全ての希望に火を灯す──最終決戦を終え、平和のもとに寝子島のひとも訪れるようになった星幽塔。
その賑やかな街並みの、第一階層の一角に、薬屋『
Uisge beatha』は存在していた。
ドアを開ければ、複数の薬草が混ざり香る良い匂いがふわりと広がる。
入ってすぐ、少し足を進めれば、依頼した薬草の調合を待つ客をもてなす為であろう。店主である
アルレッテ・ザメニスのセンスにより、品の良さが際立つテーブルと椅子、薬の入った棚等の調度品が出迎えた。
「今日は静かだね。たまにはこういう日も良いかもしれない」
外の通りの往来は賑やかだが、店内は今日は客もおらずとても静か。
アルレッテは、ゆったりと落ち着ける効果のあるハーブティーを淹れて、ゆったりとしたアフタヌーンティーの時間を過ごし──
バタン!!
「ここかい?『Uisge beatha』という薬屋は!?」
──ていた時間は、激しいドアの音と共に、一瞬にして消え去った。
「そうだけれども、お客さんかな?」
店内に飛び込んで来たのは、まだ成人したばかりくらいであろう、小さな丸眼鏡を掛けた、見るからに学者肌の男だった。
驚きから、ティーカップを持ったままのアルレッテに、男が背負っているサンタクロースのプレゼントのように膨れ上がった白い袋が目に入る。
「ああ、そうさ!
いや、そうさというか、違うというか……!!」
男は、その説明すらももどかしそうに、自分を星幽塔一の『薬・薬草研究』の研究者であり第一人者であると語り始めた。
それが、自称かそうでないかを確認する術はないが、そういう事にしておこう。
「ここの店の噂を聞いてきたんだ。
なんでも、星幽塔のあらゆる薬草を調合して薬を作ってくれるというじゃないか!
薬草のエネルギーを掛け合わせて、それ以上のポテンシャルを引き出す! 素晴らしい、本当に素晴らしい!!
それは薬はもちろん、薬草についても一際理解を得られる『エクセレントォ!』な機会だと言っても過言ではない!」
店内飛び込みからテンションの下がらない研究者は、背中に背負っていた大きな袋を、アルレッテの目の前に置いた。
「そこで、だ!」
何とか状況理解が追い付いてきたアルレッテの前に、研究者が一言断りを入れると、次々とそのテーブルの上に『薬草』を広げ始めた。
「おや……? これはサファイア・リリーだね。それに、エリクシルハーブ……シュガーメロンまである」
アルレッテの目に入ったのは、星の力を回復する水晶のような花、万能薬の原料に、甘味でありながら美容効果アップの果物──それだけではない、恐らく袋の中全部が薬草なのであろう。アルレッテの座るテーブルの上には、あっという間に置ききれないだけの薬草であふれ返った。
「そこで、お願いがあるんだ……!
この薬草を『全部』提供するから、これらを自由な発想で調合してもらい……
『どの調合で、どんな薬が作られたか』を、後で私に教えて欲しい! そのデータこそが、私の宝物となるのだ! どうか、どうか……!」
頭をほぼ90度に下げる研究者。
対して、アルレッテは無言でその薬草の山を見つめている。
「あ……! 足りなかったら、必要経費はもちろん労力代金もお支払い……!」
「え? ああ、違うよ。
いくら薬草があっても、私一人の発想では、沢山の種類の薬を作るには難しいかなと思ったんだ。
きちんと調合レシピは残すから、他にも作る人を呼んでも良いなら──」
「どうか、どうか! よろしくしくお願い申し上げるーーーっ!!」
こうして研究者は、アルレッテにたまに様子を見に来ると告げて、山ほどの薬草が入った袋を置いて立ち去った。
「そうだね……たまには、他の人にも楽しんでもらえるように。
取り扱い注意の薬草に気を付けて、作業場も今日だけ危険な物は片付けて。
後は、調合に自信のない人の手伝いが出来れば……」
アルレッテは独りごちながら考えつつ、酒場と広場を訪れ、そっと張り紙をした。
【たくさんの薬草を使って、貴方だけの薬を作ってみませんか?
今日は、材料費と代金は無料です】
初めましてこんにちは、冬眠と申します。
この度は、ぐらぐらイベントのプレゼント「薬屋『Uisge beatha』」様を舞台としたシナリオをお届けさせて頂きます。
ガイドでは、薬屋さんのご主人であられますアルレッテ・ザメニス様にご登場頂きました。誠に有難うございます。
この度ご縁がございました場合には、ご自由にアクションを掛けて頂けましたら幸いでございます。
それでは、以下より状況説明となります。
状況
薬草から調合を行い、薬を作る「薬屋『Uisge beatha』」の噂を聞きつけ、ハイテンションな自称【星幽塔一の『薬・薬草研究』第一人者】の研究者が、大量の薬草を持ってやってきました。
目的は、その薬草を全て提供する代わりに、
それらの薬草を組み合わせて調合してもらい、結果どんな薬を作った(どんな薬になったのか)を、可能な限り研究データとして取らせてもらいたいという、純粋な向学心のもようです。
……という状況ではございますが、せっかくの薬作りの機会。様々な薬草に触れてみたり、好きに薬を調合してみたり、ただお茶をしてみたりなど。
この素敵な薬屋さんを舞台に、自由に楽しいアクションを掛けて頂けましたら幸いでございます。
アクションでできること
薬屋『Uisge beatha』内にて、以下の薬草リストから好きなものを選んでいただき、調合の過程を経て、参加者様が求めるオリジナルの薬を作って頂く事が出来ます。
オリジナル薬の例:薬屋『Uisge beatha』様の 『星の滴』
○アクション内に、調合に使う薬草複数と、加工結果(成功品、もしくは失敗品の効果)のご記載をお願い致します。
・特別コースと致しまして『結果はマスターにお任せ』コースがございます。
こちらは、アクションにてその旨と使用する薬草のご提示を頂けましたら、それを元にMSがアドリブで調合致します。
(成功・失敗、薬の効果は完全にMS裁量となります。
調合した薬が狙った効果にならなかった等、博打要素の高いコースとなります為、あらかじめご了承下さい)
※薬の調合に使用できる薬草の数は、最大『3つまで』となります。
※このシナリオで作って頂いたアイテムは、次以降の星幽塔シナリオにおきましても使用可能です。
○また、来店下さった方には、お客様の種族を問わず、店内の入り口近くに置かれたテーブルにてハーブティーがふるまわれるようです。
お店の雰囲気を味わいたい場合など、薬作成を行わなくとも雑談などを交えて、ゆったりと寛いだ時間を過ごしていただくことが可能です。
○その他にも『他の参加者様の手伝い』等、ご自由にお書き添え下さい。
薬の合成に使用できる薬草
研究員が、薬草の簡単なメモとイラストが書かれたノートを置いていきました。
主に幅広い環境の農耕地帯が広がっている、第三階層の薬草がメインのようです。
★大自然あふれる森林地帯 『妖精杜』の薬草
○星型の薬草
煎じて飲むと高い治癒効果を発揮。第三階層に生える薬草は、いずれも強力なポーションの材料になる。
○三日月型の薬草
鎮静作用があり、精神力を回復し心を落ち着かせてくれる効果がある薬草。
○稲妻型の薬草
非常に強い覚醒作用があり、どんなに強力な眠気に苛まれていても、シャッキリと目を覚まさせて
くれる薬草。
○雲型の薬草
複数の毒素に対し、高い解毒作用を発揮する薬草。
○ドラゴンキャベツ
まるで竜の肉のようだ、と称されるほど分厚くジューシーな葉肉が特徴の巨大キャベツ。
○星の牧草
星の力を帯びた牧草。良質な飼い葉の材料になる。イネ科は馬力やスタミナを、マメ科は瞬発力や
スピードを成長させるのに効果的。
○レインボーベリー
様々な果物の触感や味、特徴を合わせ持つ、奇跡の果実。非常に美味であり、別の階層では高値で
取引されている。
★とにかく熱い溶岩地帯 『溶岩洞』の薬草
○核熱トマト
食べると一時的に物理攻撃力をアップさせてくれるトマト。料理法により効果は増減するようだ。
○金剛オレンジ
食べると一時的に物理防御力をアップさせてくれるオレンジ。痛みを和らげてくれる効果もある。
○日輪の花
美しく咲く金色の花。そのまま摂取しても効果はないが、ポーションとして調合し服用すると、
自然治癒力を高めることができる。
○炸裂イモ
衝撃で小さな爆発を起こす芋。導火線を刺せば簡易手榴弾にもなる。甘味が強く食べても非常に
美味だが、調理には注意が必要。
○エリクシルハーブ
疲れ、衰弱、各種毒素などに幅広く効果を発揮する、万能薬の原料となるハーブ。
○鷹の胡椒
非常に鋭い刺激分を含む胡椒。摂取すると神経が研ぎ澄まされ、一時的に静的視力、動体視力ともに
大きく強化することができる。
○足軽小麦
第六階層の雲海にて自生するたくましい小麦。食べるとごく短時間ながら脚力が強化され、
ジャンプ力を大きく向上させることができる。
○焦熱小麦
食べると燃えるようにパワーが漲り、一時的に星の力を用いた攻撃の威力を高める効果がある。
○テルミツ唐辛子
強烈な激辛成分を含む唐辛子。含まれる油分は、火にさらされると非常に激しく燃え上がるため、
扱いには注意が必要。
★とにかく凍える雪と氷の中 『氷結谷』の薬草
○サファイア・リリー
水晶のように透き通る美しい花。星の力を回復する薬の材料になるほか、
観賞用としても珍重されている。
○モグラダイヤ
椿に似た常緑の低木に咲く花。カットダイヤに似た実をつけ、特にモグラが好んでこれを
食べることから名づけられた。
○アンテナアスパラ
一見普通のアスパラだが、穂先を弾くと淡いエメラルド色に発光し、同じ親茎から生えたもの同士で
光が伝播していく性質を持つ。簡単な連絡手段として使うことができる。
○シュガーメロン
しっとりとした氷砂糖のような食感と甘さのメロン。強力な美容効果があるとの噂で、
各階層の富裕層の女性に好まれる。
○マッスルバニラ
筋肉質な人間がポーズをつけているような形をした蔓性植物。顔に当たる部位には甘く香る花をつけ、
胴部を絞ると良質な油分が抽出でき、美肌効果がある。
○ホットカカオ
焼くと良い香りを放つカカオの実。適量な摂取は、鎮静作用があり心が落ち着くが、
過剰に摂取すると、服を着ていられないほど身体が火照ってしまう。
これ以外にも、オリジナルの効能を持つ薬草も持ち込み可能です。
その際には、アクションに名称と効能の記載をお願い致します。
※効果や効能が極めて強い薬草・薬は、適度にマスタリングされます。
登場NPC
○今回は名前の付いたNPCの登場はありません。あらかじめご了承ください。
○薬屋に大量の薬草を持ち込んだ研究者は、薬草についてはある程度知っていますが、調合に関してはからっきしで、殆ど役に立ちません。
しかし、実際に調合作業を行う日(リアクション)では、嬉々として立ち会います為、
火を使う際の見張り番や、役に立たなくとも敢えて相談してみる、ティータイムを過ごす際の話し相手程度にはなります。
星の力
星幽塔にいると、星の力 と呼ばれる光が宿ります。
★ 基本的な説明は、こちらの 星の力とは をご確認ください。
星の力やその形状は、変化したりしなかったりいろいろなケースがあるようですが、
このシナリオの中では変化しませんので、このシナリオではひとつだけ選んでください。
ひとともれいびにはひとつだけですが、
ほしびとには、第二の星の力(虹)もあります。
★ 虹についての説明は、こちらの 第二の星の力 をご確認ください。
アクションでは、どの星の光をまとい、その光がどのような形になったかを
キャラクターの行動欄の冒頭に【○○の光/宿っている場所や武器の形状】のように書いてください。
衣装などにこだわりがあれば、それもあわせてご記入ください。
衣装とアイテムの持ち込みについて
塔に召喚されると、衣装もファンタジー風に変わります(まれに変わってないこともあります)
もちものは、そのPCが持っていて自然なものであれば、ある程度持ちこめます。
※【星幽塔】シナリオのアクション投稿時、作物・装備品アイテムを所持し、
【アイテム名】、【URL】を記載することで、
シナリオの中で作物(及びその加工品、料理など)・装備品を使用することができます。
※URLをお忘れなく!!!
ほしびとの方は勿論、ひとの方、もれいびの方も、ご自由にご参加頂けましたら幸いでございます。
それでは、レッツ・メイキング!