★迷子の葬儀屋さん
「……あれっ」
顔をひょ、と出してみれば、そこはあらま見知らぬ情景。おかしいな、
葬儀屋・ニノマエは首をこてんと傾げる。
「……うーん……次はこっち……? 標識通りに行けば……あれれ~?」
おかしいな、自分はこんなに方向音痴ではなかったはずなのだけれども。
というより、道を歩くのはむしろ自信がある方だ。
霊界はやっぱりフツウじゃない。ひとりで出歩くのは無謀だったかなぁ。
実のところ、葬儀屋は先の羽場 正太郎氏のような、寝子島ゆかりの遺言状や遺書を預かってここに来ていた。
フシギなことに、寝子島の出身者はこういうお話が多いらしい。
らしい、というのは、他の葬儀社がどこまで対応しているか分からないからだけれども。
しばらくその対処のために寝子島で働いてきなさい、と多額の給与を提示されたためにここへ来た……という次第で、葬儀屋はこう見えて、随分と現金な輩である。
「……はっ……実は僕、すんごーい霊感があったとか……」
などとぼやいてみる。そんなわけないか。
葬儀に密接に関係しているとは言っても、誰も彼もオカルトに関わっているわけじゃない。
霊感沙汰なんて大概は『カガク』ってヤツで解決できちゃう世の中なんですよ、皆さん。
でも、人の死と接していく内、スピリチュアルなことに目覚める同僚が居たし、人のご遺体が灰となることに耐えきれず辞める後輩もいた。
――存外僕は、難儀な職に就いている。
でも、この職は絶対に必要な職だ。人間が、人間として生きていく内には、葬儀という区切りが要る。墓という断絶が要る。
そして、墓に参るという救いが要る。
だから、今回は寝子島の霊界にあるという『ミタマおばあちゃんの墓』を探していた。
霊界に墓、とはこれ如何に。
ミタマおばあちゃんとは、死後も霊界で元気に生きていた……? 死んでいた? どっちが正しいんだ?
ともあれ、元気なおばあちゃんの幽霊だったらしい。
成仏するにあたって、皆と過ごした場所に墓を残して欲しいと言い残して、都会に居る依頼主はそのとおりに霊界にて墓を残した。
でも、お参りに行きたいのに毎日が激務で――だから、代わりにお参りに行って欲しいとお願いをされたのだ。
ニノマエ葬儀社はこういうフシギなことをよく承る葬儀社だ。だから、皆フシギがる。
でも、お客様サービスはナンバーワンを独走。そりゃそうだ、わざわざ霊界に行く葬儀社の社員なんて居るもんか。
――僕は羽場さんを信じた。羽場さんも僕を信じた。
――そして、僕は今、羽場さん以外の、寝子島のお客様達のことも信じようとしている。
葬儀屋は立ち上がる、仕方ない、足で稼ごう。
★それでも迷子の葬儀屋さん
――だめだ。道が分からない。
この前は、人がついていってくれていたから、迷子になることは無かったのだろう。
「やぁや人間サン、こっちへおいで」
「人間さぁん、こっちみて、べろべろばぁ~!」
或いは遊ぼうと、或いは脅かしてくるあやかし達に、葬儀屋はどうしたものかと眉を下げて、線路を頼りに花緑青駅へと戻る。
花緑青駅とその他線路沿いの道だけは分かるが、その他はてんで駄目だ。
「『ミタマおばあちゃん』、ってご存知ですか?」
「ああ! あのメッチャ元気だったおばあちゃんな! 今頃天国かねぇ」
「……その人のお墓って、どこにあるか分かりますか?」
「霊界に墓ぁ? ははっ! あるかも知れねぇが、どこにあるかまではなぁ……誰が建てたんだ?」
これこれこう、と説明してみせると、気前の良い鬼は腕を組んで唸る。
「うぅーん……『ミタマおばあちゃん』、霊界のいろんなところを飛び回っていたからなぁ……『皆と過ごした場所』っていったら、そらこの霊界中よ」
つまりすぐさま特定はできない、と――葬儀屋は肩を落とした。
★葬儀屋さんのお願いごと
「そういうわけで、『ミタマおばあちゃん』のお墓を探しているんです。……だいぶ捜索範囲、広範囲になっちゃうんですがぁ……」
以前の羽場氏の依頼からのつながりで、葬儀屋は懇願に近い色合いでうなだれてる。
「……それで、俺もまたそれに巻き込まれた、というわけか」
真面目な様子の
緋埜 伊吹に、ごめんなさいねぇと葬儀屋は眉を下げる。
「それはいいんだが……霊界から出られない、ということはないか?」
「その心配はないんじゃないかな。そういう強制力は感じられないし」
三毛谷 道哉の返答に、ひとまずほ、と二人は息をつく。
それから姿勢を変えて、伊吹へと前のめりになって笑顔を作った。
「……ねえ、こんなにフシギなところで楽しんでいた御人のお話――是非に聞いてみたくはありませんか?」
きっと楽しいですよ!
ニシシ、と葬儀屋は笑った。
「そうだねぇ、『ミタマおばあちゃん』と言えば、結構ヤンチャな御婦人だったと記憶しているから」
故人を巡る小旅行か、悪くはない、と道哉は顎に手を当てて思案する。
伊吹は思う。
そうだな、また、誰かの役に立つのならば――。
tkです! 霊界に行くシナリオです。
オープニングでは三毛谷様、緋埜様、ご出演ありがとうございます!
★寝子島の外で過ごす元島民のために、霊界へ『ミタマおばあちゃん』なる人物のお墓お参りに行くことになります。
皆様は、道端で偶然出会って協力を求められたり、いつの間にか霊界にいたりして、協力することになります。
好きなシチュエーションでご参加ください!
★『ミタマおばあちゃん』は、非常にエネルギッシュな方でした。
もしかしたらあやかしの方々は下記のようなことを知っているかもしれません。
・とんでもなくパワフルに幽霊として遊んでいたこと。
・子供のあやかしや幽霊にとても慕われていたこと。
・成仏する時はとても満足そうにしていたこと。
★『ミタマおばあちゃん』は、生前は長年ひとりで小さな駄菓子屋店を切り盛りしていた店主でした。
もしかしたら、ひとの方々は下記のようなことを知っているかもしれません。
・とても元気なひとで、どこへでも行くひとだったこと。
・『自分の店』がなによりも大切で、そのお客も大切だったこと。
★皆様はいろんな方法で、探しているものたちを探すことができます。
また、かなり自由に好きなシチュエーションに出くわすことができます。
下記は例となります。
・『ミタマおばあちゃん』の名前を出して、聞き込みしまくるぞ!
・アレッ!? お墓探していたはずが見知らぬあやかしとバトルに!?
・現世でアタリをつけられないかな?
・葬儀屋さんと現世or霊界で一緒に探そう!
などなど! 最終的に見つかればOKです!
★今回の舞台は、現世・霊界のふたつとなります。
★ 登場人物は、葬儀屋の他に、故人の話を伝え聞くかたちとなりますが、『ミタマおばあちゃん』の人となりを知ることができます。
もちろん、葬儀屋とも交流が可能です!