ぶっとべ！　いきなり旅でしょう？！｜リアクション

ぶっとべ！　いきなり旅でしょう？！

『お土産探検隊（長崎編）』

（あっという間の出来事だったわね……）
　街中を歩いている最中にテレビクルーに捕まった仙藤紫は、１つため息を吐きながらちょっと前までの事を振り返る。
　有無を言わさず旅行に行く羽目になり、ダイスの導きで長崎でのお土産探しをする事になった。唐突感は否めないものの、気晴らしにはいいかもしれない、と気を取り直していた。
　既に進学を決めていた紫としては、ちょっと早めの卒業旅行も兼ねて挑もう、と思う。自由登校なので比較的時間があるとはいえ、大学への入学準備もある。だが、少しぐらいならばよいだろう。

　おしゃれなカフェから始まった紫の旅は、定番のコースを巡る事から始まった。レトロな感じがする町並みを、シックな装いで歩けばノリと勢い重視な旅番組ではなく、大人の女性にぴったりなスポットを紹介する落ちついた旅番組に見えなくもない。
「時期がもう少し早かったら、お祭りがあっていたようね。綺麗なランタンがいっぱい見られたかもしれないわ」
　観光案内でもらったパンフレットを見ながら、グラバー園や大浦天主堂などを行く紫。彼女は、すばらしいステンドグラスの美しさや、素敵な庭園に心を和ませつつ、落ち着いた声色で施設の紹介も行う。
　そうしながらも探すのは『ちょっと珍しくて、実用性のあるお土産』だった。紫は景色を楽しみながらも、そういった場所を探していたのだ。
　グラバー園から歩いていると、硝子を取り扱ったお店を見つけた。ショーウィンドウに飾られたビードロやランプシェードに目が釘付けになった彼女はにっこりと「ここによってみようと思います」とスタッフに言った。

　落ち着いたBGMの流れる店内。そこに飾られていたのは、長崎の名物であるビードロ細工だけではなかった。
「このランプシェード、なかなか素敵ね。それに……」
　紫がショーウィンドウで見たランプシェード以外にもステンドグラスの飾り物や長崎らしい絵柄を彫ったグラス、硝子で作られた龍などが飾られていた。どれもこれも美しいが、実用性もありそうだった。
「これはこれで可愛いわね」
　思わず呟いたのは、天使の姿をした硝子細工や小さなマスコット。これには思わず優しい顔になる。
　色々考えた末に購入したのは、ランプシェードと、ビードロ細工、ステンドパネルに、酒器セット２種、タンブラーだった。
（このランプシェード、なかなか可愛いかも）
　いいものが見つかった、と内心ほっこりする紫だった。

　次に向かったのは、カステラやからすみなど食べ物系のお土産を扱うお店だった。
「やはり、食べ物も抑えておきたいわね。からすみなんかはご年配の方に好まれるかしら？」
　と、お店の人に相談しながらあれこれ探してみる。
　その途中で幾つか試食させてもらったが、これがまた美味しい。とくにカステラのふわりとした食感と、ザラメの歯ごたえ、しっかりしつつもしっとりとした甘さが印象に残った。
　しばらくして、紫はスタッフさんと相談しつつお土産を決めることに。
「今回は、次のお土産を視聴者の皆さんに用意しました。　『カステラとステンドパネルのセット』、『カステラとビードロ細工（２本）のセット』、『カステラとランプシェードのセット』、『酒器セットとからすみ』を各１名様にプレゼントします」
　そう言って番組を最後までお楽しみください、と笑顔で締めくくる。スタッフたちも紫の落ちつた雰囲気に釣られ、穏やかな気持ちで撮影に挑めたのであった。

『お土産探検隊』（長崎編・終）

紫「そうねぇ……。こっちのデザインも捨てがたいわね。迷ってしまうわ」
スタッフ（お美しい……）