「ゆけっ! メイジンダー・リトライ! 百倍ロケットナックルだ!」
両腕を振り上げた堂々としたカプセルギア、メイジンダー・リトライ。その姿は寝子島小学校のそば風の原公園のブランコ上にありました。
両腕を眼下へ向けると、肘のロケットがバシュンと点火。両腕が勢いよく飛んでいきます。
「受け止めて、ガラクタ君!」
「迎撃だよ、カオスダイバー!」
鈴島 クミと
陸堂 源次がそれぞれ携帯端末に呼びかけると、滑り台の上から二機のカプセルギアが飛び出します。
カオスダイバーは踵のホイールダッシュで滑り台を勢いよく駆け抜けると、最後の曲線で大胆にジャンプ。
空中で上下反転して右手の機関銃を乱射しました。
カオスダイバーめがけて迫るロケットナックルに次々と命中。ぐにゃぐにゃと軌道を歪ませると、そのまま砂場へと落ちていきます。
一方でスクラップトレジャー九三式はジャングルジムの中へと駆け込みます。ロケットナックルが背後から迫るなか、ジグザグにジャングルジムの柱を抜けていくのです。
しかし中央でブレーキ。
柱を回り込もうとカーブしたロケットナックルへ急速旋回すると、右手のブレードで速度の落ちたロケットナックルをたたき落としました。
「なかなかやるな!? だがまだ武装はあるぞ! メイジンファイヤーだ!」
胸を大きく光らせ、熱光線を発射するメイジンダー・リトライ。
が、そんな機体のすぐ真下に恐ろしい姿がありました。
しっぽで柱にぶら下がっていたのは――。
「今だ、N.E.O.M.U」
「何――!?」
ぐるんと飛び上がり、メイジンダー・リトライに組み付くN.E.O.M.U。恐ろしい口を開くと、相手の頭にかじりつきました。
「ぬああっ……!?」
端末のHPゲージがゼロになり、ブランコの柱から墜落するメイジンダー・リトライ。
「……まただめだ。やっぱり僕は才能ないんじゃないだろうか」
メイジンダー・リトライを手にとって――カプセルギアノーマルヘッドそのもののヘルメットを被ったおじさんはため息をつきました。
彼はCAPGEAR MEIJIN。国内唯一のプロ・ギアマスターです。
カプセルギアといえば愛光堂なので、きっと愛光堂の人なんだろうなあとは誰もが思っていますが、その正体はヒミツなのです。
「そんなことないですよ。三人のカプセルギア相手によく立ち回ってましたし……」
神嶋 星志郎がメイジンを慰めるように肩をぽんと叩きました。
ブランコに座ってしょぼくれるおじさんと、その肩を叩く小学生の図は、なんだかとっても哀愁を加速させるものでした。夕日だって出てるし。
「カプセルギアは『もうひとりの友達』なんだ」
なのでメイジンが語り初めても、
環 的子や源次は黙って聞いてあげました。
鈴島 クミも黙って見ててあげるくらいです。
「誰でも、どんな子でも、自分というカプセルの中に戦う姿を持ってる。それはいびつなものかもしれないし、恐いものかもしれない。けれどそれを別の誰かと見せ合って、ぶつけ合ったとき……友達になれるんだ」
「「……」」
的子には心当たりがありました。
ネオムという彼女のカプセルギアはとっても恐い容姿をしているけれど、それを彼女は選びました。選んで、そして皆と戦いました。
ネオムを通して誰かの心を感じて、そしてネオムの心も感じることができたのです。
勿論星志郎にも心当たりがあります。
カプセルギアを通してできた友達や仲間やライバルが、沢山いました。
「カプセルギアは子供たちの……みんなの世界を内側から広げてくれる。そんなものにしたいんだ。なのに僕がこんなんじゃあ……」
はあ、とメイジンはもう一度大きなため息をつきました。
こうなってしまった理由を、クミたちは知っています。
すこし前のこと。
メイジンが皆の前でカプセルギアを披露するイベントの日、『MOD_OCEANVIEW』のわるい影響によって彼のカプセルギアは暴走し、子供たちに襲いかかってしまったのです。
プロとしての面目は勿論、彼の夢や希望はとってもひどく壊されてしまったことでしょう。
「メイジンダー・リトライはそんなメイジンの再挑戦って意味を込めて作ったんでしょ?」
クミや源次たちがカプセルギアを手にして、にっこりと笑いました。
「何度だって挑戦すればいいんだよ。また練習、付き合ってあげるからさ」
「みんな――」
メイジンが顔をあげ、バトル再開だとばかりにメイジンダー・リトライを地面にセットした……その時です。
「ハッ、そのオッサンにリトライのチャンスなんか無いぜ!」
真っ黒なカプセルギアを手にした少年が現われ、水飲み台の上にそれを置きました。
「ブラックメア、奴のポンコツを粉々にしろ」
端末に呼びかける少年。次の瞬間、ブラックメアと呼ばれた黒いカプセルギアはライフルを放ち……メイジンダー・リトライのヘッドパーツをバラバラに破壊してしまったのです。
「なっ――」
それもたったの一瞬。次々に打ち込まれる弾丸によって、メイジンダー・リトライは完膚なきまでに破壊されてしまいました。
「カプセルギアが相手のギアを物理破壊するなんて……そんな機能はないはず。なんなんだ、そのギアは!」
「知らないのかい? ユグドラシルのニューパーツさ。そして……」
パチンと指を鳴らす少年。
後ろから現われるカメラマン。そして無数のギアマスターたち。
今の様子がネット中継されていることを、彼はスマホを翳すことで示しました。
「今度からは僕がメイジンだ。時代遅れのメイジンとパーツにはご退場願わないとね」
身構えるブラックメア。
クミや的子たちはそれぞれのカプセルギアをセットして、戦いの姿勢をとりました。
「みんな、今なに考えてる?」
「相手をぎゃふんと言わせたいとか?」
「違いますよね」
「うん、ちがう」
メイジンの言葉を思い出します。
そして今、大事なカプセルギアを壊されて声も出せないメイジンを見ました。
「折角ネット中継されてるんだ。『本当に楽しいギアバトル』ってものを、見せつけてやろう!」
相手は大企業の作ったイレギュラーなカプセルギア。
負ければギアは壊されてしまう。
けれど、それがなんだというのでしょうか。
寝子島の子供たちが戦うと決めたとき、そこに希望は生まれるのです。
「巨大な海外企業『Yggdrasill(ユグドラシル)』――奴らはカプセルギアに目をつけたのだよ。正確には、その技術と市場にね」
所変わってここは海堂 洋子のお家。
緊急事態だと言われて集められた
牧 雪人をはじめとするギアマスターたちは、パソコンの画面に表示されたゲーム画面を見ていました。
「そのひとつがコレ。カプセルギア・アーケードだ。ゲームセンターや家庭用ゲーム機を開拓することでシェアを広げようとしたのだな。この試みは成功して、大人の間でもカプセルギアの趣味が広がってる。ここまでは知っているかね?」
「まあ、それなりにはね。この中にも遊んだことのある人はいるんじゃないかな。実際によくできてたよ。相手のカプセルギアを破壊できるって言うところまで作り込まれてて……」
「それが、現実でも起こりうるとしたらどう思うね?」
「うん?」
雪人は首をひねりました。カプセルギアを遊ぶのは殆どが小中学生の子供たちです。
彼らのお小遣いで揃えられるのはせいぜい一体のカプセルギアだけ。バトルのたびに壊れてしまっては、とてもお金がかかってしまいます。
「ユグドラシルはカプセルギアの市場を奪い、大人の遊びに変えるつもりだ。
だがその障害となるのが……」
「僕たち本場のギアマスター、ってわけか」
「彼らのやり方はシンプルだ。自社の雇ったプロゲーマーたちをこの寝子島に送り込み、『本場のギアマスター』を完膚なきまでに破壊して回る。
その様子をネット中継することで自分たちの優位性を示すって魂胆さ。
うーん、悪くない。破壊と闘争は大人を刺激するからなあ……」
「そんなこと……っ」
雪人が珍しく目尻を上げました。
ゲーマーとして、他人を踏みつけにする経営戦略が許せないのかも知れません。
けれど怒っているのは洋子も同じなようでした。
カプセルギアを破壊できるプログラム……それは、彼女の『MOD_OCEANVIEW』を流用したものに違いないからです。
暴走ではなく悪用。恐れていた事態でした。
「ああ。愚かなことさ。そしてその愚かさをすぐに知ることになるだろう。なにせこの島にいるのは、夢と希望に満ちあふれたギアマスターたちだ」
洋子はマタタビメイトを頬張り、親指をぺろりと舐めました。
「その様子を全国に生中継すれば、『本当のギアバトル』が何なのか……知らしめることになるからね」
「この状況を逆に利用する、ってわけか」
二人はスマホを取り出しました。
そう、島のギアマスターたちに、このことを伝えるためです。
「ユグドラシルのギアマスターたちに『本当に楽しいギアバトル』を見せつけるんだ。
本当の『アソビ』は、人の心を動かすものだよ」
ごきげんよう、ギアマスターの皆様。
こちらは携帯戦記カプセルギア、その第四話でございます。
牧 雪人くん、海堂 洋子ちゃん、そしてメイジンと共にみんなの『アソビ』を世界に見せつけてやりましょう!
なおこのシナリオは、小学生、中学生のPC限定シナリオとなります。
(※ほしびとは、【ひと時の外見年齢が小・中学生以下】のPCのみ参加可能)
申し訳ありませんが、該当しない方のご参加はできませんので、お気を付けくださいませ。
『カプセルギア』とは?
『携帯戦記カプセルギア』とは、頭や腕、足などを組み替えてカスタマイズできる、
全高10cm程度の小さなロボットのこと!
スマートフォンにインストールした専用アプリで、ラジコンのように自由に動かすことができます。
詳しくは『携帯戦記カプセルギア 第一話「運命の出会い!!」』の説明をご覧ください。
このシナリオの概要
カプセルギアの市場を奪おうと企む大企業ユグドラシルが行動を起こしました。
プロのギアマスターを雇い、寝子島へ大量に投入したのです。
あちこちで辻バトルを仕掛け、その様子をネットで生配信するというものです。
しかしユグドラシル製のカプセルギアには相手のカプセルギアを破壊するという能力が備わっています。
そんなカプセルギアに立ち向かい、『本当のアソビ』を全国に見せつけてやるのです。
それこそがカプセルギアの……『アソビ』の本当の勝利となるでしょう。
アクションでできること
アクションの冒頭に【1:メイジンパート】【2:洋子パート】【3:個人パート】のいずれかをカッコつきでコピーしてください。
それがキャラクターの参加パートとなります。
どういう内容かを解説していきましょう。
【1:メイジンパート】
メイジン(CAPGEAR MEIJIN)は国内唯一のプロギアマスター……でした。
暴走事件から一転、とっても沈んだおじさんになってしまった彼を狙って、ユグドラシルのプロギアマスターたちが辻バトルを仕掛けたのでした。
彼の周りには腕自慢のユグドラシル・ギアマスターたちが集まり、寝子島のギアマスターたちに勝負を挑み始めるでしょう。
その場に駆けつけ、バトルをしたり……応援をしたり……!
がちがちのバトルパートです!
【2:洋子パート】
洋子ちゃんや雪人くんと一緒に寝子島へ繰り出して、あちこちで辻バトルを仕掛けようとしているユグドラシル・ギアマスターと戦ったり事件を調査したりしましょう。
こちらはメイジンパートと比べてちょっぴり真相寄りのお話になります。
ユグドラシルの狙いや、島にプロギアマスターを送り込んだ人物などに触れることがあるでしょう。
【3:個人パート】
島中ではユグドラシルのギアマスターが辻バトルを仕掛けて回っています。
これに遭遇して戦うことにしてもいいし、誰かが襲われているところに乱入しても構いません。
NPCとは別に進む個人パートです。アクション次第でいろんなお話になります。
※ガイドにご登場頂いたキャラクターの皆さんへ。
一旦メイジンパートにご登場頂きましたけれど、別のパートに参加してもOKです。お好きなところにご参加ください。
NPC
・CAPGEAR MEIJIN
国内唯一のプロ・ギアマスター。スーツ姿にノーマルヘッドのマスクをかぶったおじさんです。
今や国内唯一じゃないしプロギアマスターでもなくなってしまいました。
再び作った愛機も壊されてしまい、今は失意のどん底です。
……ちなみに。島の愛光堂へ行くと旧機の『メイジンダーX』が置いてあります。
・牧 雪人
カプセルギアの扱いに長けた少年。
みんなと一緒にユグドラシルのギアマスターとバトルしたり、調査に同行します。
・海堂 洋子
カプセルギアそのものに興味はないものの、メカやプログラムには強い関心をもっている。
とある理由で部屋にひきこもっているらしく、学校にも行っていないようです。
カプセルギアの遊び方
1.カプセルギアの作り方
2.購入や操作の方法
3.アクション提出の手順
参考:くわしい情報の紹介