寝子島のキャットロードには多種多様な店舗が軒を連ねる。衣料関係や飲食店にとどまらず、スポーツジム等の方面も充実していた。
その中の一店舗に
『space彩菓詩』(すぺーすあやかし)があった。落ち着いた外観は気軽に入れる喫茶店のようだった。
万条 幸次は自転車で軽快に車道を走る。ちらりと店舗に目をやると急に減速して止まった。前かごにいた愛猫の
花遊は、にゃーん? と不思議そうに鳴いた。
「前にきた時に
約束したんだよねぇ。今度は花遊も連れてくるって」
言いながら自転車を店舗に寄せた。施錠を済ませて左手で花遊を抱えると中へ入っていった。
「……前と違うよねぇ」
木目が際立つ床に三人掛けのソファーが置かれていた。手前に猫脚のテーブルがあり、素っ気ないながらも飲食スペースを確保していた。
少し先を見ると用途のわからない大小の鈍色の歯車が壁に立て掛けてあった。その横では繊細なガラス細工が淡い光を受けて格式の高さを醸し出す。
光源となったランプは天井から吊るされていて幸次の興味を引いた。中に収められた丸い玉が放つ光は目に優しい。それでいて隅々まで照らし出し、陳列された品々が持つ特徴を鮮明に伝えた。
「ランプの仕組みが気になるみたいですねぇ」
横手からの声に幸次は反射的に目をやる。小柄な女性、
八重 トラが間近にいて愉快そうに目を細めた。
「あの、八重さん、これが前に話した俺の愛猫の花遊だよぉ」
「綺麗な八割れですねぇ。しかもかなりの二枚目でびっくりしましたぁ」
「そんなことまでわかるんだねぇ」
「ただの人間ではなくて、猫またですから~」
トラは左腕に顔を寄せる。花遊は驚く素振りを見せず、自ら乗り出して鼻と鼻を合わせた。
「花遊さんは積極的ですねぇ」
「なんか意外な一面を見たような。もしかして花遊、プレイボーイだったりする?」
その問いかけには答えず、大きな欠伸を見せた。トラは何かを察して口角を上げた。
「立ち話もなんなので新しく仕入れたソファーにどうぞぉ。口が寂しい時には教えてくださいねぇ。各種、揃えていますので。取り敢えず、飲み物でもどうでしょうか~」
「前と同じになるんだけど、サイダーを貰えるかなぁ。結構な距離を自転車で走っていて喉がカラカラなんだよねぇ」
「花遊さんの注文はどうしますかぁ。新しく採用したカリカリゴールドは絶品ですよぉ。食感が猫に最適な上に魚粉の香りでメロメロになりますぅ」
「それも貰うよ。でも、あれだなぁ。まるで食べたことがあるような言い方だねぇ」
「猫またですから~」
笑って答えたトラは注文の品を取りに店の奥へ引っ込んだ。
幸次は勧められたソファーに座った。特等席とばかりに花遊が膝の上で蹲る。
「目まぐるしい変化だよねぇ」
店内を見回し、ゆったりした口調で言った。
――小さな観光案内所、またはほしびとの交易所を兼ねた
『space彩菓詩』の一日が始まる。
今回のシナリオはキャットロードにある『space彩菓詩』を舞台にした話になります。
のんびり口調の店員さん、八重 トラは人懐っこくて話好き。のんびり口調で誰に対してもグイグイ迫ってきます。
シナリオガイドに登場していただいた万条 幸次さんが好例となりました。ありがとうございました。
詳しい内容は下記をご覧ください。懐の深いシナリオで存分にお楽しみいただければ幸いです。
今回の舞台
すっきりと晴れた休日の寝子島。曜日の指定はありません。
その日が休みであれば誰であっても不自然なく登場させることができます。
『space彩菓詩』
主な業務内容は寝子島の観光案内になります。
同時に委託販売を行っています。個人スペースも設けられていてアクセサリーの売れ行きが好調です。
訪れる人々が持ち込む情報や星幽塔関連の協力を仰ぐ場(壁に掛けられた掲示板など)にもなっています。
それだけにとどまらず、前身となる星の交易所の役割を担い、両替所として機能しています。
単なる両替ではなくて物品や情報が金銭になることもあります。お気軽にご利用ください。
今回の目的
明確には決まっていません。以下をご覧になってPCに適した内容を選んでください。
(1)物品の購入
こんな店があったんだね。珍しい物が多くて見るだけで楽しい。この、太陽の欠片ってなんだろう?
光ってるんだけど、触れてもぜんぜん熱くない。天井のランプと同じ物なの? 店員さんは物知りだね。
(2)委託販売
この前から店を利用しているんだけど、私の作ったアクセサリーの売れ行きはどうかな。
あ、手に取った。今の子も。なるほどねー。指輪よりもブレスレットの方が良いのかも。
店員さんにも聞いて今後の参考にしよう。
(3)両替
ここで両替ができると聞いたのだが。紹介が遅れた。俺はほしびとで、先程、こちらにきたばかりだ。
今はこれだけだ。両替を頼めるか? 物品や情報提供でも応じてくれるのか。
では、星幽塔の第六階層で会った空賊の話をするか。
(4)掲示板
トラちゃーん、ひっさしぶりー。え、こっちは元気だよ。ちょっと聞いてよ。
星幽塔の第二階層の廃都市でさ、見つけたの! まだ価値はわからないんだけど、
ちっさい宝玉みたいなヤツ。量がすごくて。だから、ここの掲示板で人員募集ってのをしたいわけ、どう?
(5)情報&雑談
今日も繁盛してるね。用事は何かって? もちろんトラさんに会いにきたのさ。
またまた~じゃないって。本気だし。前にも気持ちを伝えたよな? 印象が薄くて忘れたって酷くない?
じゃあ、俺の星幽塔での大冒険譚を聞いてくれ。絶対に印象に残るから。えっと、あれはだな、確か。
NPC&Xキャラ
NPC
八重 トラ
元は飼い猫の茶虎で二十年を生きて猫またとなった。
変化した見た目は二十歳の小柄な女性でショートの茶髪と糸目が特徴。
性格は明るくて人懐っこい。イタズラ好きが顔に表れ、左の八重歯が見えた時は要注意。
猫時代からの観察眼を活かして相手の正体(ほしびと、あやかし)をそれとなく察する。
カジュアルな服装を好み、日々、元気に営業中。時に自分の足で情報収集に勤しむことも。
Xキャラ
XキャラはXキャラ図鑑を参照しますので設定を省くことができます。
長くなりましたが説明は以上になります。
舞台は店ですがそれだけにとどまりません。情報提供を活かして過去の冒険を大いに語ることができます。
回想にすればリアルな感じで迫力ある描写がされます(アクションによる)。
あとトラちゃん狙いのアクションも受け付けています。猫と同様にトラちゃんを弄ってあげてくださいね。
ご来店、お待ちしてますにゃーん(またまた~)。