色づく季節、新生徒会の日常｜リアクション

色づく季節、新生徒会の日常

●来訪者はまさかの小学生

　会議は休憩。雑談とお茶がほっと場の空気を和らげている。
「蓮ちゃん、あんなにしっかりな意見があるなら立候補すればよかったのに」
　ぱたぱたと軽い足音がしたのは、恩がそんな話をしていたとき。
　ぱーん、と勢いよく扉がひらかれ、お嬢様然とした金髪の少女が飛びこんで来た。
　みんなは目を丸くした。ふんわりとしたピンクのワンピースに赤いリボン。どう見ても小学生だ。
　
「excuse me!　トワは、カエデ探してマス！　どこにいるか教えてクダサイ！」

　がたり、と恩が立ち上がる。
「か、か、かわいいい～～～！！」

◇

　このちいさな珍客は、生徒会室のみんなから大歓迎を受けた。
「私達とお友達になりに来たのかしら？　お友達になるにはこのお菓子をお行儀よく食べなきゃね」
　トワはいま、恩のお膝の上。恩はもう、トワが可愛くて仕方ないらしい。
「それで、カエデって？」
「カエデはカエデデス。トワと一緒に住んでるデス」
「どんな人？」
「coffeeがスキで、うたがうまいデス」
「う～ん、それだけじゃねぇ。あなたのお兄さんなのかしら？」
「トワはイモウト、ちがうデス」
「じゃあ、許嫁かい？」
　茶化したのは信彦だ。
「イ、イナズケ？」
「将来の結婚相手のことよ」と恩。
「ケッコン？　……wife？　ち、ちがうデス！」
　ほっぺたが見る間に真っ赤になる。文句を言おうとしてトワは気づいた。
「あ、そうだ。聞いてないデス、Your Name！」
　
　この少女に対して自己紹介がまだだった。真っ先に、紳士的な一礼をしたのは修だ。
「失礼。副会長、１年５組の八神修だ。皆の活動の足場を整え、補助をするのが役目だよ。で、ここは生徒会」
「セートカイ？」
「行事の企画や運営、部や委員会の予算執行の統括等、学校生活を支える組織……。それが生徒会だよ」
　それに続き、全員が簡単に自己紹介する。
「なまえをしった、ら、トワとfriend！　とーもーだーち、デス！」

　結局、トワから聞き出せたのは、カエデは寝子高生らしいということと服の色が赤かったということだけ。
「一応校内放送かけてみようか？　俺、行ってくるよ」
　そういうと、博美は放送室に走っていった。

◇

　＜迷子のお知らせです。カエデさん、カエデさん、いらっしゃいましたら、至急、生徒会室にお越しください。トワさんがお待ちです。繰り返します……＞

　楓は走っていた。刀と一緒に。そして一気に生徒会室の扉を開ける。
「トワ！」
「カエデ！」
　楓は脱力した。こっちがこんなに必死で走り回ったっていうのに、トワは綺麗なお姉さん――恩である――のお膝で、お茶とお菓子をいただいてほくほく顔だったのだから。
「すまん。うちのトワが迷惑をかけた」
「まあまあ。会えて良かったじゃない。折角だからお茶一杯どう？」と恩が椅子を勧める。
「いや……」
　楓は断ろうとしたが、そのときグゥと腹がなった。そういえば高校と小学校を往復したのだ。
「じゃあ、少しだけ」

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