仲良くなりたい、その２｜リアクション

仲良くなりたい、その２

　☆中野空也

（あー、完全に授業もうそろそろ終わりだわこれ……）
　寝坊した七緒璃音は、教室の中から聞こえてくる声に耳をそばだてていた。
　都合よく先生が欠席したり、神魂の影響で世界が切り離されたりは……しなかったようだ。
（一時間目が終わるまで適当に時間つぶすかー）
　そう思って静かに教室を後にしようとした時。
　璃音の目は前方に見覚えのある坊主頭を捕らえてしまった。
（うげ……中野先生じゃん……）

　先日の倫理の授業の『なぜ人を殺してはいけないのか』というテーマの発表。
　あの時から璃音は中野先生に若干苦手意識が有る。
（まだウチに気づいてないみたい……このままスルーしてくれないかな）
　願い空しく中野先生は顔を上げ、こちらに目を向けた。
「おはようございます、七緒さん。どうしました？」
　若干の苦笑いを浮かべながら棒読みで挨拶する璃音。
「あー……オハヨーゴザイマース……いや……寝坊して……」
　正直に答える璃音に中野先生が問う。
「教室に入らないのですか？」
「時間的に1時間目終わるまで待ってたほうがいいかなーとー……ハハハ」
　中野先生は、怒ったりはしなかった。
「授業の邪魔をすまいという心遣いですね。授業が終わったら教室に入ってください」
　時計を見て頷き、微笑む。
「でも、私の授業の時は遠慮せずに入っていいですよ」
「ハ……ハイ」
　先生の後姿を見送り、小さくため息をつく。
　いい先生なんだろうな、とは思うのであるが。