寝子小で、秋遊び｜リアクション

寝子小で、秋遊び

「そろそろ片付けの時間ですよ。使った道具はあった場所に戻してね」
　時計を確認して、かおり先生が皆に注意を促した。
「はーい」
「作った作品は、おうちの人に見せてあげましょう。袋がない人は、黒板のところにあるビニールを持っていってもいいですよ」
「先生～、作ったやつ、自分の教室に置いてもいいかなぁ？」
　曖浜瑠樹が、いつもお世話になっている３年２組に「まつぼっツリー」をプレゼントしたいと話すと、かおり先生が後で一緒に職員室に行ってくれることになった。
「一緒に担任の先生に話してみましょうね。きっと先生も喜ぶと思うわ」
「えへへ～、そうかなぁ」

「グラウンドでコマ回し勝負だ！」
「めいっぱい回すで」
　烏丸エリオと北影太郎は、片付けがすむなり、先をこぞって図工室を飛び出した。
「廊下は走っちゃいけませんよ」
　かおり先生の注意をうながす声に、元気よく「はーい！」と返事だけ残す。

　帰り支度を始める子どもたちに、苑下ちかが声をかけた。
「アクセサリーこんなもっとってもしゃーないから、みんなにわけたるわ。すきなんもってきー」
　何人かの女の子が、興味をひかれてちかの机に寄っていく。
「ほら、うみちゃんも。ネックレスはどーや」
　ごろんごろんと大きめのどんぐりが連なっているネックレスをもらって、小島海美はばんざいをして喜んだ。
「わあ、ちかちゃんいいの！？　ありがとう～っ」
　そんなふたりの姿を、猫を抱きかかえた佐藤プリンス雄太がにこにこしながら眺めている。
「かわいい女の子には、かわいいアクセサリーがよくにあうなあ」

「あさひが作ったどんぐりのサンタさんも、あげるよ～」
　椎名あさひの呼びかけに、一原みとが足を止めた。
「これはカエルさん？」
「カエルじゃなくて、サンタさんだよ」
「サンタさん、かわいくて、すてき」
「ありがとう。はい、いっこどうぞ～」
　みとはサンタさんを受け取って、へにょっと笑った。
「ありがとぅ～！」
　双葉由貴や八葉あいらも、サンタさんを分けてもらって、笑顔になる。
　こんなふうに、あさひが家に帰ったら、弟のゆうくんもきっと喜んでくれるだろう。

　水カジカも、片付けをしながら、帰宅してからのことを考えていた。
（おばあちゃんに、みてもらおう）
　家に帰ったら、モビールは窓際に飾るつもりだ。
　おばあちゃんはきっと、カジカが作ったモビールを見たら、ほめてくれるだろう。
　今日のこれは、自分ひとりの力で作ったわけじゃない。友達が手伝ってくれたモビールだ。
（みんなで工作したんだって、おしえてあげよう……）
　そう考えるだけで、カジカの胸はあたたかくなる。

　佐々木濫丸も、手首に巻いたブレスレットを見て、ご満悦だ。
（お母さんに見せてあげようっと！）
　色も塗ったんだとか、他にこんなものを作っている人がいただとか、話したいことは山ほどあった。

「先生、さようなら」
「ありがとうございました。さようなら」
　部屋を出て行くミルカ・アハティアラとリアーネ・ライニオの腕には、ブレスレットが揺れている。

　由貴も、あいらも、東海道も、プレゼントする相手を思い浮かべながら、帰宅の準備をすすめた。
「今日は楽しかった！」
　子どもたちが口々に語りながら帰っていくのを、かおり先生も嬉しそうに見つめている。
「忘れ物のないようにね」
「はーい！　先生、さよーならー」
「はい、さようなら。気をつけて帰ってね」
　季節感満載の工作を抱えて、子どもたちは帰っていった。
　作品とともに、皆の心のなかにはきっと楽しかった思い出が残ったことだろう。
　寝子島小学校の、とある秋の一日だった。

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：瀬野とうこ
ファンレターはマスターページから！

今回は、芸術の秋ということで、小学校の工作の時間をお届けしました。
落ち葉にどんぐり、まつぼっくり。
想像しただけでわくわくしますね。

参加してくださった小学生の皆さんも、発送豊かにいろいろなものを作ってくれました。
皆でわいわい作業するのは、学校生活の醍醐味ですね。
これからも、楽しい学校生活がおくれますように。

どうもありがとうございました。

↑ページトップに戻る