深夜、誰もいない私立寝子島高等学校。
その屋上に降り立つ者がいた。それはローブ姿の男【ディガード】である。
その手には地図が握られている。地図には【寝子島町役場】【九夜山頂上展望台】【寝子温泉】そしてここ【私立寝子島高等学校】に印が付けられていた。そこを線で囲み、ある場所を狙うように目を細めて眺める。
仰ぎ見るように空を眺めるとディガードはにやりと笑う。
「この場で最後となるか。異世界アルカニア……あの場に我らが再び降り立つまであと少し。では最後の眷属を呼び出すとしよう」
ディガードは屋上の床に手を付けると赤い巨大な魔方陣を展開する。そこには見たことがない文字が描かれており、それらは明滅していた。
魔方陣からは炎が吹きあがり、それは徐々に寝子島高校の屋上に広がっていく。
「さあ、紅蓮の炎に身を焦がす豪華の魔神よ……我が呼び声に応え、【フレイジア】顕現せよっ!」
彼がそう唱えた瞬間、赤い火柱が立ち上り、それは徐々に収束していく。その形は次第に女性の姿を取っていった。
赤いつんつんとした短い髪の女性は控えめな乳房を持ち、その体型は小柄である。
切れ長の赤い目をぎらっと輝かせ、その少女はディガードの前にひざまずく。
「やっと俺の出番か、主様っ! さあ、どいつを殺せばいい? どこを焼き払えばいいんだ! 主様ァ! ってうおっ!? なんだこの貧弱な身体は!? まるで人の女性みたいじゃねえか!」
「まあ、落ち着け。この場では我らは真の力を発揮できん。その身体でしばらくは我慢せよ。さてお前に任せるのはこの場のエネルギー採取だ。地の底に豊富なエネルギーがある。それを奪え、根こそぎな」
「ほほう、そういう簡単なことだったら実に俺向きだな! 跡形もなく奪い去ってやるぜ!」
「場を壊し過ぎるなよ? お前は頭で考えるのが難しい部類の奴だからな。それと奪うのも大事だが、邪魔する奴がいるのだ……と、話をしていれば来たようだ」
ディガードが見つめる先には駆けてくる人影が二つあった。その片方は金髪碧眼の女性【ツクヨ】である。
金色の髪をなびかせながら血のように赤い鎖を展開し振り回す彼女の隣を走るのは
御剣 刀であった。
彼は刀を抜き放ち、ろっこんを発動して加速するとディガード目掛けて飛び掛かる。振り下ろされた銀色の刃がディガードに迫った。
すっと手を上げるとディガードは魔方陣を展開、闇色の巨大な盾を出現させると御剣の刀を受け止めたのである。
「ディガードッ! お前の好きにはさせてたまるかっ! 今度は何を企んでいるっ!」
「言ったはずだ……我らはあの世界に戻りたいのだと」
「その為だったら、この島を犠牲にしてもいいっていうのか!」
「当たり前だろう。我らにとってはこの島がどうなろうと気にするものではない。精々、供物になればいいとな」
そこまで言った所で側面からの殺気に気が付き、御剣は再び加速し横っ飛びに側面からくる何かを避けた。しかし加速した彼に追いつくかのようにそれは彼の鼻先を掠める。
着地し、冷や汗が彼の頬を流れ落ちる。
(危なかった、加速していなかったら真面に食らっていた……あいつ、それだけ早い攻撃ができるってことなのか!?)
「ほーう、俺の鉄球をよけちまうたぁ随分動ける人間もいるってんだなぁ、そりゃ、主様が俺を呼ぶわけだ。がっはっはっは! おもしれぇ! さっきのは避けられたがこれはどうだぁぁあーーッ!」
炎に包まれた紅蓮の鉄球の鎖を頭上で猛烈な勢いで回転させるとフレイジアは鉄球を力いっぱいに御剣に向かって放つ。
再び御剣は加速し、鉄球をかわすが後方へ飛んだ御剣を追いかけるように鉄球は纏う炎を推進力に猛進する。
あわや激突するといった瞬間、御剣は刀で鉄球の勢いを削ぐように刃の上を滑らせその軌道を変えた。刃と鉄球、鎖がぶつかり合い火花を散らす。
「ぐぅぁああっ、はぁはぁ、なんだ、今も追いつかれた?」
「カタナ、一旦ここは退きますよぉ……どうやら場が悪いようですからぁ」
見れば滅多に疲れた様子を見せないツクヨの肌に汗が浮かんでいる。呼吸もどこか辛そうで肩が揺れていた。
「はっはっはっ! 今頃気づいたかバカどもめぇ! この俺様のフィールドではなぁ! 貴様らの体力の消費は倍になるんだよ、しかも、動きも悪くなる、がっはっはっは! 劣悪な環境ってわけだ、どうする、寝子島の守護者さん達よぉ!」
「ぐっ、ここは退くしかないか」
「おいおい、逃がすと思ってんのかよ!? おらぁっ! もっと遊ぼうぜぇ!」
鉄球を再び振り回して放つフレイジアの攻撃をツクヨの赤い二刀流の剣が弾き返す。武器を構えたまま、ツクヨは振り向かずに告げた。
「カタナァ、ちーあにここを何とかする道具を作ってもらってきてください、ツクヨはそういうことを詳細に伝えるのは苦手なので。ここは押さえておきますからぁ」
「何言ってるんだ!? お前を残してなんか行けるかよ!? 残るのは俺が!」
「そう言うと思ってましたよぉ、だから……こうするんですよぉっ!」
「待て、ツクヨ、待てって! うあああぁぁあーーっ!?」
鎖で御剣を掴んだツクヨは屋上から地上へ向かって投げ飛ばす。空中に放り出された御剣は体勢を整え、屋上に戻ろうとするが鎖で投げ飛ばすその瞬間、聞こえてきた彼女の声がリフレインし、彼は着地を選んだ。
ろっこんによる空中で足場作成にて無事に着地した御剣は屋上を眺める。
(信じていますから……勝てる手段を持って貴方が戻ってくると……カタナ)
「あんなこと言われちゃ……行くしかないだろうが! 戻るまで無事でいてくれよ、ツクヨ!」
後ろ髪引かれる思いを振り払い、御剣はちーあのいる拠点の地点へと走った。
◆
「ふぬぅ……熱波による体力低下に動きの阻害ですか。また厄介な……ですがこんな事もあろうかと作りましたちーあの新兵器!」
ばっと掲げるようにちーあが一行に見せたのはシリンダー型の不思議な筒である。見た感じはメカメカしい筒にしか見えない。側面には浄化という文字が刻まれていた。
「聞いて驚くなですよ? これはロストワードの研究で開発した“場を浄化”する装置なのです! これがあればあんなフィールドなんか消し飛ばせるのですよ! ですが……」
その後、ちーあが説明する事によればこの装置は未完成であり、発動範囲が非常に狭いとのこと。
しかし複数設置して機能をリンクさせることで寝小島高校を包むサイズは実現可能ということだった。
装置の最終調整に入ったちーあからバトンタッチされるように作戦の説明役を任された異世界の勇者の少女ナディスは不慣れな様子で説明する。
「えっと、あの装置を設置するメンバーと屋上へツクヨさん救出に行くメンバーに分かれるとのことです。で、ではさ、作戦開始!」
一生懸命に説明するナディスの声に合わせ、一行は作戦に臨むのであった。
◆
同時刻。寝子島高校屋上。
「おいおい、だいぶ頑張るじゃねえかよ。がははは、見た目はひょろっこいのに随分とタフなもんだな、おい!」
「あひゃはっ! まだまだ、はぁはぁ……ツクヨはァ、やれますから、ねぇ……甘く見ないでくださいよぉっ!」
口ではそういうものの、ツクヨの身体は傷だらけであり、その衣服はボロボロであった。零れそうな乳房はいまにも見えそうだ。足を隠していた着物はびりびりに裂かれ、黒い装甲に覆われた膝下が見えている。
大粒の汗を何度も拭いながら彼女はフレイジアと剣を交える。
鉄球の攻撃は衝撃が強く、まともに受ければ吹き飛ばされてしまう。それ故に彼女は攻め手には出ず、防御に専念していたのであった。
片手から緑の光を溢れさせ、傷を少しだけ治療する。戦闘中、長い間は発動できない回復魔法の恩恵で彼女は辛うじて傷を塞ぐ。血は止まるが勿論、体力は戻らない。
「逃げたあいつ、御剣だったか。ぐははは、戻ってこないんじゃねえか? 誰だって死にたかねえからなぁ!」
「いえ、彼は……カタナは必ず来ますよ、なぜなら……ツクヨが、信じているんですからねぇ」
その言葉を笑い飛ばすフレイジアの鉄球を防ぎ、彼女はひたすらに耐え続けるのであった。
仲間が戻ってくることを信じて。
お初の人もそうでない人もこんにちわ、ウケッキです。
炎に包まれる寝子島高校……屋上で戦うのは金髪の少女、ツクヨ。
彼女は厳しい状況下ながら救援がくると信じて防戦を心掛けているようです。
ですが不利な状況下であり、それも長くはもたないでしょう。
彼女が倒れる前に屋上に到達する必要があります。
それでは皆様の参加をお待ちしております。
勿論、初参加の方も歓迎です。
アクション
◆勝利目標
ツクヨの救出。
フレイジアの撃退、もしくは討伐。
◆敗北目標
ツクヨの死亡
ちーあの死亡
◆場所
私立寝子島高校
◆状況
高校内部は体力低下、動き阻害のフィールドが張られている。
一般人は不在。
◆登場敵の予測
フレイジア
:炎を操る魔神の一人。近づくだけでも汗が出るほどの熱気を放っている。
鎖で繋がれた巨大な鉄球を振り回し、そのパワーを生かした攻撃は驚異的。
その他にも炎の魔法を操るので注意。
なお、鉄球を失うかある程度ダメージを負うと、炎を纏った拳による高機動挌闘戦に移行する。
炎の下僕
:炎を纏う硬い殻で包まれた下僕達。
床から湧き出るように無尽蔵に湧いてくる。
フレイジアが倒れない限り、その数は無限。
動きは緩慢であり、近づかれない限りは大した脅威ではないが数が多いので注意。
赤い霧の魔物
:人の生命力である【生気】を狙う魔物。
四つ足の獣型であり動きが素早い。
捕まれば勿論“タダ”ではすまない。
◆予測ルート
・ちーあ、チビナミと一緒に学校の各所へ浄化装置を設置しに行く
同行者:ちーあ、チビナミ 難易度:ふつう
予測される敵:炎の下僕
:このルートではちーあ、チビナミと一緒にフィールドを消す為の装置を設置しに行きます。
装置設置中はちーあが無防備となるので守る必要があります。
多く設置することができれば屋上へ向かうメンバーが戦闘で有利となります。
なおチビナミの戦闘力は一人で炎の下僕を2体程度相手できるぐらいです。
・イザナ、イヴァと共に屋上までの道を塞ぐ敵を蹴散らす
同行者:イザナ、イヴァ 難易度:そこそこ
予測される敵:炎下僕
:このルートでは屋上へ向かうメンバーの為に道を塞ぐ敵を蹴散らすことになります。
敵単体での戦闘力は低いですが、一度に数十体は現れるので囲まれないように注意。
フレイジアが倒されるまで戦闘が続くので継戦能力が必須となります。
体力消費を考え、回復できる食料などあるといいかもしれません。
・ナディスと共に屋上へ向かう
同行者:ナディス 難易度:ヤバイ
予測される敵:フレイジア
:屋上で耐えているツクヨを救出する為に屋上へ乗り込みます。
道中の敵はなるべく無視し、屋上へと真っすぐに向かいます。
フレイジアは強敵であり、装置がいくつ設置されているかで戦闘の状況が変わります。
熱波を緩和する持ち物があってもいいかもしれません。
・校庭に漂う赤い霧の魔物を相手取る
同行者:なし 難易度:アブナイ
予測される敵;赤い霧の魔物
:校庭をうろついている赤い霧の魔物の相手をします。
数は不明ですが倒しても湧いてくるようです。
※アブナイ目にあってしまうのでご注意ください。
◆ちーあの支給品
※支給品はひとつだけ選んで持っていくことができます。
・【疾風刀】
疾風のロストワードを刻んだ刀です。鞘から抜く際に刀身が加速します。
鞘から抜いた状態だと切れ味のいいただの普通の刀です。
もう一度鞘に戻すと再び抜く際に加速します。
・【放水銃】
水を生み出し、放つことが可能な銃です。高圧縮された水を放つのでその勢いは強く、炎の下僕一体程度なら簡単に吹き飛ばすことが可能です。
しかし水が切れるとチャージに30秒かかるので残量表示に注意です。
・【鉄壁の大盾】
鋼とちーあが見つけてきた謎の金属で構成された大盾です。
非常に軽いですが、その見た目は毒々しく、色も汚染されているかのような見た目をしています。持つ者に絶大な防御力を与えますがダメージを受ける度に劣化していき、完全に劣化すると爆発します。なお、毒々しいのは見た目だけなのでご安心を。
登場人物
ちーあ
:皆様を非日常に放り込む張本人。絶壁ロリで元気いっぱいな機械生命体。でも見た目は人と変わらない。
ありとあらゆるコンピューターにハッキングできるが割とポンコツの為、よく失敗する。
日夜怪しい研究品を開発している。それらが役に立つかどうかは皆様しだい。
最近、チビナミに様々な方法で絡まれる為、ちょっと煩わしく思うが内心楽しく思っている。
チビナミ
:力を奪われ、弱体化してロリ巨となったイザ那美。のじゃ口調。
別世界の人間が非人道的なロストワードの研究の末に作り出した『生体兵器』。
自分が『存在してはならない造り物』ということを理解しており人からは距離を取る所があったが、
寝子島の民との触れ合いにより、徐々にそういう部分は鳴りを潜めつつある。
ツクヨ
:わがままボディを持つ金髪紅眼の女性。戦闘狂であり、三度の飯より戦闘が好き。
中距離では赤い鎖を鞭のように扱い、近距離では二本の赤い長剣で戦うオールラウンダー。
攻撃魔法も扱える万能さ。
最近、回復魔法も使えることが判明したがもっぱら敵への拷問にしか使っていなかった模様。
寝子島のファーストフードにハマっており、気が向けば訪れている。
なお味の濃い料理が好みで、味噌や醤油を好む傾向。魚よりは肉派。
ナディス
:異世界アルカニアから勇者修行のために寝子島へ来ている少女。
この世界で出会った師匠に追い付く為に一生懸命努力中。
近接格闘と魔術を組み合わせたスタイルが特徴。高威力の魔法の命中率はいまだ低い。
なお胸は徐々に成長中。
イザナ
:ちーあの仲間で黒髪でツインテールの少女。
雷を扱う戦士であり中距離、近距離選ばず戦えるオールラウンダー。
なお料理は壊滅的な腕であり、どんな素材を使ってもこの世の物と思えない料理を作り出す。
最近お酒にハマり、色々な銘柄を試し中。
イヴァ
:ちーあの仲間の悪魔の少女。ツクヨには劣るがなかなかいいスタイルをしている。
癖のあるメンバーの中では一番の常識人であり、みんなのオカン的存在。
得意な事は料理家事全般と家庭的だが、ひとたび戦場に出ると身の丈程もある大鎌を高速で振り回す戦士となる。
寝子島の料理に興味があり、色々なレシピを覚えようとしている。