Now faith is the substance of things hoped for,
the evidence of things not seen.
――From "The Epistle to the HEBREWS" Chapter 11
【平穏の終わり】
女子サッカーリーグ、なでねこリーグのバンビーナ寝子島をご存知だろうか?
チームの実力はお世辞にも優秀とは言えないが、寝子島観光PR活動やサッカーを通じてのチャリティイベント開催で知られている。
6月上旬の日曜日、
寝子島高校サッカー部の面々は、バンビーナ寝子島とのチャリティ試合を行うべく、寝子電スタジアムに集結していた。
……チケットが捌ききれず、大量に余ってしまったことは目を瞑ろう。
その為、急遽3日前から寝子島周辺でチケットの無料配布が行われ、ようやくある程度の観客動員を見込めるまで達したわけだ。
級友や先輩、親族が応援に駆け付け、試合開始を今や遅しと待ち侘びる。
中にはバンビーナ寝子島のサポーターらしき大人たちや、仕事帰りに観戦しに来たと思しき社会人の姿も見える。
彼らもチケットを何処かで手に入れたのだろう。
そして、フードコートやグッズ売り場には、勤労に勤しむバイトたちの姿もある。
「ネコ島chの情報だけど、
怪人セブンがここに現れるって本当?」
そんな噂話も飛び交ったり。
確かに、そのようなスレッドの書き込みがあったようだ。
それぞれ、思い思いに試合開始までの時間を過ごしていた。
――遠くから、大勢の悲鳴が聞こえてくるまでは。
【銃声】
銃声が止んだ。
血を床に撒き散らして呻く観客。相当数の負傷者が出ている模様である。
その中に1人、胸元を血に染めて事切れた男性の姿が。
彼が横たわる床に、赤い水溜りが広がっていく。
突然の襲撃に、銃弾を免れた人々は身体を縮こませるしかない。
ここにいる観客は逃げ遅れた者ばかり。
運悪く脱出できなかった人々は次々に捕まっていく。
銃を構えているのは全員、覆面レスラーのようなマスクを被った男女。
それぞれの腰には日本刀がひと振り差されている。
その中のリーダー格と思しき男性が、拡声器片手に告げる。
「動けば、床に転がってる奴らの仲間入りだ。死にたくなければ、俺たちの人質になってもらおう」
有無を言わさない態度。
銃を突き付けられた観客に、選択肢などなかった。
「我々の名は
『叢雲(むらくも)』。この腐った国家を転覆し、新たな世界を創造する烈士であり、悪を斬る剣士である」
彼らはテロリストだった。
ヤタガラスの御旗を掲げ、幹部らしき人物たちが自動小銃を構えて整列する。
リーダー格と思しき男は日本刀を抜くと、その刃の煌きを高々と見せ付ける。
「貴様らはこれから血を流すことになる。だが喜べ。その血潮は新世界への礎となるのだ」
彼は仲間に指示し、震え上がる観客をピッチへ誘導し始める。
もはや黙って言いなりになる他ない、と諦めかけていたその時。
「下種の言いなりになんて、私はなりません!!」
1人の少女が抵抗し始めた!
その容姿は髪も肌も純白。何処か人間離れした彼女――
芽森 菜々緒が食ってかかった。
それにテロリストの1人が諭すように言ってのけた。
「真っ白なお嬢ちゃん、正義には犠牲が付き物なんだ。正義の俺たちが生殺与奪の権利を握るのは当然のことだ」
「こんなの、正義じゃありません……! あなたたちは単なる鬼畜外道じゃないですか!」
菜々緒の憤りの叫びがホールに響く。
だが、男は自動小銃の銃口を菜々緒に突き付ける。
「口先だけなら誰でも言える。それに動くなと言ったはずだ」
男が引き金を引こうとしたまさにその時だった!
「やぁああぁっ!!」
菜々緒が裂帛の気合の声をあげる!
そのまま男の懐に潜り込む!
「こういう時、合気道の手習いをしてて助かりました」
次の瞬間、銃を持った男は宙を舞い、頭から床に叩き付けられたではないか!
この隙に菜々緒は全力で逃走していった。
仲間が咄嗟に発砲しようとするが、リーダーはそれを制止した。
遠ざかる菜々緒の背をのんびりと見送る彼は、おもむろに無線で仲間へ指示を出す。
「……今逃げた真っ白な女、あれは恐らく有名な画家、芽森 白山の娘だ。人質に取ればマスコミも動かせるかもしれない。絶対に生け捕りにしろ!! 逃がさないように他の出入り口もすぐに封鎖するんだ!」
こうして、逃げ遅れた観客共々、菜々緒はスタジアム内に取り残されてしまった。
――そして、君たちもまた、運悪くこの事件に巻き込まれてしまっている。
故に、君たちは選択しなければならない。
誰かを救うために自ら血を流すのか?
それとも、大勢を見捨てて逃げるのか?
さぁ、選択したまえ。
たとえ、その答えすべてが、『傲慢』だとしても――!!
さて、続きまして七罪シリーズ第2幕。
裁かれる罪は『傲慢』――。
もしかしたら世の中、信じること自体が傲りかもしれません。
或いは正義かもしれません。
その答えは、貴方が決めて下さいませ。
難易度:地 獄
※難易度については、焼きスルメのマスターページ参照
※この難易度は、乾物のシナリオのみに適用されるものです
【過去の七罪シリーズ】
※第1部※
<序 幕・原罪>怪人セブンの邂逅
<第1幕・憤怒>怪人セブンの断罪
<第2幕・傲慢>このシナリオです
【目的】
スタジアムからの脱出
【概要】
・事件発生:6月上旬、時刻は18時37分。試合開始時刻は19時ちょうどでした
・テロリスト『叢雲』は逃げ遅れたPC・NPC含めて100人前後を施設内に閉じ込め、立て篭っています
・脱出し損ねた人質=参加PCの皆様は、全員が事件に巻き込まれて施設内にいるものとします
・モブNPCの人質もいます
大多数のNPCはピッチに集められています。
菜々緒以外のNPCも施設内に身を潜ませている可能性があります
怪我をしている場合も考えられます
・テロリストの要求は『組織の代表の釈放』です
<叢雲について>
表向きは宗教団体ですが、キナ臭い噂ばかり聞く集団です
5月中頃、叢雲の代表が『テロの首謀者』として逮捕されています
・人質はスタジアム内の観客席経由でピッチ内へ一箇所に集められます
ただし、最初から施設内にて逃亡アクションをかけることは可能です
(危険度は増します)
・携帯電話などの通信機器は、捕まって人質になった瞬間に全て没収されます
ただし、何らかの方法で隠し持つアクションは可能です
(バレた際は『お察し下さい』ませ)
・逃走者は捕まらない限り端末機器の使用・閲覧が可能です
ただし、使用の際にはくれぐれもご注意を
不用意に使用すると、送信者・受信者共々危険に晒されます
・警察は事件発生から10分後に到着し、ただいまスタジアムを完全包囲中
ただし、あくまで人質の安全確保を最優先するため、積極的な行動を取ろうとしません
・施設内の警備員はも人質になっています
・施設内の廊下は物音がよく響きます
また、端から端まで障害物がなく、見通しがいいです
廊下の幅は約8m前後
廊下はスタジアムをぐるっと一周するように繋がっています
・今回、ののこは他の用事で参加していません
アクションに指定された場合、そのアクションごと描写不可になりますのでご了承下さいませ
・故に、テオも動きません
彼の空間隔離の能力をアテに出来ません
テロや殺人事件は残念ながら地球上のあちこちで行われていて、普通のことだからです
シーサイドタウンがまるごと爆破で吹っ飛んで学校生活ができなくなるとか、
神魂の影響による不思議な現象とかでない限り、テオは動かないでしょう
【PL情報(以下の情報はPCの皆様が知らない情報です)】
★テロリスト『叢雲』は総勢50名、5人1組の10班で行動しております
移動する場合、彼らの目を欺く必要があるでしょう
彼らの装備は自動小銃1丁、日本刀ひと振り、副装備にスタンロッド、応急手当キットを持っています
ただし、応急手当キットは敵の班長しか所持してません
外見だけでは、班長が誰であるか判別不能です
★スタジアム内のテロリストたち及び人質モブNPCたちは、全員「ひと」です
故に、ろっこんの威力が弱まったり、最悪、不発となる場合もあります
これを知るためには、彼らに探りを入れる必要があります
しかし、上手く立ち回らないと窮地に立たされるのでご注意を
ろっこんを使うためにはひと工夫必要になります
★施設内の大まかな区画をご説明します
・観客席&ピッチ(スタジアム中央)
・グッズ売り場(北西部)
・イベントブース(北東部)
・フードコート(南部全域)
・関係者ブース&選手控え室(地下エリア)
★観客用ゲートは東西南北に4箇所あります。
北西に業者用の搬入通路がありますが、関係者以外は鍵がないと入れません。
地下エリアへは、東側ゲート横の『関係者専用地下階段』から侵入可能
地下は端末機器の電波の入りが悪く、備え付けの電話機以外では外部との連絡が取れません
地上と地下の連絡は部下のやり取りでまかなっている状態です
※各区画に2班(つまり10名)体制でテロリストは警戒に当たっています
※ガイド冒頭のリーダーは地下エリアにて警察と交渉を行っています
※ガイドの襲撃地点は、東側ゲートとなります
★菜々緒は施設内を逃亡中
(『菜々緒と一緒に逃げている』というアクションは公平性を書くため、今回は不可)
彼女は持参したポーチに入れてあったスマートフォンから、アプリ『ねこったー』で救援メッセージを発信します
(故に、人質の方は確認出来ません)
メッセージ送信後、菜々緒はフードコート内のクレープ屋(スタジアム南西)の厨房の影に隠れてます
何も絡みがない場合、ガイドの出来事から1時間後に発見され、身代金目的で捕まってしまいます
身柄を拘束される前に誰か1人でも彼女と接触できた場合、菜々緒が仲間になって一緒に行動してくれます
戦闘時は合気道で応戦してくれます
脱出しやすくなるかもしれません
★監視カメラは全てテロリストたちの手により破壊されています
★ある条件が出揃うと、菜々緒は七男になります
その場合、難易度は『絶 望』へ跳ね上がります
七男出現ヒントは「人数」と「武器」と「血液」です
【マスターより】
前回より周波数高いガチ狂気なシリアスシナリオをお届け致します。
今回は菜々緒パートです。
七男とは別人格ですので、混同した扱いをすると信用してもらえません。
(前回の『断罪』リアクション内参照)
くれぐれも、目的を違わないようにして下さいませ。
ただし、望むなら七男を呼ぶことも出来ます。
正体もいち早く特定出来るでしょう。
その場合は難易度は最難関レベルまで上昇します。
手に入るモノと支払うべき代償が釣り合うかどうか、よくご自身でお考えくださいませ。
そしてこのシナリオ最大の特徴は、多くのPL情報を端末機器使用の制限がある極限状態で如何にPC情報へ変換できるかという点です。
皆様のお手並み拝見させていただきましょう。
誰を裁き、誰を救うか?
皆様なら、しっかりとした判断ができるかと思います。
また、特殊な状況下のため、いつも通じる意思疎通手段が使えないこともありえることをご了承の上、アクションをお掛け下さいますようご提案いたします。
『君たちは逃げてもいいし、抗ってもいい』
それでは、皆様のアクションをお待ちしております。
芽森菜々緒を救えるのは、あなただけです。