「…………ない」
寝子高の音楽教師
津止 孝道は、ろっこんに目覚めた。
その能力は、
異世界への出入口を見ることができるというもので、悪いらっかみカラスの
クローネにその能力を利用されそうになったこともある。
津止は能力に気がついてからというもの、寝子島を歩き回っている。
クローネが探そうとしていた重要な異世界への出入口が、どこかにあるはず。
それを先に見つけて必要な対処をしてしまえば、奴の悪しき狙いを止められるはずだが……
「……ない………ない…………ない」
春休みの今日、たまたま会って意気投合した何人かのもれいびも同行して九夜山の中をさんざん歩いたが、そうそう見つかるものでもない。
やがて日が暮れて、シーサイドタウンの町中に戻ってきた彼らは、小さな公園で一休みすることにした。
にゃあ~にゃあ~にゃあ~。
公園には、猫が集まって輪になっていた。
ここは猫がいっぱいの寝子島。猫の集会は特に珍しくもない光景だ。
輪の中心を見るでもなく見ている猫たちは静寂を守っている。では、どこから鳴き声が?
「……………………ある」
猫の輪の中心には、異世界への出入口。
佇む猫たちの間を縫って、津止がふらふらと吸い込まれるように歩いていく。
わんわんわん。
異世界から聞こえる鳴き声は、猫だけではない。
どんどん増えていく。
めえめえ~。
ぶひぶひっ。
ひひーんひひーん。
がおーがおー。
ぱおーんぱおーん。
もお~っ。
津止が出入口を険しい顔でのぞきこんだそのとき、目の前の猫がクルッと振り向いた。
『やれやれ、もれいびの好奇心にはつくづく困ったものだな』
らっかみのののこに仕える、灰色のらっかみ猫
テオだ。
テオによると、どうやら異世界には既にクローネがいて、ののこも囚われているらしい。
『お前ら、ついてくるなよ。魂(たま)を食われたらオシマイだからな……』
その世界では、もれいびたちに宿った
ののこの神魂を失ってしまうかもしれないという。
そう、そこは、神でさえ魂を喰われるかもしれない危険な世界なのだ。
「待て。神でも喰われる、と言ったよな。
つまりだ。今、その世界なら、クローネを倒すこともできるということか?」
津止に同行していた
御剣 刀が、テオに問い詰める。
たしかに、万に一つだが
クローネの神魂を封印するチャンスもあるという。
その情報を得たならば、選択肢はひとつに絞られてしまう者もいるだろう。
フツウを死守するのは、ののこのためだけではない。
自分たちのために、これからの未来のために、テオひとりを行かせるわけにはいかない。
「さあ、フツウを守りに行こうか」
空気の中にぽっかり生まれた、四次元の空間へとつながる出入口。
そこへ足を踏み入れると、吸い込まれていく。
異世界の吸引力は非常に強く、やがて関係のない者までも、誰も彼もが吸い込まれてしまった。
目を開ければ、そこに広がるは大草原。
ぽかぽか陽気の中、牛がモオモオ~と鳴いていて、ずいぶんとのどかな光景だ。
これのどこが危険なのだろう? そう思っていると――
アホー
アホー
アホー
遠くから聞こえるカラスの鳴き声。
そして、どどーん!
目の前に現れたのは、ポップな色合いの巨大な看板。
かわいい文字で、
『ミルたまランド』。
そして、その上には一羽のカラスの姿が描かれ、吹き出しで歓迎の言葉が書かれていた。
『いらっしゃ~い。待ってたわよ~♪』
ごきげんよう。MSの水月 鏡花です。
そんな感じで、らっかみ!のファーストシーズン最終決戦となるシナリオを担当させて頂くことになりました。
私としては初のホワイトシナリオということもあり、とてもとても緊張しております。
皆さんの想いの詰まったアクションを最高のかたちでリアクションに昇華できるよう全力を尽くす所存です。
どうぞよろしくお願い致します。
あらまし
ようこそ、神魂や魂を食べられてしまう世界『ミルたまランド』へ。
自らの意思で来た人もいれば、たまたま吸い込まれてしまった人もいます。
このシナリオガイドに書かれている情報を知っている人もいれば、知らない人もいます。
ひと、ろっこんに気づいていないもれいび、ほしびとは、この状況を夢か何かだと思うかもしれません。
みなさんのこのシナリオの目的や目標はこの3つのどれかになると思います。
1.まずは、神魂や魂を食べられないように気をつけること。生き残ること。
2.次に、クローネの狙いを阻止。神魂を食べられる仕組みへの抵抗。その他自分のやるべきこと。
3.あるいは、なにも気にしないで、のんびり楽しむこと。
フツウを守るために戦ったり、のんびり気楽にこの世界を堪能したり、ご自由にお過ごしください。
この世界について
▼舞台は『ミルたまランド』
神魂を食べることのできる不思議な牝牛『魂喰らい(たまくらい)のミル』が支配する世界。
大草原が広がっていて、森や海もある自然がいっぱい。
既に魂を喰われてしまったどうぶつたちが、のんびりぽかーんと過ごしている。
▼魂喰らいのミル
気球のように大きく、上空にぷかぷかと浮かんでいるビッグマザー・ミルと、
いろいろな姿形をした無数のミルがいる。カラス・ミルやネコ・ミルなど。
ビッグマザー・ミルは透明で、骨も内臓もなく風船でできているかのようなボディ。
この世界にいる者の神魂や魂をじわじわと食べて、体の中に白いお乳のように溜まっていく。
ミルは、もれいびにパクッとくっついて、あっという間に神魂を食べる。(他の食べ方もあるらしい)
食べるとビッグマザー・ミルに転送される仕組みのようだ。
ビッグマザー・ミルの頭には、黒い羽が1本刺さっている。クローネに操られている?
▼神魂ミルク
ビッグマザー・ミルの体が神魂で満たされると、神魂エネルギーの充填は完了。(今は3割程度)
その乳を搾った神魂ミルクをクローネが飲めば、強大な力を得ることができる。
みんなの姿とアクションのご注意
▼みんなの姿
みんなの姿は、どうぶつになっている。
一部だけがどうぶつのこともあれば、全身どうぶつになってることもある。
この世界にいると、神魂だけでなく、ひとやほしびとも魂を吸われていく。
すっかり吸われると、心も言葉も体も行動もすべて本当のどうぶつになって、過去の自分を見失う。
▼アクション
どんなどうぶつで、どんな姿なのか、お好みで設定OK。
日本の動物園によくいる、誰でも知ってるような動物であればOK。鳥、魚、虫もOK。
ただし、姿についてはリアクションにくわしく描かれないこともあります。
持ち物は、そのキャラクターが普段から持っていてもおかしくないものであればOK。
(ただし、武器や危険物など強力なものは認められないことが多くなります)
ろっこんは、その姿で発動条件を満たすことができれば、フツウに発動する。星の虹の力も同様に。
既に神魂を吸われたことにして、ぶひぶひ言いながらごはんを食べるだけでもOK。
喰う寝る遊ぶしながら救出を信じて待とう。
各エリアとアクションでできること
どのエリアにいるか(何をするか)1つ選んで「キャラクターの行動」の冒頭に記入してください。
アクションでできることは1つですが、ミルを倒したり捕まえたりした場合は、
他のキャラやエリアと連携できることもあります。
【1】ミルミルカラス山
この世界の中心にそびえ立つ岩山で、超攻撃的な黒豹ミルがたくさん徘徊している。
上空には、やはり攻撃的なカラス・ミルが無数に飛んでいる。
さらに上空には、ビッグマザー・ミルがぷかぷか浮かんでいるが、容易には近づけない。
登場NPC:海原 茂
鳥の翼が生えた獣人。部屋で読書してたら、こんなところに。襲い来るカラス・ミルに抵抗。
ルーク・ポーラスター
ライオンの獣人。大きな敵に挑むべしという冒険者の心得に従って、ビッグマザー・ミルに挑む。
【2】ミール大草原
大草原、森、池、川……自然がいっぱいでのどかなエリアで、たくさんのどうぶつが暮らしている。
ここにいるとお腹がすいてしまうので、狩りなどをがんばって生きていこう。
隠れミルがいっぱいいて、突然ぱくっと神魂を食べられてしまうので注意。
猛牛ミル軍団がどどどっと押し寄せてくると神魂を食べられてしまう可能性が高い。
登場NPC:野々 ののこ
狼の耳とシッポが出始めている。牛のミルの背中に乗って楽しそうだが……。
七夜 あおい
ほとんどクマ。川で鮭を食べようとしている。
【3】ねこねこ迷宮庭園
常緑高木の生け垣でつくられた広大な迷宮。
ところどころに四次元落とし穴があり、落ちるとどこの世界にいってしまうかわからない。
無数のネコ・ミルがいて、とってもかわいい。見るとついつい撫でたくなる。
ネコ・ミルは気分が変わりやすいので、神魂を食べられないように気をつけて。
登場NPC:テオ
意気込んでいた割にあっさり神魂を喰われて(おい!)、のんびりひなたぼっこ。もふもふし放題。
津止 孝道先生
落とし穴を見つけてはのぞきこんでいる。手には拾ったというクローネの羽。
【4】ミルミルばーべきゅーランド
おいしいごはんを食べて、飲みたいものを飲んで、みんなで楽しめるエリア。
どうぶつ楽団の愉快な演奏を聴いて、踊って、気分はサイコー!
ミルはいないけど、気づけば神魂をじわじわ吸われていて動物になってしまう。ドンマイ♪
神魂とかクローネとか知らないよ~って人、せっかくだからのんびり楽しみたいという人はこちらへどうぞ。
登場NPC:サンマさん
他の動物の要素が見え隠れしてきた。どんな動物だろう?(面白いのを採用)
野菜原 ユウ
ほとんど豚。音楽を聞いてノリノリ。にししっ。ぶひぶひっ。
【5】ミルミル杯レース
この世界のあちこち(1~4までの近く)を駆け抜ける、魂を賭けた長距離レース。
どうぶつはそのままの姿で、獣人は馬などに乗って。
「もれいびチーム」と「ミルチーム」による対決で、15位までに多く入ったチームの勝ち。
もれいびチームが負ければ、その瞬間、参加者すべての神魂が喰われる。
もれいびチームが勝てば、希望する「喰われた神魂」を取り戻すことができる。
(例:○○で神魂を喰われて豚になった友だちを元の姿に戻したい!)
ミルチームからは、サラブレッドミルや暴れ馬ミルが出場する。
レースにルールらしいルールはなく、相手の妨害も乱闘もなんでもあり。
登場NPC:島岡 雪乃先生
パンダの獣人姿で、にこにこ。馬に乗るやいなや、目つきが豹変。やる気まんまん。
串田 美弥子
ほとんど馬。誰かを乗せて出発!(希望者はコメントページに書き込みを。先着1名様、乗れます)
【S】対クローネ(上級コース?)
この世界のどこかに隠れて、ビッグマザー・ミルが満タンになるのを待っています。
満タンになったら乳しぼりをし、神魂ミルクを飲んで、ののこの神魂パワーを手に入れるつもりです。
現時点ではどこにいるのかわかりません。何をできるかもわかりません。やれるだけやってみてください。
登場NPC:クローネ
「ミルちゃんと固い絆で結ばれてるから、あたしの神魂は吸われないのよ~」
皆さんの魂のこもったアクションをお待ちしています。