楽しげに言う。
「神様向けにカニとかボタンエビとかは？」
「ぁあ？　神様向けにだと？　バッカヒゲお前、贅沢言ってんじゃねぇよ。スルメにしろ、スルメ」
　腰ぬかせや、と言う庚のジャンバーを引っ張り、梢は「水分含むと膨らむから、猫が食べ過ぎると急性胃拡張など引き起こす事があるみたいですねー」と言いながら十字街へと向かっていった。

　――函館・某市場
「そんなこんなで、如月君と私は先ほど十字街で生チョコレートを買ってきましたっ！」
　カメラに向けて生チョコレートの可愛い袋を見せる梢。彼女は市場に並ぶ商品を興味深そうに眺める。
「で、次はどうする？　やっぱ北海道つったら海産物か？」
　さりげなく市場のおばちゃんと交渉しホッケを購入する庚。梢はその隣にあった鮭とばを見つけてにやり、と笑う。
「この鮭とばに、あっちの塩辛……そして、庚くんが購入したホッケもお付けして」
「だめにきまってんだろ」
　梢の言葉にかぶせる勢いで突っ込む庚。「けちー」と頬を膨らませる梢だったが気を取り直してホッケを購入しなおす。
　ボタモチたちに促され、２人は並んで視聴者へのお土産を紹介することに。
「今回は、イカ飯とたらこのセット、生チョコレートセット、鮭とば・塩辛・ホッケのセットをそれぞれ抽選で２名さまにプレゼントしますっ！」
「応募方法は番組の最後に案内しますので、チャンネルはそのままで！」
　梢と庚はびしっ、とカメラの前で決め、お土産探検隊の撮影を終了するのであった。

『お土産探検隊』（北海道編：終）

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梢「地味って言っても、海、綺麗じゃないですかぁ！　私は寒くないし快適ですよっ♪」
庚「尻以外はな。つーか、俺はめっちゃ寒いっつってんだろ」