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猫鳴館、自治会長選任戦
●土曜日の骨削さん
「投票権の金銭売買は政治的腐敗ですが」と言ったのは蓮だったが、その政治的腐敗を体現する――いや、言葉を選ぼう――『手段を選ばん本気』に奔走する候補者がここにいた。
その名は骨削 瓢。ある意味、士の期待を裏切らない動きを見せていたといえよう。
「骨削氏。自治会費半年分肩代わりというのは本当だろうね」
寮の片隅にて。そう囁くのはいつもの白衣を脱ぎ、代わりに割烹着に身を包んだ伊賀 解理。一応毎月ちゃんと払ってはいるがタダになるならそれに越したことはない、というのが解理の考えだ。
「安い上に後払いってのが気にくわないが、ある意味悪くない申し出だ。いいだろう。あんたの姑息さに乗ろうじゃないか」
桜崎 巴も、目を細め歪んだ笑みを浮かべる。
「まあ、君が会長になる事になんら不満はないから乗るわけだがね」と解理。
「なら交渉成立ってことでいいですかい？ 桜崎はんと伊賀はんの会費半年分をあっしが肩代わりする。その代わり、おふたりにはあっしの手伝いとして動いて貰おう。自治会費については、投票してもらった事実が欲しいんで、まずはお二人のお財布から払ってもらおうかねぇ。払ってもらった証拠として領収書も渡しとこう。お金は、後で返す形にするよぃ」
骨削 瓢――１６歳にして、この手管はある意味素晴らしいと言わざるを得ない。
こうして瓢は６か月ふたり分締めて１０８００円と、ふたりの協力者を得た。
◇
「む、あそこにいるのは」
瓢、巴、解理の三人はターゲットを探し寮内を徘徊していた。
新館の片隅で一心にノートパソコンを弄る草薙 龍八を発見。即座に接近を図る。
「やあ草薙はん。何やってるんで？」
龍八は、まるで母親の襲撃を受けたえっちサイト閲覧中の思春期男子のごとく、ぱたんとノートパソコンの蓋を閉め、答えた。
「選挙情報を更新している。八神もねこったーで随時速報を出しているようだが、情報ソースは複数ある方がいいだろう？ 俺のは主に寮内向けで、自治会長選任戦のサイトに随時情報を載せている」
草薙の自治会長選任戦のサイトの存在はねこったーで告知済み。寮内からそれなりのアクセスがあるようだ。
「へえ。草薙はんがそんなまともなことしてるなんて、なんかクサいねぇ……」
「あんたには言われたくないな」
そんな応酬を遮って巴が一歩前に出る。
「あんた。このあたりにアジトを持ってるらしいけど寮費払ってんのかい？ 払ってないなら今すぐ滞納分と前払い半年分、耳揃えてここにいる瓢に支払いな。逃げるならパーティーの時に公開の刑だし、阻止しに来るならあたしのバットが仕事するだけさ」
龍八は、彼女の長スカートにバットという時代錯誤で過激な出で立ちを見て、一言。
「……安保闘争にでも参加するつもりか？」
この龍八の突っ込みに巴はニヤリと笑った。お気に召したようだ。
――安保闘争。1960年代に起きた大規模デモで学生も多数参加した。多分に過激であったらしい。
「経済的か肉体的か社会的か、好きなダメージを選ぶ権利を許すなんて、あたしも優しいだろ？」
「ふむ……さしてダメージではないが、『経済的』を選ぼう」
龍八はそういうと、瓢に６ヶ月分５４００円を手渡す。
「会費は納めておく」
――書類ごまかして猫鳴館にアジトを作ってるからな、とは敢えて言わない。
「明日のキャベツ叩き売りもお前から買うとしよう。３つでいいな？」
「言うことなしですよぃ」
それから、龍八は背後に控えていた割烹着姿の解理に目をやり……。
「割烹着か……ふむ。胸元のレースあしらいがなかなかだ。明日はもちろん中に着物を着るんだろうな」
「いや、中は制服のままのつもりだったけれど」
「なに。それはいかん。割烹着には着物だ。……ではな」
それだけ言うと龍八はいつもの緑のコートを翻し立ち去った。
◇
けらけら笑う瓢に、解理が１件手伝ったからもういいだろ、と交渉しているその端で――巴は先ほど密かに覗き見た龍八のパソコンの画面を思い出していた。
英語サイトだった。それも違法な感じの。
東大を目指すと豪語するだけあって、巴はその英語サイトが何を意味するか、なんとなくだが理解できた。
なるほど、楽しそうなことしようとしてるじゃないかと、巴は思う。存分にやりなよ。楽しませてもらおう。コトが終わったらちゃんとあたしが絞めてあげる。――この機に乗じて、いろんな奴の弱みを握ってやろう、それが巴が瓢の取引に乗った真意だったのだ。
さらに巴は横目で瓢を見て、そっとポケットのレコーダーに手をやる。
――あんたとのやり取りもこっそり録音させてもらってるからね。
こいつを暴露せにゃならない時が来ない事を願うよ。
パーティーでは後腐れなく飲み食いしたいものさ――。
「投票権の金銭売買は政治的腐敗ですが」と言ったのは蓮だったが、その政治的腐敗を体現する――いや、言葉を選ぼう――『手段を選ばん本気』に奔走する候補者がここにいた。
その名は骨削 瓢。ある意味、士の期待を裏切らない動きを見せていたといえよう。
「骨削氏。自治会費半年分肩代わりというのは本当だろうね」
寮の片隅にて。そう囁くのはいつもの白衣を脱ぎ、代わりに割烹着に身を包んだ伊賀 解理。一応毎月ちゃんと払ってはいるがタダになるならそれに越したことはない、というのが解理の考えだ。
「安い上に後払いってのが気にくわないが、ある意味悪くない申し出だ。いいだろう。あんたの姑息さに乗ろうじゃないか」
桜崎 巴も、目を細め歪んだ笑みを浮かべる。
「まあ、君が会長になる事になんら不満はないから乗るわけだがね」と解理。
「なら交渉成立ってことでいいですかい？ 桜崎はんと伊賀はんの会費半年分をあっしが肩代わりする。その代わり、おふたりにはあっしの手伝いとして動いて貰おう。自治会費については、投票してもらった事実が欲しいんで、まずはお二人のお財布から払ってもらおうかねぇ。払ってもらった証拠として領収書も渡しとこう。お金は、後で返す形にするよぃ」
骨削 瓢――１６歳にして、この手管はある意味素晴らしいと言わざるを得ない。
こうして瓢は６か月ふたり分締めて１０８００円と、ふたりの協力者を得た。
◇
「む、あそこにいるのは」
瓢、巴、解理の三人はターゲットを探し寮内を徘徊していた。
新館の片隅で一心にノートパソコンを弄る草薙 龍八を発見。即座に接近を図る。
「やあ草薙はん。何やってるんで？」
龍八は、まるで母親の襲撃を受けたえっちサイト閲覧中の思春期男子のごとく、ぱたんとノートパソコンの蓋を閉め、答えた。
「選挙情報を更新している。八神もねこったーで随時速報を出しているようだが、情報ソースは複数ある方がいいだろう？ 俺のは主に寮内向けで、自治会長選任戦のサイトに随時情報を載せている」
草薙の自治会長選任戦のサイトの存在はねこったーで告知済み。寮内からそれなりのアクセスがあるようだ。
「へえ。草薙はんがそんなまともなことしてるなんて、なんかクサいねぇ……」
「あんたには言われたくないな」
そんな応酬を遮って巴が一歩前に出る。
「あんた。このあたりにアジトを持ってるらしいけど寮費払ってんのかい？ 払ってないなら今すぐ滞納分と前払い半年分、耳揃えてここにいる瓢に支払いな。逃げるならパーティーの時に公開の刑だし、阻止しに来るならあたしのバットが仕事するだけさ」
龍八は、彼女の長スカートにバットという時代錯誤で過激な出で立ちを見て、一言。
「……安保闘争にでも参加するつもりか？」
この龍八の突っ込みに巴はニヤリと笑った。お気に召したようだ。
――安保闘争。1960年代に起きた大規模デモで学生も多数参加した。多分に過激であったらしい。
「経済的か肉体的か社会的か、好きなダメージを選ぶ権利を許すなんて、あたしも優しいだろ？」
「ふむ……さしてダメージではないが、『経済的』を選ぼう」
龍八はそういうと、瓢に６ヶ月分５４００円を手渡す。
「会費は納めておく」
――書類ごまかして猫鳴館にアジトを作ってるからな、とは敢えて言わない。
「明日のキャベツ叩き売りもお前から買うとしよう。３つでいいな？」
「言うことなしですよぃ」
それから、龍八は背後に控えていた割烹着姿の解理に目をやり……。
「割烹着か……ふむ。胸元のレースあしらいがなかなかだ。明日はもちろん中に着物を着るんだろうな」
「いや、中は制服のままのつもりだったけれど」
「なに。それはいかん。割烹着には着物だ。……ではな」
それだけ言うと龍八はいつもの緑のコートを翻し立ち去った。
◇
けらけら笑う瓢に、解理が１件手伝ったからもういいだろ、と交渉しているその端で――巴は先ほど密かに覗き見た龍八のパソコンの画面を思い出していた。
英語サイトだった。それも違法な感じの。
東大を目指すと豪語するだけあって、巴はその英語サイトが何を意味するか、なんとなくだが理解できた。
なるほど、楽しそうなことしようとしてるじゃないかと、巴は思う。存分にやりなよ。楽しませてもらおう。コトが終わったらちゃんとあたしが絞めてあげる。――この機に乗じて、いろんな奴の弱みを握ってやろう、それが巴が瓢の取引に乗った真意だったのだ。
さらに巴は横目で瓢を見て、そっとポケットのレコーダーに手をやる。
――あんたとのやり取りもこっそり録音させてもらってるからね。
こいつを暴露せにゃならない時が来ない事を願うよ。
パーティーでは後腐れなく飲み食いしたいものさ――。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2013年05月17日
- 参加申し込みの期限
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- 2013年05月24日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2013年05月24日 11時00分
