「うぎぃいいーー暑いのですよぉおおーーっ!」
寝子島にあるアパートの一室。
冷房はないが扇風機はあるその一室にて、転がったままばたばたとしているのはちーあ。水色髪の少女だ。
暑さで肌に張り付くワンピースに嫌悪感を示しながら彼女は畳に転がっている。
その隣では扇風機の前で、あられもなく着物の胸元をはだけ、風を一心に受けている黒髪の着物の少女がいた。彼女はチビナミ、かつては敵であったが和解し、現在は共に過ごしている。
「暑い、暑いとうるさいのじゃ。そうやって言うから余計に暑うなる。黙って風でも受ければすぐに涼しくなるじゃろう」
「んなわけあるかなのですよっ! この気温、夏が殺しに来ているのですよーーー!」
彼女がそういうのも無理はない。
照り付ける太陽。上がる気温。そして熱されるアスファルト。
どれをとっても暑くなる要素しかないのだ。涼しさを求めるのも必然と言える。
そんな二人のいる部屋に入ってきた少女がいた。緑髪の彼女はナディス。異世界アルカニアの勇者で修行の為、この世界にやって来ていた。
「ねえ、二人共ヤバイ奴が出たってテオから知らせがあったの! 今、師匠が向かってるから二人も急いできて! なんか、いつもとちょっと違う感じで……」
「あううう……暑い時ぐらい、休ませて欲しいのですよぉ」
悪魔の少女バアルーナにより、魔戒とやらの掲示板が出現してからという物……不可思議な魔獣たちが現れていたのだ。これも魔戒の影響だろうか。
嵐の前の静けさとでもいう様にぱったりとなりを潜めたディガード達の影響もあって、そこそこ暇な彼女たちは平和な日常の傍ら、魔獣を倒す日々に追われている。
◆
「なんだ、こいつっ……攻撃が通用しねぇ!? どうなってるんだ!」
白い糸が大量に集まり、人型を成している魔獣に攻撃を弾かれた変身前の
風雲児 轟は魔獣から距離をとった。
ぶよぶよとした魔獣の身体はどうにもダメージが通らない。それどころか、その魔獣は攻撃してくる様子がないのだ。
時間経過と共にその身体の大きさを徐々に増していくその魔獣は白く、どことなく見た目はそうめんの束に見える。
「ししょーっ! ちーあちゃんたちを連れてきたよ! ってなんか魔獣がおっきくなってる!?」
ナディスが驚くのも無理はない。
この魔獣、ナディスがちーあを呼びに言った段階では人間一人とさして変わらない大きさだった。
だが今の魔獣は小さな民家一軒ぐらいと同等と言った所。そしてまだ徐々に大きくなっているようだ。
驚くナディスの背後でちーあは空中にモニターを出現させ、魔獣を解析し始める。すると驚くべきことが分かったのだ。
「この魔獣は大気中の水分を主成分として増殖する子型魔獣の集合体のようなのです。一切の攻撃を無効化する能力があるようで攻撃は無意味なのです……」
「そんなの、どうやって倒せばいいんだ!? 攻撃が通用しないとなると……封じ込めるとかそういう感じか!?」
「違うのです、もっと簡単な方法があるのですよ……それは――」
ちーあが言うには、魔獣の主成分は解析すると【そうめん】そのものであり、食べても害はないとのこと。
その為、攻撃が通用しないのならば……増殖のスピードを超えて食べつくすしかないとのことだった。
「まさに夏の魔獣って奴だな……わかった、やってやる。おい、魔獣! 俺達がお前を食いつくしてやるから覚悟しておけ! 増殖の速度になんか、負けねぇからな!」
「よーし、食べる、食べるぞ、うう……そうめんだからカロリーはない、よね?」
食べ尽くす勢いで威勢よく啖呵を斬る轟と体重を気にしているのだろうか、ちょっと不安そうなナディス。
こうして、ここに寝子島を守る為、増え続けるそうめん型魔獣【ソウメーン】を食い尽くす作戦が開始されたのだった。
お初の人もそうでない人もこんにちわ、ウケッキです。
暑い日になんと、そうめんの魔獣が出現しました!
食べることでしか倒せない厄介な相手です。
ちなみに私はめんつゆにネギ、ワサビ派です。みょうがは苦手だったり。
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◆勝利条件
:ソウメーンを食い尽くす。
◆敗北条件
:ソウメーンが残っている状態での全員の満腹。
◆予想されるルート
【ソウメーンを食べ尽くす班】
満腹度:まあまあヤバイ 同行者:ナディス、ちーあ、チビナミ
:このルートでは用意された茶碗、もしくはどんぶりにソウメーンをよそってもらい、
食欲が続く限り、ソウメーンを食べ続けるルート。
わさびにネギ、みょうがと薬味は豊富に用意されている。
なお、他ルートにてソウメーンをアレンジした料理が出れば、それを食べることもできる。
【調理班】
満腹度:なし 同行者:ツクヨ、イヴァ
:ソウメーンをちーあの開発した専用の包丁で切断し、食べられるサイズへと加工する班。
調理の心得があるならば、一定量のソウメーンを消費し、アレンジ料理を作ることも可能。
作られたアレンジ料理はソウメーンを食べ尽くす班へと提供される。
ちーあが作った即席キッチンがプレハブに用意されており、電子レンジやミキサーに始まり、
オーブン、燻製機などなど、大体の調理は可能となっている。
【そのままかじりつく班】
満腹度:かなりやばい 同行者:イザナ
:調理なんて待ってられないと、ソウメーンにそのままかじりつく班。
増え続けるソウメーンを直接食べる為、根気が必要。あとは蠢く見た目に耐える精神力。
調味料は自由に使えるので醤油をかけるもよし、めんつゆをかけるもよしとご自由に。
ただ、直接かじると口内、腹の中でもある程度増える為に満腹度の加速が早いので注意。
◆登場敵
ソウメーン
:そうめんに似た形状をしている人型の魔獣。どこからともなく現れた。
全ての攻撃を無効化する、常に少しずつ増え続けるという厄介な能力を持っているが敵意はなく、
攻撃はしてこない。ただ増えるだけ。
ちーあの開発した専用の包丁で切るか、噛み砕いた後に胃液や唾液に触れることで活動を停止する。
よって食べるしか選択肢はない。なお、味は極上。
◆登場人物
ちーあ
:皆様を非日常に放り込む張本人。絶壁ロリで元気いっぱいな機械生命体。でも見た目は人と変わらない。
ありとあらゆるコンピューターにハッキングできるが割とポンコツの為、よく失敗する。
日夜怪しい研究品を開発している。それらが役に立つかどうかは皆様しだい。
最近、チビナミに様々な方法で絡まれる為、ちょっと煩わしく思うが内心楽しく思っている。
そうめんはめんつゆにワサビ派。
チビナミ
:力を奪われ、弱体化してロリ巨となったイザ那美。のじゃ口調。
別世界の人間が非人道的なロストワードの研究の末に作り出した『生体兵器』。
自分が『存在してはならない造り物』ということを理解しており人からは距離を取る所があったが、
寝子島の民との触れ合いにより、徐々にそういう部分は鳴りを潜めつつある。
そうめんは醤油にネギ派。
ツクヨ
:わがままボディを持つ金髪紅眼の女性。戦闘狂であり、三度の飯より戦闘が好き。
中距離では赤い鎖を鞭のように扱い、近距離では二本の赤い長剣で戦うオールラウンダー。
攻撃魔法も扱える万能さ。なお胸はFカップ。
最近、回復魔法も使えることが判明したがもっぱら敵への拷問にしか使っていなかった模様。
寝子島のファーストフードにハマっており、気が向けば訪れている。
なお味の濃い料理が好みで、味噌や醤油を好む傾向。魚よりは肉派。
そうめんは、めんつゆと醤油を混ぜ、ネギ、みょうが、ワサビを併用する派。
ナディス
:異世界アルカニアから勇者修行のために寝子島へ来ている少女。
この世界で出会った師匠に追い付く為に一生懸命努力中。
近接格闘と魔術を組み合わせたスタイルが特徴。高威力の魔法の命中率はいまだ低い。
なお胸は徐々に成長中。最近はEカップになったとか。
そうめんはめんつゆだけでいただく派。
イザナ
:ちーあの仲間で黒髪でツインテールの少女。
雷を扱う戦士であり中距離、近距離選ばず戦えるオールラウンダー。
なお料理は壊滅的な腕であり、どんな素材を使ってもこの世の物と思えない料理を作り出す。
最近お酒にハマり、色々な銘柄を試し中。
そうめんは醤油にワサビ派。薬味は入れない。
イヴァ
:ちーあの仲間の悪魔の少女。ツクヨには劣るがなかなかいいスタイルをしている。
癖のあるメンバーの中では一番の常識人であり、みんなのオカン的存在。
得意な事は料理家事全般と家庭的だが、ひとたび戦場に出ると身の丈程もある大鎌を高速で振り回す戦士となる。
寝子島の料理に興味があり、色々なレシピを覚えようとしている。
そうめんは暖かく煮て、つゆといただくにゅうめんスタイル派。