【寝子祭】前夜祭ダンシングアピール｜リアクション

【寝子祭】前夜祭ダンシングアピール

　
　こうして、全てのステージは無事に終了した。
　せっかくの前夜祭、明日に向けて華々しく終わらせたい。
「みなさん、これにてステージは終了しましたが――窓の外をご注目ください！」
　篠崎響也が声を張り上げて言うと、講堂のカーテンがゆっくりと開く。
　広がる夜空の中に、ぱっと花火が打ちあがるのが見えて、会場からは歓声が上がった。
　実は篠崎響也が事前に先生に交渉して、前夜祭のラストを花火で締めくくる許可をもらっていたのだ。
「何かハプニングあると思ってたけど、特になかったね」
　花火を見ようと生徒たちが講堂から外へと出て行く中、流されるようにふらふらと講堂の外へ出ながら少し残念そうにぽつりとつぶやく。
　もし何かアクシデントが起こったら、場つなぎでダンスでもしようかと考えていた絹織真由良。
　そんな絹織がコンテスト自体にはエントリーしなかったのには、理由がある。
「いいや、なんか盛り上がってるし、ここでちょっと踊っちゃおうかな」
　持ってきていたフラメンコドレスに着替えると、花火の下、バッグミュージックに合わせて即興でダンスを披露する絹織。
　

　可憐なドレスを翻らせて踊るそのパフォーマンスに、前夜祭の余韻が抜けない生徒たちはたちまち囲んで手拍子や歓声を送り始める。
「あ、あなたはさっきのインタビューの！　すごいじゃないですかっ！」
　そんな突然の余興を見逃さず、椿美咲紀は野次馬根性でカメラを向ける。
　先ほどインタビューしたときは「参加しない」と言っていたが、その踊りっぷりは見事なもので出場しなかったのが惜しいほどだ。
「ぜひぜひ写真撮らせてくださいっ！　あ、校内新聞に載せちゃうんですがいいでしょうか！」
　どう見ても可愛らしい少女にしか見えない絹織。
　実は彼は――訳あって女装姿で過ごしている、れっきとした男子生徒であった。
　本当の性別は言い損ねてしまったので、結局ミスコンには参加しなかったのだ。
（……控え室とか、さすがに女の子の方に混ざるわけにはいかないしね）
　けれど得意のフラメンコはここで披露することができた。
　まあいいか、と満足しながらパンと手を打ち鳴らす絹織であった。

　
　みんなが花火に喜んでいる様子を見て、やった甲斐があった、とそれまで張り詰めていた裏方としての緊張感をようやく緩め、篠崎も笑顔を浮かべる。
　そんな篠崎の元に駆け寄ってくるひとつの人影。
「お疲れ様！　ステージの準備とか、ありがとね」
　おかげで楽しい前夜祭になったわ、と彼に声をかけたのは最上るるかである。
「ああ、最上もお疲れ様。ステージ、すっごくカッコよかったよ」
　篠崎の言葉に、最上はぱっと顔を輝かせる。
「み、見ててくれたのね……！」
「当たり前だろ。友だちの発表だ、見ないわけがないじゃないか」
　そう言って篠崎は笑い、最上はその笑顔を大切そうなものを見るように目を細めた。
　友だち。違う、そうじゃない。
「……響也にとって、あたしはやっぱり友だちなの？」
　最上の普段とは違う声音に、え、と篠崎は彼女の方を見る。
　まっすぐに目と目が合う。閃光が彼女の美しい顔を照らし出す。
　最上は口を開いた。
「……あたし、響也のことが、好き」
　次の瞬間、ひときわ大きな赤い花火が夜の空いっぱいに広がった。

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あとがき

担当マスター：花村翠
ファンレターはマスターページから！

こんにちは、花村です。

このたびは、大変、大変お待たせしてしまいました！
前夜祭ということで、非常にたくさんの方にご参加いただきまして、
とても書き応えのあるボリュームとなりました。

ステージのパフォーマンスはどれも非常に素晴らしく、
まるで映像が頭に浮かぶようで、とても楽しく書かせていただきました。
応援してくださった皆さんや、実行委員の皆さんなどなど、
ステージ参加者だけでない、いろんなアクションのおかげで、
とても彩りのあるシナリオになったのではないかと思います。

重ね重ね、このたびはお待たせすることになって恐縮です。
１年に１度の前夜祭を楽しんでいただければ幸いです！

このたびはご参加のほど、誠にありがとうございました。
次回も、ご縁があればよろしくお願いいたします！

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