薄暗い部屋で数名の男達が話し合っている。
彼らは空席となった玉座の前で各々好き勝手に座り、会話をしているようであった。
黒い衣服の男は腕を組みながら椅子に持たれかかっている。
赤い髪の男は武器を眺めながらその武器を磨いている。
白い服の男は本を読みながら時たま、落ちる髪をかき上げていた。
「さて、我らの計画はなった……あの小うるさく忌々しい女の排除に成功したのだ。これで、我らはまた一つ目的へと近づいたと言えよう」
「そうですね、排除に手間は掛かりましたし、雷神の数も減りました。私の本も少々減ってしまいましたしあれは本当に意味があったと言えるのでしょうか?」
黒い服の男の言葉に白い服の男は本に目を落としたまま答える。
あまり会話には興味がないのか、白い服の男は本から目を離さない。
本来であれば怒られるかもしれない場面だが、黒い服の男はまるでいつものことだと言わんばかりに特に気にした様子はなかった。
武器の手入れをしていた赤い髪の男が立ち上がって叫ぶように答える。
「あったに決まっているだろうがよっ! 座ったままで自分は指示をするだけ、こっちの苦労なんて知ったこっちゃないときたもんだ。イザ那美だか何だか知らねえが、そんな上司はこっちから願い下げだ!」
「雷神は三人へと減ってしまたが……我らには彼女から奪った『死の力』がある。これを得ただけでもよしとしようではないか」
「死の力ねぇ……こんなもんには正直、頼りたくはねえが……まあ、使えるもんは使わないとだしな」
「それで逃げたあのイザ那美の方はどう始末をつけるんです? 欠片ほどしか力が残っていないとはいえ、仮にも我らを召喚した張本人です。手は打っているのですか?」
「当たり前だ。あれを野放しにしておいていいわけがない。だが未だ我らは力が定着せず、表立っての行動ができない身だ。ここで静かにしているしかあるまい」
椅子にもたれ掛かった男は口に煙草をくわえるとそれに火を着けた。白い煙がもくもくと立ち上っていく。
黒い服の男の言葉に反応したのは赤い髪の男であった。彼は身を乗り出し大きな声で話す。
「おいおいっ! それじゃ何も出来ねえじゃねえか! このままでいいってのかよっ!?」
「落ち着いてください。彼女の始末には適任者を選んでありますよ」
「適任者だぁ? そりゃ一体誰のことだよ、俺達にはそんな知り合いなんてこの世界には――」
「――いるんですよ、欠片ほどの存在とはいえ彼女を利用したい輩がね……と、噂をすれば、ですか」
白い服の男が顔をあげて扉の方を見ると一人のローブ姿の男性が立っていた。
彼の名はディガード。異世界アルカニアへ寝子島の力を利用し戻ろうと画策している一派の長である。
「欠片とは言え使い道はあるものだ。我らとすれば、ゲートが開ければそれでよいのだからな」
「ゲート、異世界アルカニアへの転移門でしたっけ。こちらの世界にはそれほど興味はおありでないと?」
「勿論だ。様々なことに制限がかかるこちらの世界など微塵も興味はない。我らが去った後ならば好きにするがいい」
「ええ、そうさせてもらいますよ。この世界にはまだ利用価値がありますからね……それこそ色々とね、ふふふ」
◆
「うにゃぁああぁぁああーーっ! どうしてこんなことになっているのですぅうーーっ!?」
「知るかっ、たわけ! わしに聞くでないっ! 元はといえばお主がこんな狭い路地に逃げ込んだのが悪いんじゃろうが!」
小柄な少女が言い合いをしながらシーサイドタウンにある狭い路地裏を駆けていく。彼女達は何かから逃げているようであった。
片方は透き通るような水色髪の少女
『ちーあ』。異世界へ干渉する力を持つ少女である。
もう一方は黒く長い髪を持つ少女
『チビナミ』。イザ那美が力を失いサイズダウンした姿だ。
追いかけられているチビナミと偶然出会ったちーあは不運にも一緒に追いかけられることとなったのである。
「ああぁぁもうっ、どこまで追ってくるのですかあれはぁあ!?」
「わしが知るか! ええい、この乳房め、走りにくいことこの上ないわっ! 忌々しい!」
「むぅきいいーーっ! 絶壁なちーあちゃんに対する当てつけですかあぁぁっ!?」
「そんなつもりなどないわっ! わしも好きでこうなったわけじゃないからのぉおおーーっ!
絶壁で揺れる胸のないちーあとぶるんぶるんと揺れる大きな乳房を持つチビナミ。二人は実に対照的であった。
「いかん、行き止まりじゃ……ぐぬぬ、なぜこうもこの町は入り組んでおるのじゃっ!」
「えっと、確か……サーチ開始……ありましたっ! こっちなのですよ! はやくっ!」
瞳に内蔵された透視サーチ機能を起動したちーあは物に隠れた通気口を見つけ、そこへチビナミの手を引いて走る。流石はメカ少女である。
二人は滑り込むように路地裏の壁にある通気口へと入り込んだ。滑り台のように斜めだった通気口を抜け、二人は小さな部屋にたどり着く。
肩で息をするちーあは腕で額から流れ出る汗を拭った。隣のチビナミもぜえはあと呼吸が荒い。
「ふう……ここまでくれば流石にあれも追っては……ぴぎゃぁぁああああっ!?」
二人は一息つく間もなく、彼女達の背後の壁が粉々に吹き飛んだ。がれきをがらがらと踏み潰しながら現れたのは四つ足の巨大なコマのような物体である。
外周部に回転式のカメラアイを備えたそれはちーあとチビナミを見つけると腹部にある銃口へエネルギーを収束させる。
「いかんっ! ちーあっ逃げるのじゃぁあっ!」
「わかってますよぉおおっ!」
両側へ別れるように逃げた二人の間を細長いレーザーが床を焼き切って走った。焼き切られた床は赤熱し細かな爆発を引き起こす。砕け散った細かな礫片が二人に体を叩いた。
けたたましい駆動音をあげながらコマ型メカ
『デスデオン』は逃げる二人目掛けて足を振り下ろした。
必死に走る二人であったが、デスデオンの方が足が長くまるで逃げられそうにない。二人の頭上が足の陰で暗くなった。
まさに踏み潰される、といったその瞬間……何者かが二人の間に割って入りその足を粉々に分解して見せたのだ。
足を一つ失い、バランスを崩したデスデオンはぐらつき、壁に激突しながら轟音と共に倒れる。もがいているが中々起き上がれないようであった。
「間に合って良かった……怪我はないか、ちーあ」
「一緒にいるお友達も平気ですか? 立って歩けます?」
彼女達を救ったのは
八神 修と
常闇 月であった。
二人はちーあが逃げながら適当に手当たり次第送りまくった救援メールを見て駆けつけたのである。
「なぜじゃ、お主らは本来わしの敵のはず……なぜ、わしを助ける!?」
「敵? 君は一体……」
「わしは……ぐ、いまはどうでもよいわ! そこのちーあにはここまでなんだかんだ助けてもらった恩義がある。あやつの狙いはわしじゃ、わしが別行動を取ればお主らは安全に逃げられるじゃろう」
「待って、それじゃ貴女が……っ」
常闇の静止を聞かず、チビナミは二手に分かれた道の右へ走り去っていく。
追いかけようとした八神であったがその彼の目の前を体を引きずりながら猛然とチビナミ目掛けて突進するデスデオンが通った。轟音と風圧が彼を襲う。
何とかデスデオンの足を止めようと八神は再度、まだ無事なデスデオンの他の足の分解を試みた。
だが、その足には不可思議な文様が浮かび上がり何度試しても分解の能力は発動することがなかったのだ。
「くっ……常闇、ちーあを頼むっ。それと近くにいるナディスに応援を頼んでくれ、俺はあの子を先に追いかける!」
「あ、八神さんっ!?」
ちーあの保護を常闇へ任せると八神はチビナミを追いかけた。
敵であるという発言から本来は放って置けばよかっただろう。だが彼はそれができなかった。
なぜなら去り際の寂しそうな、今にも泣き出しそうなチビナミの孤独に染まった瞳を見てしまったからである。
「そんな目をされたら……放っておけるわけがないっ!」
一刻も早くチビナミに追いつこうと八神は必死に路地裏を走るのであった。
お初の人もそうでない人もこんにちわ、ウケッキです。
今回は迷宮と化した不思議な路地裏からちーあを守りながら脱出を試みるお話となっております。
チビナミを追いかけるデスデオンですが、彼女を助けるかどうかの判断は皆様に委ねます。
敵であったはずのチビナミをどうするのか……その選択を楽しみにしておきます。
アクション
◆場所
シーサイドタウンの裏路地
:何かの装置で時空間を歪められており、入ることはできますが出ることができません。
脱出には時空歪曲装置を破壊する必要があるでしょう。
※時空間が歪んでいるので周辺に一般人はいません。
家屋や物を破壊しても歪んだ空間の物を破壊したに過ぎませんので、
空間が戻ると壊れた物も何事もなかったかのように戻ります。
◆勝利目的
ちーあの脱出
◆敗北目的
ちーあの死亡
◆予想されるルート
ちーあと時空歪曲装置を探す 同行者:ちーあ
:ちーあのサーチ能力を用い、空間を歪めている原因の装置を探します。
装置の周りはガーディアンが守護しており、守りは堅牢です。
チビナミを追いかける 同行者:ナディス
:逃げたチビナミとデスデオンを追いかけます。追いかければデスデオンとの戦闘は避けられないでしょう。
イザナから分裂した存在であり、敵『イザ那美』であったチビナミを助けるか、それとも助けないか。
どういう選択を取るかはあなた次第です。
ガーディアンを相手に陽動 同行者:ツクヨ
:周囲を徘徊しているガーディアンを派手に討伐し注目を集める陽動作戦です。
ガーディアンは強固な盾と硬質のブレードで武装している近距離タイプ、
砲台を担いだ遠距離タイプが存在します。
このルートの働きで装置を探すメンバーが動きやすくなると思われます。
黒い影の相手を引き受ける 同行者:イザナ、イヴァ
:地面から湧き出す黒い影を相手にします。
彼らが女性に引き付けられる特性があり、非常に『アブナイ』です。
油断すれば生命力を吸い取られてしまうことでしょう。
◆予想される敵
デスデオン
:コマ型の一軒家ほどもある巨大な敵。四つ足だが足を一つ失っている。
回転式のビーム砲台を腹部に持ち、射程は全周囲に及び死角はない。
足先にはドリルが装備されており威力は強烈の一言。
表面装甲は分厚く、並の武器や攻撃では傷一つつかない。
頭頂部にろっこん無効化フィールド装置が設置されておりそれらを守るように
頭頂部にはバルカン砲が多数装備されている。迂闊に近づけばハチの巣になるだろう。
ガーディアンS型
:ディガードが配置した戦闘兵器。強固な盾で武装した近接型は高周波ブレードを装備しており、
攻守共に高い水準で纏まっている。動きも機敏であり、隙は少ない。盾が固い分、本体は比較的防御が薄い。
ガーディアンB型
:肩に砲台を装備した遠距離型。装甲はS型に比べて分厚いがその分動きは鈍重。
遠距離からでも高精度の電磁誘導レールキャノンを放つ為注意。
なお近接防御用に両腕がガトリング砲となっている。
黒い影
:負のオーラに惹かれてやってきたこの世ならざる者達。
強い生命力に惹かれる性質がある。なぜか女性だけを襲う習性があるようだ。
◆ちーあの支給武器
ちーあが製作したちーあ印の怪しい武器。強力だがかなり癖がある。
一つだけ、持っていくことができる。
むきむきの腕輪
:装備すると身体能力を上げ、剛力を発揮できる腕輪。
使用していると次第に劣化し青から赤へと色が変化していく。
完全に赤くなると効力を失ってしまう。
リミッターが設定されており、1分しか発動できない上、使用後はしばらく動けなくなるが
解除すれば凄まじい超怪力を手に入れることができる。
しかし発動中も身体を引き裂くような激痛に襲われてしまう。
呪われし刀『じゅさつ丸』
:どこをどう間違ったのか製作の過程で呪われてしまった刀。
持つとなぜか男性は『女体化』する。女性は『男性化』する。
効果は精神ではなく、肉体の性別に由来する。
体の変化は刀を手放しても一日は残ってしまう。
切れ味に関しては凄まじく、鉄でさえ両断可能だが技術がない者が振ると折れてしまう程に脆い。
ばしゅばしゅガン
:ハンドガンに似た形状をしているが銃口にラッパのような物体が付いている。
トリガーを引くと『ばしゅ』というちーあの声と共に魔力弾が発射される。
側面に『押すな』と書かれた謎のボタンがある。
登場人物
チビナミ
:力を奪われ、弱体化してロリ巨となったイザ那美。のじゃ口調。
自分が『存在してはならない造り物』ということを理解しており人からは距離を取る所がある。
イザナのことは実はどうでもよく、彼女をさらっていたのは雷神達の意向だった。
その正体は別世界の人間が非人道的なロストワードの研究の末に作り出した『生体兵器』である。
ちーあ
:皆様を非日常に放り込む張本人。絶壁ロリで元気いっぱいな機械生命体。でも見た目は人と変わらない。
ありとあらゆるコンピューターにハッキングできるが割とポンコツの為、よく失敗する。
日夜怪しい研究品を開発している。それらが役に立つかどうかは皆様しだい。
ツクヨ
:わがままボディを持つ金髪紅眼の女性。戦闘狂であり、三度の飯より戦闘が好き。
中距離では赤い鎖を鞭のように扱い、近距離では二本の赤い長剣で戦うオールラウンダー。
攻撃魔法も扱える万能さ。
最近、回復魔法も使えることが判明したがもっぱら敵への拷問にしか使っていなかった模様。
寝子島のファーストフードにハマっており、気が向けば訪れている。
なお味の濃い料理が好みで、味噌や醤油を好む傾向。魚よりは肉派。
ナディス
:異世界アルカニアから勇者修行のために寝子島へ来ている少女。
この世界で出会った師匠に追い付く為に一生懸命努力中。
近接格闘と魔術を組み合わせたスタイルが特徴。高威力の魔法の命中率はいまだ低い。
なお最近胸が大きくなってきており、戦闘の邪魔だと悩み中。
イザナ
:ちーあの仲間で黒髪でツインテールの少女。
雷を扱う戦士であり中距離、近距離選ばず戦えるオールラウンダー。
なお料理は壊滅的な腕であり、どんな素材を使ってもこの世の物と思えない料理を作り出す。
イヴァ
:ちーあの仲間の悪魔の少女。ツクヨには劣るがなかなかいいスタイルをしている。
癖のあるメンバーの中では一番の常識人であり、みんなのオカン的存在。
得意な事は料理家事全般と家庭的だが、ひとたび戦場に出ると身の丈程もある大鎌を高速で振り回す戦士となる。