黒い部屋の中に一人の男がいる。
彼は何やら設計図の様な物を眺め、何か考え込んでいるようだった。
「材料は揃いつつある……あとはこの地のもっとも力の得やすい場所に印を残し……あの娘を手に入れ、我らはあの世界に帰還する!」
彼の名はディガード。この寝子島に現れた異世界の住人である。
すっと立ち上がった彼は部屋の奥にある大きな装置を見上げた。
その装置は黒い筒状の物体であり、いくつものパイプが繋がっている機械のようだ。
そこには4つの何かがはまる窪みがある。
「レグオル、結晶を持ってこい。数刻の後、起動実験に入るぞ」
「ははっ! 直ちに……!」
鎧姿の青い長髪の女性は跪き、頭を垂れると下がり……近場にあった箱を持つと彼女はそれをディガードの元へ持っていく。
彼の前で再び跪いたレグオルは箱を開いて彼に見せた。
箱の中には綺麗な水色の結晶と緑色の結晶が入っている。それらを掴むとディガードはじっくりと眺めた。
「ふむ、やはりいい濃度の結晶だな。これならば良いマナが取れそうだ。あの役所と温泉地を襲撃したかいがあったというものだ。そう思わないか、レグオル?」
「はい、その通りにございます。ですが奴らも着実に力をつけているとの報告があります。なんでもロストワードの力の一端を手にしたとか」
「ロストワード……あのイザ那海関連の技術か。我らの世界の技術には及ばんだろう。捨て置け。今は一刻も早く……かの世界……
アルカニアへの帰還の術を得るのだ」
「ははっ! 我らの悲願……あの地に返り咲き……我らを追放したあの人間共を根絶やしにするというその願いですね」
ディガードは遠い目をしながら何かを考えているようだ。
レグオルの言葉を聞いていたかは定かではないが彼の見つめる先にはかの地……アルカニアがあるのだろう。
「あの岬に設置予定の道具はどうなっている? 確か現地にはイデラが向かう手はずだったはずだが……」
「その事でしたらご心配なく。計画通りに事は進んでおります。後は、時期を待つばかりかと」
「そうか……では我らは起動実験に集中するとしよう。準備を始めろ、レグオル」
◆
寝子島。エノコロ岬。
ここには島の海を照らす、灯台がそびえ立っている。
その真下に一人に緑色の透き通った綺麗な髪の少女がいた。
彼女が灯台に触れると彼女の触れた個所から急速にツタが成長し、見る見るうちに灯台を覆い隠していく。
それは瞬く間に灯台を一本の巨大な樹木の様相へと変貌させた。既に元の灯台の姿は見る影もない。
「あは、はははははッ! 伸びろ伸びろぉッ我が樹木よッッ! 我らが悲願の為、この地のマナを根こそぎ奪い取るのだッ!」
彼女の名はイデラ。ディガードに忠誠を誓う者の一人である。
地面から巨大なツタを出現させるとそれを折り曲げ、椅子代わりに彼女は座った。
「それにしても何も抵抗がないとは……はぁ、こんな事ならば雑兵であるトレント共にでも任せておればよかったか」
退屈そうに欠伸をしながらツタの上で寝転がる彼女は何者かの気配を察知しそちらの方向へ顔を向けた。
その瞬間、退屈そうだったイデラの表情が明るくなる。
「悪いがこれ以上おかしな真似はさせない、
即刻その灯台を元に戻してもらおう」
「そーそ、勝手にこういう事しちゃ
いけないんだからねっ!」
そこに現れたのは
八神 修と
白 真白の二人であった。
彼らはちーあの要請を受け、先発隊として異常現象の起きるこの灯台へとやって来たのである。
「やっときたか寝子島の民共。このまま来なかったら退屈すぎて死んでしまう所だったぞ?」
「それなら来ない方がよかったか。気が利かなくてすまない」
「あはははっ! お前はいつも面白いことを言うな? くっくっく、まあいい遊んでくれ……このイデラとなぁッッ!」
イデラは空中に浮かび上がると四本のツタを体から伸ばし、二人に襲い掛かる。
八神は真白と目で合図をし、左右に飛んでそれを避けた。
笑いながらイデラはバネで弾かれたかの様にぎゅんっと八神との距離と詰めると右手の爪で下からすくい上げるように逆袈裟に彼を斬りつける。
八神は半歩体をずらし紙一重でイデラの凶爪を躱す。彼の頬が微かに切れ赤い血が垂れた。
そんな二人の間に割って入るように真白が長い木の棒でイデラを突く。的確な狙いであったがそれはイデラには届かない。
「はっはっはっは! いいぞ、そう、このやり取りが生きているという証ッ! さあ、もっともっとだ、我を楽しませろぉッ!」
イデラは棒を躱しながら距離を取り、地面に手を付けると真白の足元から槍のようなツタを顕現させる。
「うっわ、あぶなッ!? それならこれで……イヴァちゃん直伝、必殺、トルネードオブホワイトォッ!」
姿勢を低くし棒を槍の様に構えて突進した真白は体を回転させその遠心力を利用してまるで竜巻の様に自身の身を回転させる。
白い竜巻と化した真白の回転攻撃に振り下ろした両手の爪を弾かれ、大きく体制を崩すイデラの隙を八神は見逃さなかった。
「胴ががら空きだっ! せいっ!」
八神が振り抜いた長剣が白刃を煌めかせ、イデラの胴体に深い斬り傷を刻み込む。
イデラは驚いた表情をしながら後方に大きく跳ぶと足元からツタを出現させ、その上に立った。胸元からは血の代わりに樹液のような琥珀色の液体が流れている。
「我に一太刀入れるとはな、寝子島の民よっ! くく、これだから面白いのだ、人間は! くく、頂上で待っているぞ、死なずに上がってこいッ! 我が樹木と化したこの灯台をなッ!」
急速に伸びたツタに乗って空高く上がっていったイデラはほぼ巨大な樹木と化した灯台の頂上に生い茂る葉に隠れ、すぐに姿が見えなくなった。
「逃げられたか……他の皆の到着を待って塔に乗り込むとしよう、それまでどこかで休息を……」
「……そんな暇ないみたいだよ、ほら歓迎してくれるってさ」
真白が示す方向には地面から湧き出るようにわらわらと這い出して来る木でできた人型の異形『トレント』であった。
それらはゆらゆらと立ち上がると赤い瞳を輝かせ、けたたましい咆哮をあげると八神達へ敵意を剥き出しにする。
「そうだな……歓迎してくれるならそれには応えないといけないな」
「だね、さて……いっちょがんばりますかッ!」
八神と真白は数で勝るトレント達に死角を見せないように背中合わせになると武器をしっかりと構え、戦闘態勢を取るのであった。
お初の人もそうでない人もこんにちわ、ウケッキです。
ディガード陣営が暗躍を続けている彼らの最終目的地は……なんとナディスの故郷、アルカニア!
何やら企んでいるようですが……。
なおこのシナリオではろっこんが強力に描かれる場合があります。
また以下の情報は知っていなくても知っている想定でもOKです。
ガイドに登場して頂いた八神 修さん、白 真白さんありがとうございました。
もちろん、上記以外のアクションでも歓迎です!
それでは皆様のアクションを楽しみにお待ちしております。
アクション
◆勝利条件
イデラの撃退
◆敗北条件
ちーあの死亡
灯台の崩壊
◆場所
エノコロ岬、浸食された灯台
:灯台がイデラのツタにより浸食され巨大な樹木の様な姿に変貌している。
内部はだいぶ様変わりしており、ダンジョンの様になっているので注意。
大きく分けると下層、中層、上層、最上階に分かれている。
下層
:比較的浸食の薄いエリア。弱いトレント達が群れているが一体一体は弱い。
ツタで足場が悪い以外は戦いやすいエリア。
中層
:ツタや巨大な枝で遮られた小部屋が乱雑に存在するエリア。
ここには特殊な個体『レッドトレント』がおり、彼らは女性を弱体化させる花粉を放つ。
数が多く、囮役がいなければ無傷では抜けられない。
上層
:イデラのいる頂上へと続く大きな広間。
ここには巨大なトレント『エルダートレント』が鎮座しており頂上へ向かう者を待ち受ける。
障害物のないエリアだが常に体力を奪う毒素が充満しているので注意。
◆予想されるルート
下層の敵を討伐する 危険度:ふつう 同行者:ちーあ
:ベースキャンプを確保する為、下層の敵を討伐。その後ベースキャンプを設営する。
ベースが設営できた場合、ちーあの支援が全員にいきわたる様になり、
他の階層を攻略するメンバーが多少有利に敵との戦闘を行う事ができる。
中層を攻略する 危険度:別の意味でアブナイ 同行者:イヴァ、イザナ
:頂上、上層を攻めるメンバーを守りつつ中層の敵を引き受ける囮となる役目。
レッドトレントの相手をする事になるので非常に別の意味でアブナイ。
上層でエルダートレントと渡り合う 危険度:そこそこアブナイ 同行者:ツクヨ
:頂上にてイデラを討伐するメンバーを先に行かせる為にエルダートレントと戦います。
巨大な敵との戦闘な上、体力を奪う有毒な毒素が充満しているので注意。
頂上でイデラと決戦する 危険度:とってもアブナイ 同行者:ナディス
:灯台を侵食した元凶、イデラとの直接対決に挑みます。
彼女は近接戦も強く、遠距離に届くツタをも駆使する上に攻撃魔術も扱うので注意。
なお周囲には緑色の硬いクリスタルが4つありそれらがある限りイデラは自己再生します。
◆登場する敵
トレント
:雑兵としてイデラが生み出した樹木の人型異形。
力はさほど強くはないが凶暴。数で押してくるので注意。
レッドトレント
:赤いトレント。女性が吸い込むとたちまち全身の力が抜けてしまう花粉を放つ。
女性に引き寄せられる習性があり、身動きできなくなった女性の心の砦に侵入、存在力を奪う特性がある。
※存在力を奪われると一時的に無気力状態。シナリオ終了と共に回復。
エルダートレント
:古い年季の入った巨大なトレント。
動きは緩慢だがその力は凶悪で一撃でも受ければ重傷は免れない。
殴る、蹴る、踏みつぶすなど特殊な攻撃はしてこないが頭部に花が咲いており、
それが体力を徐々に奪う毒素をまき散らし部屋に充満させている。
イデラ
:ディガードに忠誠を誓う少女。植物を自在に精製しそれらを攻撃手段や防御手段として扱う。
風系の広範囲攻撃魔術も扱う為に非常に危険。
爪が異様に鋭く、近接戦では引き裂かれないよう注意が必要。また、その爪には痺れ毒の効果がある。
彼女は周辺にある緑色のクリスタルからエネルギーを得ておりそれらを破壊しない限り、
強力な自己再生能力を持つ。
緑色のクリスタル
:イヴァの周りにある水晶柱。非常に硬く、特殊な武器でないと破壊できない。
◆ちーあの支給品
ちーあが支給してくれた皆様へのサポートアイテム。
一人につき一つだけ携帯可能。
ロングソード・キワミ
:刀身にキワミと刻印された軽くて丈夫な剣。剣術の心得がない者でも剣士の様に扱えるサポート機能付き。
なお謎のボタンがありそれを押すと5秒後に自爆する。
なぜキワミ表記なのかというとちーあが極みという漢字が読めない為らしい。
ただの木の棒
:一見すると木の棒に見える物体。だが内部は機械で構成されている実はハイテクな代物。
持つ者の速度を二倍に上昇させ、風の加護を与える『疾風』のロストワードを用いた一品。
しかしまだエネルギー効率が悪くアクセラレートという加速機能は5分に一回しか使えない。
ハンドマシンパン
:見た目はどう見てもパンな短機関銃。でもしっかり短機関銃。
とてもおいしい匂いがするが食べられない。
弾数は無限だがとても威力が低い。
なお、撃つとこんがり焼けたパンの匂いが漂う。
一見おバカ武器だがなんと緑色のクリスタルへ特攻効果があり、
それを破壊できる唯一の武器だったりする。
◆ちーあの支援
ベースキャンプが建てられた場合、ちーあの支援効果により全員の
攻撃力が上昇します。
また、少しですがハンドマシンパン以外の攻撃でも緑色のクリスタルへ攻撃が
通るようになります。
◆登場人物
ちーあ
:皆様を非日常に放り込む張本人。絶壁ロリで元気いっぱいな機械生命体。でも見た目は人と変わらない。
ありとあらゆるコンピューターにハッキングできるが割とポンコツの為、よく失敗する。
日夜怪しい研究品を開発している。それらが役に立つかどうかは皆様しだい。
ツクヨ
:わがままボディを持つ金髪紅眼の女性。戦闘狂であり、三度の飯より戦闘が好き。
中距離では赤い鎖を鞭のように扱い、近距離では二本の赤い長剣で戦うオールラウンダー。
攻撃魔法も扱える万能さ。
最近、回復魔法も使えることが判明したがもっぱら敵への拷問にしか使っていなかった模様。
ナディス
:異世界アルカニアから勇者修行のために寝子島へ来ている少女。
この世界で出会った師匠に追い付く為に一生懸命努力中。
近接格闘と魔術を組み合わせたスタイルが特徴。高威力の魔法の命中率はいまだ低い。
なお最近胸が大きくなってきており、戦闘の邪魔だと悩み中。
イザナ
:ちーあの仲間の一人で何事にもやる気がないめんどくさがり屋。
ただなんだかんだ放っておけない性格であり、文句を言いながらも面倒見はいい。
雷の剣術と雷のビームやレーザーを扱うが現在はある事情により弱体化し雷の剣術のみしか使えない。
だが待っているのは性に合わないとリハビリも兼ねて参戦。
なおちーあに次ぐちっぱいの持ち主。
イヴァ
:ちーあの仲間の悪魔の少女。ツクヨには劣るがなかなかいいスタイルをしている。
癖のあるメンバーの中では一番の常識人であり、みんなのオカン的存在。
得意な事は料理家事全般と家庭的だが、ひとたび戦場に出ると身の丈程もある大鎌を高速で振り回す戦士となる。