仲良くなりたい、その２｜リアクション

仲良くなりたい、その２

☆浅井幸太

　土曜日の陸上部の部活を終えて。
　志波拓郎は着替えを済ませ心地よい疲れの中ボーッとしながら更衣室を出た。
（何か食べて帰ろうか……）
　そんなことを思っていると、顧問の浅井先生に声をかけられた。
「お疲れさん、気をつけて帰れよ」
「先生……」
「ん、なんだ志波？」
　口数が少ない拓郎はよく考えてから言葉を選ぶ。
　だから浅井先生は、拓郎が話したそうな時はなるべくじっくり待つようにしている。
「浅井先生のおすすめの食べ物……教えてくれませんか」　
「俺のお勧め？　……そうだなあ」
　いろんな食べ物が脳裏をよぎる。
「うーん、学生でも気軽に食べられそうなもの、だよな？」
「はい……お願いします」
　そう言う拓郎に、
「……と言っても俺も日ごろそんなに高いものは食べてないな」
　苦笑しながら浅井先生は答えた。
「そうだな、シーサイドタウン駅に時々来てるケバブの屋台は旨いな」
「ああ……あれ、美味しそうですよね。……辛くは、ないですか？」
「いや、そんなに辛くないし、苦手な人には辛くないのを出してもらえるはずだ。希望すれば肉たっぷりにしてもらえるぞ」
「そう、ですか……食べてみたくなってきました」
　眠そうな拓郎の顔が輝く。　
「後は、シーサイドタウンの中華料理屋で『日本海』ってとこのチャーハンが旨いぞ」
「あ、聞いたこと……あるかもしれません」　
「学生に人気だからな。値段の割に量も多いし、餃子もなかなか旨い」　
　グー……キュルル。
　拓郎の腹が鳴った。
「ありがとうございます……それ、食べていきます」
　拓郎は一礼すると、早足で昼食に向かった。

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