<アステリズム会議>
隠し階層にあるアステリズムたちの工房兼会議場
『クレイドル』。
会議のための広間には、星幽塔を図案化した旗が掲げられていた。
アステリズム会議にのみ使用される石の円卓の周りには、十二の椅子が置かれており、椅子の背凭れにはそれぞれ、黄道十二宮のシンボルが刻み込まれている。
いま十二の椅子のうち、十までが埋まっている。空席は、牡牛座と蠍座だ。
「第八階層の牡牛座のアステリズムは?」
獅子座のレオーネが尋ねれば、
牡羊座のピエロットが眠たそうに答える。
「
牡牛座のエイロスはアステリズムの自覚がないらしいよぉ」
「成程。今回は、アステリズムの自覚があり、星幽塔の完全なる解放を望む者が招集された。――そういうことであるか、
エリオナイト?」
天秤座のリブラスが、この工房の主で、幽霊でもあるエリオナイトに問いかけると、彼女は宙に浮かんだまま「その通りです」と頷く。
それぞれの前には、リアが持参した蜂蜜酒のグラスが置かれている。
この場に、塔の精霊であるステラの姿はなかった。
円卓を順に見遣れば、牡羊座のピエロットの隣は空席(エイロス)で、その隣が、解放されたばかりの
双子座の神威(カムイ)。
蟹座のシドニウム、獅子座のレオーネ、連れの獅子ラサラスを挟んで、
乙女座のアストライアが目立たないようにと目を伏せている。
天秤座のリブラスの隣のさそり座は空席。
その隣に緊張した面持ちの
射手座の乙女フランチェスカ。
山羊座の魔女フローレンスはフードを深く被り無口で、ピエロットは彼女を気にしている様子である。
水瓶座のリアは誰に対しても友好的な様子で蜂蜜酒を勧め、
魚座の少年アヴィケンナは一番年長者のような落ち着きぶりだ。
口火を切ったのはこのアヴィケンナであった。
「今日集まってもらったのは他でもない。いよいよ第十二階層の扉が開いた。その先にある最終の地に火を灯せば、塔にはびこる影は一掃されるだろう。だが――」
アヴィケンナは神威を横目で見る。
チャラい神威は「マジっす。マジヤバいっす」を連呼した。
「影の奴ら、どうも力を増しているみたいな感じっす。
自分らアステリズムの殲滅も連中の目的みたいで、自分けっこうヤバかったッス」
「私たちもより団結して事に当たらなければいけないということですね」
統治者として経験を積みつつあるフランチェスカがしっかりまとめる。
「そうだな」とレオーナも頷いた。
「だが十二階層は……
バーガンディか。なにやら思いやられる……」
<第十二階層>
空には赤黒い暗雲が立ち込めていた。
輝紅の尾を引く岩石が間断なく降り注ぐ。
大地は荒れ果て、微振動を繰り返している。
溶岩を噴き上げるは、天を衝くほど巨大な火山。
あたりには人間大の岩が無秩序に散らばっており、枯れ草ひとつ生えていない。
荒涼とした火と岩の世界。これが第十二階層の現在だった。
服部 剛は、危険な冒険の予感に武者震いする。
「この階層のオーブに火を灯せば、いよいよ塔のてっぺんってわけか。さっそく町を探して話を……」
そのとき、一匹の赤いサソリが一行の前に顔を出した。
きゃあと叫ぶステラを守って剣を構えた剛に、サソリはおもむろに話しかけてきた。
「とうとうここまで来たか、星の勇者たちよ」
「話すサソリやて!? 怪しいやつ! ゴンザレス太郎の仲間か!?」
「待て待て。違うわい。わしはさそり座のアステリズム、
バーガンディぢゃ。ただの善良なジジイじゃよ。今は訳あってサソリの姿になっとるがね。ところで町を探していると聞こえたが」
無駄なことぢゃ、と赤いサソリは残念そうに首を振った。
「なぜならば、ここがその『町』だった場所なのぢゃ」
バーガンディ曰く、かつてここには、豊かな町があったのだという。
第十二階層の人々は階層の中央に聳えるおだやかな休火山・スコルピウス山の坑道からとれる鉱物を扱う仕事に従事しており、十二階層で採れた鉱石は、質の良さから高値で取引されていたそうだ。
ところがある日、天から黒い光が差し、スコルピウス山に棲んでいた善き炎竜クリムゾンを狂える竜に変えてしまった。スコルピウス山は怒れる火山となって噴火を繰り返し、第十二階層は見る間に荒れ果てた。
「なお悪いことに、
狂炎竜クリムゾンは、石化の息で人々を石に変えてしまったのだ。あの豊かだった町が、人が、この有様……。以来わしはクリムゾンやその手下どもに見つからぬようサソリの姿に身をやつし、こうして助けを待っておった次第」
ふたつのハサミを顔の前に寄せて、よよよ、と嘆くサソリ。
不憫になった剛はバーガンディに尋ねてみた。
「天から黒い光って、ゴンザレス太郎の仕業やろ。俺らがオーブに火をつけて、てっぺんに乗り込んでぶっ倒したる。そのためにはまず、この階層や。この世界を救うにはどうしたらいい? 何か知ってたら教えてくれ」
バーガンディはうむと頷き、火山を指した。
「オーブに火を灯すのぢゃ! クリムゾンはスコルピウス山の坑道を巣にしておる。きゃつは宝を蓄える習性があってな……」
「宝だって!?」
瞳を輝かせたのは、キツネ盗賊の
フォルカ・ヴィクスンだ。
「そうとも。オーブもクリムゾンに盗まれ、スコルピウス山の坑道のどこかにあるはずぢゃ。坑道にはゴブリンどもが住み着いているが……なに、クリムゾンにさえ見つからなければ、ゴブリンごとき恐るるに足らず!」
「だったらあんたが自分でやればよかったじゃん?」
「むぅ。わしはさそり座のアステリズム。サソリになるしか能がない、しがないジジイなんぢゃ。お嬢ちゃんのたゆんたゆんおっぱいの間に挟まれるのだけが楽しみで生きとる」
「踏みつぶすよ、このエロサソリ!」
フォルカに突っ込まれ、しょぼくれるバーガンディ。剛はサソリをよしよしとなだめる。
「とにかく
スコルピウス山の坑道に乗り込んで、オーブを探して火を灯せばいいんだな」
「そうぢゃ。オーブに光さえ満ちれば、火山も鎮まり、クリムゾンも正気を取り戻して、人々の石化を解くじゃろう! そうなればこの第十二階層も甦る!」
「おう。剛さんたちに任せとけ! な、みんな?」
剛が呼びかければ、一同、にこやかにサムズアップ。
「さすがぢゃ! 頼んだぞ、星の勇者たち!」
こんにちは。『星のサーカス団』の一員として
最終決戦直前の第十二階層を担当させていただくことになりました、笈地 行(おいち あん)です。
服部 剛さん、ガイドへのご登場ありがとうございます。
もしご参加いただける際は、ガイドにとらわれずご自由にアクションをおかけください。
冒頭、アステリズム会議の様子を描きました。最後の方に一覧も入れましたのでご覧くださいませ。
この階層をクリアすれば、いよいよ塔のてっぺんも見えてくるかも!? 気合を入れてまいりましょう!
状況
オーブを探して火を灯し、荒れ果てた第十二階層を救ってください!
第十二階層の中心には、スコルピウス火山が聳えています。
鉱物資源が豊富なスコルピウス山中には、アリの巣のように縦横無尽に坑道が掘られています。
かつてはこの坑道を掘る人々がたくさんいて、たくさんの鉱物が産出されていたのですが、
現在は、クリムゾンとゴブリンの巣になってしまっています。
最奥が巨大な炎竜・クリムゾンの寝床です。
クリムゾンはピカピカキラキラしたものが好きで、黄金宝石など宝をため込む習性があります。
宝は坑道のどこかにあります。オーブもその宝の中に紛れているかもしれません。
スコルピウス山・坑道
【1】入り口
スコルピウス山の山腹にあります。見張りのゴブリンが2体いる。
【2】漆黒の岩窟
黒っぽい岩肌がのぞく通路。
【3】祭壇の部屋
ゴブリンたちが神を祭っているらしい。
フレイムゴブリンx2とゴブリンロードx1がいる。
【4】ゴブリンの寝床
もとは鉱夫たちの休憩場所だったが、いまはたくさんのゴブリンが居住している。
ゴブリン無数。
【5】蠍鉄鉱の採掘場
地層の中に赤い蠍鉄鉱の層がある採掘場。
蠍鉄鉱は、十二階層でのみ採れる鉱物。
色は赤く、鉄に似ているが、加工すると武器に毒の効果を付加する。
ゴブリンx10がいる。
【6】ヒヒイロカネ採掘場
太陽のように赤く輝く伝説の金属・ヒヒイロカネが採れる。
金より軽く、加工しやすく、合金するとプラチナより硬くなる。熱量を増幅する特性を持つ。
大変希少な鉱物なので、採掘場の入り口は炎の壁で守られている。
フレイムゴブリンx3がいる。
【7】火口
ぐつぐつ煮えたぎるマグマの中に、狂炎竜クリムゾンがいます。
とても強いので気を付けてください。坑道のほかの場所を探索している間、
クリムゾンを火口内に足止めしておくと、オーブ探索が容易になります。
【1】~【7】から1~2個選んでアクションを掛けてください。
坑道に現れるモンスター
●ゴブリン
大きな耳と醜い顔の、黒い子鬼。
人間の子どもほどの大きさで身に着けているのは麻の腰布のみ。人語は解さない。
キィキィという鳴き声を上げ、木の棍棒で襲い掛かってくる。
弱いが、たいがい群れで行動し、数が多い。
●フレイムゴブリン
ゴブリンの亜種で、赤い子鬼。ゴブリンより少し強い。人語は解さない。
炎に強く、溶岩の中でも生きられる。鉄のメイスで襲い掛かってくる。
●ゴブリンロード
ゴブリンの上位種で、ゴブリンより一回り大きい。司祭風の衣服を身にまとっている。
人語を解し、炎の魔法を使う。
ゴブリンやフレイムゴブリンに守られていることが多い。
●狂炎竜クリムゾン
スコルピウス山に生息する巨大な炎の竜。
もともとは善き竜と呼ばれ山の守護者的存在であったが、
現在は、黒い光のせいで狂い、人々を襲うこともある。
人語は解するが、現状会話できる状態ではない。PCたちを見つけると、ブレスで襲います。
喉に3つのブレス袋があり、「炎の息」「石化の息」「石化解除の息」を吐き分ける。
3つのブレスは、獲物を石化して巣に持ち帰り、石化解除して、炎で焼いて食べるため。
つまり肉食系。ただし、ゴブリン肉はまずいので嫌い。
宝を集める習性はもともと。
登場NPC
●バーガンディ・アッシュ
さそり座のアステリズムで、今は手のひら大のサソリの姿。
おしゃべりすることと、しっぽの毒で相手をしびれさせることができる。(大したことはできない)
ジジイ口調で、ちょっとエロい。女の子大好き。
●フォルカ・ヴィクスン
階層を救うことには興味はないが、お宝に興味津々。
ただし、体毛に燃え移ると人間以上に大惨事なので、火口と炎の壁には近づきたがらない。
まずは、祭壇の部屋を調べるつもりのようだ。
●ステラ
第十二階層に付いてきたはいいが、酒場もないし、戦うこともできないので、応援してるだけ。
●ほかの階層のアステリズムたち
アステリズムはいまのところ自分の階層と、隠し階層以外に移動できないので、第十二階層には登場しません。
<現時点で判明しているアステリズム一覧>
牡羊座 ピエロット・アリス(19歳・男性・第9階層・交易船『アルゴー』の船長)
牡牛座 エイロス・レヴィ(24歳・男性・第8階層・ダソス城の騎士団団長)(自覚なし・欠席)
双子座 ジェリコ・神威(30歳・男性・第11階層・チャラ男)
蟹座 シドニウム・カトル(28歳・男性・第4階層・医師)
獅子座 レオーネ・ナジュム(27歳・女性・第7階層・階層の統治者)
乙女座 アストライア・スピリット(17歳・男性・第10階層・図書館管理人)
天秤座 ナイト・オブ・リブラス(?歳・性別不明・第5階層・騎士)
蠍座 バーガンディ・アッシュ(第12階層で登場・今はサソリの姿)(欠席)
射手座 フランチェスカ・ダ・サジタリオ(16歳・女性・第1階層・階層の統治者)
山羊座 フローレンス・アイメルト(23歳・女性・第6階層・魔女)
水瓶座 リア・トト(42歳・男性・第3階層・農夫)
魚座 アヴィケンナ・マラータ(10歳・男性・第2階層・メカ好き少年)
へびつかい座 エリオナイト・ジュノー(未亡人の幽霊・女性・隠し階層・工房『クレイドル』の主人)
星の力
星幽塔にいると、星の力 と呼ばれる光が宿ります。
★ 基本的な説明は、こちらの 星の力とは をご確認ください。
星の力やその形状は、変化したりしなかったりいろいろなケースがあるようですが、
このシナリオの中では変化しませんので、このシナリオではひとつだけ選んでください。
ひとともれいびにはひとつだけですが、
ほしびとには、第二の星の力(虹)もあります。
★ 虹についての説明は、こちらの 第二の星の力 をご確認ください。
アクションでは、どの星の光をまとい、その光がどのような形になったかを
キャラクターの行動欄の冒頭に【○○の光/宿っている場所や武器の形状】のように書いてください。
衣装などにこだわりがあれば、それもあわせてご記入ください。
衣装とアイテムの持ち込みについて
塔に召喚されると、衣装もファンタジー風に変わります(まれに変わってないこともあります)
もちものは、そのPCが持っていて自然なものであれば、ある程度持ちこめます。
※【星幽塔】シナリオのアクション投稿時、作物・装備品アイテムを所持し、
【アイテム名】、【URL】を記載することで、
シナリオの中で作物(及びその加工品、料理など)・装備品を使用することができます。
※URLをお忘れなく!!!
それでは、皆さまのご参加をお待ちしております!