ぶっとべ！　いきなり旅でしょう？！｜リアクション

ぶっとべ！　いきなり旅でしょう？！

『【食い友】コンビ体験記』（沖縄編）

　――後で水守君はシメよう。

　行き先とミッションが決まった際、本居陽毬はそう右手を握り締めて思った。水守流が投げたダイス。その出目が逆ならば、箱根で食い倒れだったのに、と。
　しかし、沖縄に来たら来たで美味しいものがある、と考え直し、テンションを上げる陽毬なのであった。
「さーて、やってきました沖縄っ！　この季節でもそこはかとなく暖かいのはありがたいねぇ」
　煌く海を見ながら流はのんびりとした笑顔に。「早速民族衣装を……」とスマホを操作し情報を呼び出そうとする流。だが、陽毬は既にアイスクリームの屋台に目が釘付けだ！　さわやかなライムグリーンや甘酸っぱそうなマンゴーオレンジが陽毬を引き付ける！
「わー、おいしそー！」
「おい、本居！　アイスは後にしろ、後に！」
　首根っこをつかまれて引きずられる陽毬は「あいすぅ……」としょんぼりしてしまう。そんな彼女に、流はびしっ！　と親指で自分を示し言う。
「あと、番組中俺のことはミスターと呼べ！」
「甘いもので撃沈するの？」
「それは言っちゃだめだ。解る人にしかわからない」
　陽毬が首を傾げつつ問えば流が突っ込む。だが、そんな暇はない。流は陽毬の両肩に手を置き、いつになく真面目な顔で言った。
「確かに沖縄には色んなグルメがあるから気を引かれるのはわかる。けど、まずはノルマこなしてからにしよ」
「さとうきび齧りたい」
　だが、陽毬の目はお店に展示されたサトウキビに向いている！
「って話を聞けっ！　言ってる傍から目を向けるなっ！」
　流は陽毬の顔を自分のほうに戻して突っ込んだ。

　そんなこんなで、２人はとりあえず民族衣装が着られる場所を探すことに。
　陽毬はあたりを見渡し、弾むような足取りで歩いていた。親の都合で転校が多かった彼女だが、沖縄には行った事がなかったという。
「うん、折角だしめいっぱい満喫しよっと。きっとその方が視聴者も楽しめるはず！」
「ま、そりゃそうだな。……と、このテーマならこなすのはそんな苦労しねぇんだよな」
　流が相槌を打ちながらスマートフォンで情報を提示する。そこには鍾乳洞の写真や硝子細工、染物体験などが出来る観光施設の紹介がのっていた。沖縄に所縁のある衣装について検索していた陽毬は、その内容を見て小さく頷く。
「そこがやっぱり無難っぽいよね」
「首里の城下町をモチーフにした場所で沖縄民族衣装を着て記念撮影できるみてぇだし、そこいこうぜー」
「うんっ！　琉装かぁ！　鮮やかで綺麗だねぇ！」
　流の提案に、陽毬は笑顔で頷く。さわやかな風が吹く中、陽毬は流を引っ張って観光施設を目指し、突っ走るのだった。
「そこを最終目的地にして、楽しい番組をつくっちゃおう！　やっぱり首里城ははずせないかな？　名前しか知らないけど」
「いや、テーマの方が先で」
　引きずられながらも流は元気な陽毬に突っ込みを入れた。