猫鳴館、自治会長選任戦｜リアクション

猫鳴館、自治会長選任戦

【ねこったー　ハッシュタグ＃猫鳴館　＃選任戦より】

■八神修の選挙速報――〆切直前
　雪見大福氏……２４３００円
　骨削瓢氏………２１６００円
　邪衣士氏………２０７００円
　逆巻天野氏……１０８００円
　後木真央氏……　６３００円

「雪見氏がこの時点でトップに躍り出ました。このまま逃げ切れるのでしょうか！」

●海原は誰に？

　御巫時子は、何かお手伝いが出来ないかと猫鳴館にやってきて、選任戦管理本部に立ち寄っていた。
　本部には海原茂がいた。
　修の速報を見た黒須聖がちょうど寮費を支払いに来たところだった。今度こそ、現金を持って。
「５４００円以内で……一番差の大きい人に投票する約束……だったね」
　聖は６ヶ月分５４００円を「邪衣票……」と置いていった。
「黒須のこの票は大きいな。あとは、各候補者が届けに来たものを確認して、と」
「あの……茂さんはまだ投票していないんですよね。どなたに投票するんですか……？」
　時子はそう尋ねてみる。
「俺か。俺はあの５人だったら、誰が会長になったとしても猫鳴館を任せられると思っている。だから」
　茂はポケットから小さな正方形を取り出した。
「まあ……サイコロ、ですか……？」
「６が出たら振り直し。無責任の謗りがあれば受けよう」
「謗りだなんて……。茂さんは、候補者のみなさんを信じているんですね……」
　くすくすと時子は笑った。
「実は私、今回の選任戦が、前回と同じ方法じゃなくて、ホッとしているんです……」
「パンツの色当てか？」
　茂がてらいもなくそう言ったので、時子の方が頬を染めてしまう。
「え、ええ……お得意だとお聞きしました……あの……」
　時子は声を顰め、茂にこそっと耳打ちする。
「何度かお会いしてる中で……その……色とか分かってたりしたのでしょうか……？」
　茂はそれを聞き、しばしじっと時子を見つめた。
「なるほど。それを知りたいのか？　分かったかどうか、答え合わせをしろと言うなら、構わないが……」
「え……？」
「折角だから、もし当たっていたら……そうだな、このサイコロ、君が振ってくれ」
「ええっ……」
「では推理しよう。君の今日のパンツの色は――」

　……答えは、ふたりだけの秘密。
　サイコロはどうしたか？　――もちろん、茹蛸みたいに赤くなった時子が振ったのだ。