愛猫 萌々子がBarアストラルを訪れると、いつも活気あふるる店内はやけに静まり返り、卓の整然とした並びは乱れに乱れ、酒も料理も床へ散り放題となっていた。
「あ、あれ? なにかトラブルですか?」
「もーっ、だらしないなあおっちゃんたち! ぼーけんしゃって、大したことないんだねえ」
ある者は前のめりにつっぷし床を舐め、ある者は壁を抱きしめたまますっかり目を回している。
屈強な冒険者たちが軒並み倒れ伏す中、萌々子の眼前に悠々と立っているのは、ひとりの
少年だった。
裸の。
「……は、ええー!? ちょ、な、なんで何も着てな……ええー!?」
はわわわわっ
思わず両手で自ら目を覆う。指の間からちらっ、ちらっと見えてしまうが、少年が動くたび揺れるナニカが見えてしまうがこれはもう不可抗力というものである。なんなら萌々子自筆の漫画にリアリティを持たせるための取材のようなものである、何らやましいところはないのである。
といった言い訳を心に並べつつも、状況を把握するため目を見開き周囲を確認する。
少年は滑らかな褐色の肌をした、それはもうすこぶる美少年であった。艶やかな黒髪を無造作に腰まで伸ばし、瞳は無邪気に青く輝いている。
面は幼気だが身体は細身ながらに締まっており、健康的かつ活動的なしなやかな美体であった。
あえてなぞらえるならば、純粋無垢な肉食獣の幼体といったところだろうか。
「ねーちゃんも、ぼーけんしゃ?」
「えっ、わ、私ですか? それはまあ……」
「じゃ、ねーちゃんもおれとたたかってくれる?」
にぱ、と少年はあけっぴろげに笑む。赤子めいて純真、花咲くようにきらめく快活な笑顔に、萌々子はまぶしさを感じてしまう。
「たたかう? えっと、ケンカするってこと?」
しかしその言葉によればどうやら、床に転がる冒険者たちの有様は、この少年の手によるものらしい。
「いえっ、めっそうもない! 私は魔法使いタイプの冒険者ですし、殴り合いとかはちょっと……」
「そっかあ。ざんねん!」
少年はててて、と萌々子の脇をすり抜け酒場の扉を開き、外気へ裸体をめいっぱいにさらすと、くるり振り返る。
「ねーちゃんのモノになら、なってあげてもいーかなぁって。ちょっとだけ、思ったのになー?」
そうして再び笑みを残し、駆け出していってしまった。
裸で。
萌々子はぽかんとしたまま、すべやかな形の良い褐色の尻を見送ってしまったが。
「くそっ、あのガキ好き放題やりやがって……いてて」
「あ、大丈夫ですか!?」
目を覚ましたらしい冒険者のひとりを助け起こすと、いかにも口惜しげに語った。
「あいつ、あのガキは、人間じゃねえ。
剣なんだ!」
「剣……?」
いわく。
クエスト中、とある遺跡を探索していたところ、その奥に聖堂を発見した。
地下深く作られた聖堂の最奥には神々しく光差す台座が設えられ、一振りの剣が突き立っていたという。
「うっすらと透けた幅広の刀身が、碧緑に輝いていて……長いこと誰も入ってない未踏破の遺跡で、ホコリもかぶらず、錆び付いてさえいなかったんだ。こいつは由緒正しき、古代の聖剣に違いねえ! と思って、喜び勇んで持ち帰ったわけなんだが……」
「そうしたら剣が、男の子に変わってしまったと」
遺跡や剣の由来は不明だが、ともかくかの少年は、剣の化身であるようだ。
そして剣たればこそ、より強い使い手を欲するのだろう。酒場で冒険者たちにケンカを吹っ掛けたのは、彼流の試練というわけだ。
やがてBarアストラルのクエストボードに、一枚の依頼が張り出された。依頼人は剣を手に入れた冒険者と、酒場の店主の連名だ。
『聖剣の化身たる少年を連れ戻してほしい』。
冒険者は依頼を受けた者たちに、台座に刻まれていたという銘を告げた。
その名は、
聖剣『ハウケルン』。
「ふむ。ハウくんですか」
あの少年を放っておくわけにもいくまい。幼さ残す男の子が何もかもさらけだしたまま、街中でプラプラとさせている……いやフラフラとしているのはいかにもよろしくないし、何よりあの調子でケンカを売りまくっていたら、どんな事態に陥るや分かったものではない。
彼自身のためにも、大いに戸惑うであろう城下町の人々のためにも、連れ戻さねばなるまい。
「ここは冒険者として、協力すべきですね! 見ちゃったし……」
墨谷幽です、よろしくお願いいたします~。
愛猫 萌々子さん、ガイドへご登場いただきありがとうございました!
(ご参加いただける場合は、ガイドのイメージに関わらず、自由なアクションでどうぞ!)
このシナリオの概要
第一階層、サジタリオ城下町を、裸の少年が駆け巡っています。
彼は聖剣の化身であり、自分を所有するにふさわしい、強い持ち主を求めています。
その基準は不明ですが、今のところはとにかく強そうな冒険者や戦士、
騎士などにところかまわずケンカを吹っ掛けています。
ちなみに、超・つよいです。
皆さんは冒険者としてBarアストラルの依頼を受けたり、
あるいは道端でばったり出くわしたりして、この少年と関わることになります。
少年に真っ向勝負を挑むもよし。
話し合いで解決を図るもよし。
その他の方法を試みても構いません。
自由にお楽しみください!
アクションでできること
少年は、サジタリオ城下町のどこかにいます。
あなたが彼と出くわす場所は、自由に指定して構いません。
彼は奔放で、大体どんな場所にも顔を出します。
少年の正体は、聖剣『ハウケルン』と呼ばれるひと振りの剣です。
その由来や来歴は今のところ謎です。彼自身が知っているかもしれませんし、知らないかもしれません。
剣の状態では、半透明でエメラルドに輝く刀身を持つ豪奢な長剣で、どうやら星の力が宿る不思議な剣のようです。
人間の状態では、小柄で俊敏、身体能力や膂力にも優れ、非常に強靭です。
また剣の特性を反映してか、身体の一部を硬化したり、爪を鋭利な刃のように使うことも可能です。
彼は強い相手を探していますが、肉体的な強さのみならず、知力や知識、
戦術や戦略に長けているのもまた、彼の求める能力のひとつであるようです。
力に自信が無い方も、自分なりの方法で挑んでみてください。
ところで、依頼人である名も無き冒険者は、彼を剣として手元へ置くことを希望しているようですが……。
さて?
NPCについて
登録済みかつほしびとのNPCなら、特定のマスターが扱うキャラクターを除き、基本的に誰でも登場可能です。
また、星幽塔第一階層に登場した未登録のNPCも、アクションによっては登場可能かもしれません。
また、このシナリオでは、Xイラストのキャラクターも描写することができます。
口調などのキャラクター設定は、アクションに記載してください。
Xキャラ図鑑に書き込まれている内容は、そのURLだけ書いてもらえれば大丈夫です。
星の力
星幽塔にいると、星の力 と呼ばれる光が宿ります。
★ 基本的な説明は、こちらの 星の力とは をご確認ください。
星の力やその形状は、変化したりしなかったりいろいろなケースがあるようですが、
このシナリオの中では変化しませんので、このシナリオではひとつだけ選んでください。
ひとともれいびにはひとつだけですが、
ほしびとには、第二の星の力(虹)もあります。
★ 虹についての説明は、こちらの 第二の星の力 をご確認ください。
アクションでは、どの星の光をまとい、その光がどのような形になったかを
キャラクターの行動欄の冒頭に【○○の光/宿っている場所や武器の形状】のように書いてください。
衣装などにこだわりがあれば、それもあわせてご記入ください。
衣装とアイテムの持ち込みについて
塔に召喚されると、衣装もファンタジー風に変わります(まれに変わってないこともあります)
もちものは、そのPCが持っていて自然なものであれば、ある程度持ちこめます。
※【星幽塔】シナリオのアクション投稿時、作物・装備品アイテムを所持し、
【アイテム名】、【URL】を記載することで、
シナリオの中で作物(及びその加工品、料理など)・装備品を使用することができます。
※URLをお忘れなく!!!
※オーダーメイド装備品についてNew!
鍛冶工房のトピックを経る(またはシナリオなどで得る)場合のみ
アクション冒頭で指定した星の力とは別に、装備品固有の《特殊効果》が認められます。
アイテム説明欄に、トピックでの完成時の書き込みURL・シナリオ入手時のURLを記載してください。
例:http://rakkami.com/topic/read/2577/2116
以上になります。
それでは、ご参加をお待ちしております~!