寝子島はあらゆる世界と繋がってきた。
星幽塔、あやかしたちの霊界、更に小さい世界まで上げればキリがない。
そんな繋がった世界の一つに
【異世界アルカニア】があった。
そこは魔法と科学の融合した世界であり、異世界の少女ちーあたちの元にいる勇者ナディスの故郷でもある。
暗闇に浮かび上がる半透明のモニターに映る様々な数式を見ながら黒いローブの男、ディガードは荒い吐息を吐いていた。彼の胸元には黒い染みが広がり、血液のような黒い液体が流れ出している。
計画が最終段階に入った矢先、それを嗅ぎつけたちーあたちによる襲撃に遭い、手酷い手傷を負ったのだ。
だがその戦いの最中、ちーあを捕獲したディガードは彼女をさらうことに成功する。
今、彼の足元には気絶し捕縛されたちーあが転がっていた。
「ぐぅ……人間風情が、我の計画を……邪魔するなど、あってはならぬ……ことだッ! なんとしても、ゲートは起動する、あの世界に、あの場に……戻らなくてはならんのだ。人間を滅ぼす為にもなあ」
震える手でコンソールをディガードは操作する。アラートが鳴り、いくつも赤い表示がモニターに映るがそれを無視して実行コマンドを打ち込んだ。
すると目の前で機械に繋がれていた彼の部下であり、幹部でもあった女性たちが粒子となって消えていく。赤い粒子が巨大な扉上の機械に吸い込まれ、轟音を鳴らす。
『アビス粒子充填完了……炉心起動まであと……起動待機状態に入ります』
巨大な扉上の機械が音声アナウンスを発し、それを聞いたディガードはにやりと笑った。
「これで、準備は整った。後は起動を待つだけ……ふっ、やはり来たか。寝子島の民よ、そのやかましさは本当に煩わしいな」
「ディガードっ! お前の好きにはさせねぇ! この俺たちがいる限りなッ! ちーあちゃんは返してもらうぜ!」
黒と白の手甲を装備しディガードに立ち向かうのは
風雲児 轟だ。彼は白いスーツとマスクを身に着けている。そう、ヒーロー“ストレイト”として寝子島の平和を守る為に。
隣で細身の剣を構え、静かに立つ
八神 修が強い瞳をディガードに向ける。
「追い詰められているというのに、その余裕の表情。一体どういうつもりだ、ディガード」
「お前たちはこいつの活用方法がなっていない。こいつは機械生命体である上に一種のデータバンク。自我を封じ、活用すれば……こんなこともできる!」
ちーあを浮かび上がらせるとディガードは懐から紫色の結晶を取り出しそれを砕いた。辺りに赤色の粒子が散る。
それらはちーあの体に吸収され彼女は途端に苦しそうな悲痛な叫びをあげた。
「うぐうぅう、ぎぃいあああああああああッッ!」
がくがくと痙攣したちーあの身体から多種多様な武器や防具が生成され、それらがディガードの身体に吸収されていく。
マント上の分厚い装甲、背中には様々な形の銃器、両手には巨大な大剣が装着される。大剣の切っ先を八神と轟へ向けるとディガードは笑った。
「まだ起動までは時間がある……少しだけ遊んでやろう」
低い姿勢で滑るように走ったディガードは両手の大剣を交差させ、それらを横薙ぎに振るう。凄まじい風圧と共に鋭い斬撃が二人を襲った。
轟と八神は両側へ横っ飛びで避けるがその彼らをディガードの背中の銃火器が追いかけ、射撃する。銃弾の雨が彼らの身体を掠めた。
降り注ぐ凶弾の雨を物ともせずに突っ込んだ轟が渾身の右ストレートを放つ。しかしディガードの分厚いマント上の装甲が邪魔で彼に有効打を与えることができない。
痺れる腕をかばいながら後方に跳んだ轟は苦い顔を浮かべる。
「ちぃっ、デタラメな能力しやがって……! 硬すぎるだろ、あいつのマント!」
「それならこれを試してみます、ししょー下がってくださいっ!」
飛び出したのは外の残敵を掃討し、追いついてきた勇者の少女ナディスであった。彼女は両手を突き出し、顕現させた魔法陣から炎と氷の魔弾を放つ。赤と青の弾丸が交差しながらディガードへ飛来した。
それを見たディガードは手をすっとかざす。白と黒の半透明の盾が出現するとそれがナディスの魔法を受け止め消失させた。
「なっ!? 無効化されたっ!?」
「お前たちの力はこんなものだったか? まあいい。炉心も温まったようだ。そろそろお暇するとしようか、この世界からな」
気絶したままのちーあを担ぎ上げるとディガードは背中を向け、轟音と共に開いた巨大な扉へと歩いていく。扉の中には白と黒の粒子が渦巻き、何かの空間が広がっているように見えた。
ナディスは白く輝く剣を顕現させるとそれを強く握り、ディガードに向かって走る。大上段から振り被った一撃を放つがその攻撃は片手で受け止められ、そのまま衝撃波で彼女は吹き飛ばされてしまった。宙を待った剣が床に刺さる。
「いい加減じっとしていろ。他世界のことなど、貴様らには本来関係がないことだ。大人しく見送ればいい」
「そういうわけにはいかねえ。その子は、大切な俺たちの仲間だッ! 勝手にてめぇの都合で連れ去っていいやつじゃねぇ!」
ディガードの背中から放たれる数発のビームをかわしながら走った轟は床に刺さるナディスの剣を引き抜き、勢いそのままにディガードへと突っ込んだ。白い剣が装甲をぶち抜きディガードの身体を刺し貫く。
「ぐがっ、この装甲を貫く、だとぉ、志半ばで……倒れるとは、む、無念……!」
崩れ落ちるディガード。だがその身体から落ちたちーあがふわっと空中へと浮かび上がった。ディガードの身体から赤い粒子
【アビス粒子】が溢れ出す。
空中で赤い粒子が集合しそれは少女の形を取った。
血のような赤い髪に白い肌。胸は大きいがその背丈は小柄だ。金色の瞳を開くと、彼女は浮かび上がったちーあを抱えて笑う。
「……というとでも思ったか? マナディルが溢れ、アビス粒子が豊富に扱えるのならば、我の本来の身体を構築することも造作ない。その身体、ディガードなぞもはや不要。ごみの処理、助かるぞ」
「なんだ、お前は!? ちーあちゃんを離しやがれッ!」
地を蹴ってジャンプしちーあを取り戻そうと掴み掛った轟であったが、少女の腕の軽いひと振りだけで彼は地面へと叩きつけられてしまった。全身に酷い痛みが広がる。
腕に装着されたエルメリアウィングから八神はすかさずビームを放とうとするが、少女の瞳が輝き、赤い閃光が放たれる。その瞬間、八神の身体に衝撃。気が付いた時には自身の身体が地に倒れていた。
「うぅっ! 攻撃が、見えなかった? 今のは……一体なんだッ」
「身体が悲鳴を上げてやがるぜ……まるで、でけぇハンマーに殴られたみたいな、感じだった……ッ!」
動けない一行を空中から蔑むような瞳で眺め、少女は冷たく笑う。
「我に気安く触れられると思うなよ、人間。今までの我とは違うのだ。我が本来の名を教えてやろう。我が名は
【マルム】。世界を終わりに導く者……安心しろ、この世界はアルカニアの次にしてやる。それまで、ひと時の平和を楽しむのだな」
それだけ言うとマルムはちーあを担いだまま、扉の先に広がる異空間へと消えていった。
八神は痛みの走る身体に鞭打つと起動したままのコンソールへと近づいて操作を試みてみる。
「前に行った異空間の研究所、ツクヨやイザナの生まれたあの場所の機械とこいつは似てるみたいだ。よし、なんとか操作できそうだぞ」
停止準備に入っていた炉心の命令を書き換えると、八神は炉心の状態を安定化させる。
「これで勝手にゲートが閉じてしまうことは無い筈だ。俺はこのままちーあを助けに向かうが……」
問いかけようとした八神に笑いながら轟は答え、よろよろとナディスに肩を貸してもらいながら立ち上がった。
「聞かなくても分かるだろ、助けに行くに決まってるさ。行こうぜ、変な空間だろうが異世界だろうが、どんとこいだ!」
「外で戦っていた皆さんも追いついてきたみたいです。行きましょう、八神さん。ちーあさんを助けに!」
合流した仲間たちを見て八神は腕を振り上げて号令を掛ける。
「敵は強大な上、その力は未知数だ。だが俺たちは負けるわけにはいかない、必ずちーあを助けるぞ!」
彼の言葉に呼応した仲間たちと共に八神、轟、ナディスは扉の先に広がる異空間へと足を踏み入れるのであった。
お初の人もそうでない人もこんにちわ、ウケッキです。
ついに開いてしまった異世界アルカニアへのゲート。
そこを通り、ちーあを連れ去ろうとしている謎の少女【マルム】。
はたして彼女の凶行を止めることはできるのでしょうか。
このシナリオではろっこんが強力に描写されることがあります。
チビナミの支給品は一つだけ選んで持っていくことが可能です。
また、私のシナリオで配布されたアイテムはいくつでも使用可能で、支給品との併用もOKです。
なお、初めての方でも問題なくご参加いただけます。
どなたでもお気軽にどうぞ。
◆場所
異世界へのゲート内部
:内部は白と黒の粒子が入り乱れる空間です。
道は一方通行しかなく、道の先にはちーあを連れたマルムがいます。
しかし彼女は魔獣を召喚し行く手を遮る壁として活用しているようです。
なお障害物の類はありません。床は透明ですがちゃんと地面があり歩くことができます。
◆予想される敵
終わりをもたらす者【マルム】
:ディガードの身体から現れた少女。自身を終わりをもたらす者と語る。
赤く長い髪に金色の瞳。胸は大きいが背丈は小柄。
赤く目を輝かせた後に放つ【不可視の衝撃波】や腕を振るうと放たれる【不可視の一撃】など見えない攻撃が多い。
脅威と判断した攻撃には白と黒の半透明の盾【穿てぬ城壁】が自動発動する模様。
穿てぬ城壁は耐久性のある盾のようで強力な攻撃を受けると一時的に消失する。
魔獣【ドアスグル】
:白く硬い生体装甲で全身を覆い、両手に黒い鋭い爪が生えているマルムの作った即席の配下。
作り込みが荒いようでただ殴るしか知能がない。どうやら使い捨てが目的と思われる。
一定周期でマルムに作り出される為にその数はほぼ無限。
◆予想されるルート
マルムを攻撃する 同行者:ナディス
:気絶したちーあを連れて逃走するマルムを襲撃、ちーあの奪還を目指す。
マルムも本調子ではないようで完全な力を発揮しているとは言い難く、攻撃後に僅かな隙ができる。
その隙を狙えば抱えているちーあを奪取できるかもしれない。
ドアスグルを撃破する 同行者:ツクヨ、チビナミ、イザナ
:マルムへ向かう為、ドアスグルの大軍を叩き突破口を開くルート。
際限なく湧き出るドアスグルを相手にする為、継戦能力が必要となる。
幸いドアスグルは脳筋一辺倒の為、一体一体の対処はし易いと思われる。
◆チビナミの支給品
漸刀【烈火】
:水の力と炎の力を宿した刀。振るうと二つの相反する力を内部衝突させたエネルギーで切れ味が増している。
握りに付いたトリガーを引くことで展開機構が起動、炎と水を纏った強力な一撃を放つことができる。
しかしその攻撃を放った後は一時的にエネルギー不足に陥り、切れ味が低下してしまうデメリットがある。
試作ライフル【ディオーダー】
:チビナミが趣味で弄っているライフルの一丁。バレル下部にマウントがあり、そこにショットガンを放つ短い銃口が装備されている。ショットガンの弾の装填数は2発。
通常弾の装填数は100発と少なめだがその全てがチビナミの魔改造が施された魔導コーティング弾であり、その威力は高い。
セット品としてチビナミお手製のベルトポーチが付属。ポーチは5分ごとに通常弾20発、ショットガン弾1発を生成する。
生成される弾は全所持数が限界値である通常弾100発、ショットガン弾5発まで生成されていると一時的に生成が止まる。
使用や譲渡で所持数が減ると再度生成される。
魔導ロッド【エアスラスター】
:風の魔法力を込めた風珠を先端に持つ魔法のロッド。
魔法力を消耗することで風の刃を連射したり、チャージして強力な一撃を放つことができる。
消耗した魔法力は時間経過と共に徐々に回復する。
なお魔法力が枯渇するほど風珠の輝きと色が失われる模様。
◆登場人物
ちーあ
:皆様を非日常に放り込む張本人。絶壁ロリで元気いっぱいな機械生命体。でも見た目は人と変わらない。
ありとあらゆるコンピューターにハッキングできるが割とポンコツの為、よく失敗する。
日夜怪しい研究品を開発している。それらが役に立つかどうかは皆様しだい。
最近、チビナミに様々な方法で絡まれる為、ちょっと煩わしく思うが内心楽しく思っている。
チビナミ
:力を奪われ、弱体化してロリ巨となったイザ那美。のじゃ口調。
別世界の人間が非人道的なロストワードの研究の末に作り出した『生体兵器』。
自分が『存在してはならない造り物』ということを理解しており人からは距離を取る所があったが、
寝子島の民との触れ合いにより、徐々にそういう部分は鳴りを潜めつつある。
イザナ
:ちーあの仲間で黒髪でツインテールの少女。
雷を扱う戦士であり中距離、近距離選ばず戦えるオールラウンダー。
なお料理は壊滅的な腕であり、どんな素材を使ってもこの世の物と思えない料理を作り出す。
最近お酒にハマり、色々な銘柄を試し中。
ツクヨ
:わがままボディを持つ金髪紅眼の女性。戦闘狂であり、三度の飯より戦闘が好き。
中距離では赤い鎖を鞭のように扱い、近距離では二本の赤い長剣で戦うオールラウンダー。
攻撃魔法も扱える万能さ。なお胸はFカップ。
最近、回復魔法も使えることが判明したがもっぱら敵への拷問にしか使っていなかった模様。
寝子島のファーストフードにハマっており、気が向けば訪れている。
ナディス
:異世界アルカニアから勇者修行のために寝子島へ来ている少女。
この世界で出会った師匠に追い付く為に一生懸命努力中。
近接格闘と魔術を組み合わせたスタイルが特徴。高威力の魔法の命中率はいまだ低い。
なお胸は最近はEカップになったとか。