廃墟と化した遊園地のベンチに、謎の青年――
野菜原 ユウは鼻歌交じりに腰掛けていた。
足をぶらぶらとさせていたところに、おずおずとして誰かが歩み寄ってくる。
「おおっ、よーこそよーこそ! 待ってたぜぃ、南波 太陽」
軽快に笑うユウへと、太陽は緊張に掠れる声を投げた。
「……オレの記憶、取り戻せる、って……」
これまでの戦いを経て、太陽は記憶や人格の多くを失っている。
今でこそこうして人間らしい振る舞いができるが、失われたままの過去は未だ多い。
故に――見知らぬ青年の怪しげな誘いにさえ、縋らずにはいられなかったのだろう。
ユウは、そっと口の端を上げた。
「そうそう、俺に任せとけって! だからほら、もっと近くに――」
言われるがままに歩を進める太陽。
その胸元に、ユウは《何か》を押し当てた。
それが、見る間に太陽の胸へと吸い込まれていく――。
「あ……」
太陽の瞳から感情の色が失われていくのを、ユウは懐っこいような笑顔のままで眺める。
「騙しちゃってごめんな。あんた、《器》にちょうど良かったからさ」
「全ては争いのない世界の為に……ってね。にししっ♪」
◇
状況は酷く厄介だ、ということを
七緒 璃音は政府上層部の指令から察した。
「《魔女の遺産》、ねぇ……」
反政府組織の一員だった
五十嵐 尚輝によって行われた極秘実験。
その結果として生まれたのが、洗脳の力を持つ《魔女の遺産》だという。
幸い、その力は今はまだ不完全のようだが、事態は一刻を争う。
「――で、ウチらの出番ってわけだ」
政府の情報網によって、じきに、向かうべき場所も特定されるだろう。
お世話になっております、巴めろと申します。
このページを開いてくださってありがとうございます!
長らくお待たせしてしまいましたが、ヒーローズ! の物語、完結話です。
完結話とは言いながら、今作からのご参加も勿論大歓迎でございます。
今作から参戦のPC様にも、がっつりご活躍いただくことが可能な内容です。
ガイドには、七緒 璃音さんにご登場いただきました。ありがとうございました!
なお、もしこのシナリオにご参加いただける場合ですが、
ガイドでの描写は一例ですのでご自由にアクションをかけてくださいませ。
以下、本シナリオの詳細な説明になります。
このシナリオの世界観
舞台は、ちょっぴりSF風なバトルもの少年漫画っぽいパラレルワールドです。
後にハイパー・ロッコーン大戦と呼ばれるようになった事件を契機に、
異能力者たるモレイビー達は、異能の力を持たない人々から『危険な異端者』として追われる身となりました。
その後 反モレイビー組織『ノアの箱舟』の壊滅を経て 束の間の平和な日々が訪れていましたが、
ある発明を契機に、世界を揺るがす陰謀が動き出してしまい……。
☆用語集☆
○『ヒーローズ・プロジェクト』
長く続く現政府により設立された、非政府派異能力者対策組織。
後述のモレイビーを中心に多くのエージェントを擁しています。
○『アーク』
国をより良くする為、打倒現政府を掲げて『ヒーローズ・プロジェクト』と敵対する大規模な反政府組織。
理想の実現の為には手段を選ばないことから、民間人からは『悪の組織』と見られることが多いです。
○モレイビー
生まれながらにして特殊能力・ロッコーンを備え持った特別な人間。
正義の為、家族の為、金の為、理想の為、己の居場所を守る為、
或いは幼い頃から戦う為だけに育てられたり純粋に戦闘狂だったり。
戦う理由は様々ながら、その多くは政府側・反政府側いずれかのエージェントです。
また、現実世界のもれいびとは一切関係はございませんので、
現実世界ではもれいびだけどこの世界では敢えて非能力者だったり、
現実世界とは全く異なる特殊能力を有していたり、
現実世界では普通の人間ながらこの世界ではモレイビーだったりと、
お好きな設定をPC様に付与してお楽しみいただけますと幸いでございます。
○ロッコーン
モレイビーが1人につき1つだけ備え持つ特殊能力。
現実世界のろっこんとは一切関係はございませんが、
能力に関するルール等は基本的にろっこんを参考にマスターが判断いたします。
このシナリオで認められたロッコーンが通常のろっこん審査でも認められるとは限りません。
ロッコーンには、戦闘特化型のものも存在する他、
民間人の前でも問題なく能力を発動することができます。
なお、あまりにチートと判断される能力は設定できず、調整の対象となります。
○ハイパー・ロッコーン
特殊なラムネ菓子を食べることで、一時的にロッコーンを進化させる超技術。
政府が開発しましたが、『アーク』や民間にも流通しています。
ロッコーンを可視化・具現化させ、交流したり戦わせたりする、
ロッコーンと一体化し、魔法少女やヒーロー、天使や悪魔等の姿に変身する……等々、
能力がどのように進化するかは基本的に自由となっております。
但し、あまりにもチートと判断される能力は調整の対象です。
○《魔女の遺産》
すでに壊滅している反モレイビー組織『ノアの箱舟』の指導者だった島岡雪乃。
彼女が生前保持していた、人々を洗脳する『魔力』を研究した末に生まれたのが、
結晶状に加工された『魔力』である《魔女の遺産》です。
人間を《器》にし、特別な装置を稼働させることで、洗脳の能力を発揮します。
またその場合、能力の操り手は、《器》に《魔女の遺産》を融合させた者となります。
本シナリオにおけるPC様の設定について
下記から属する勢力をどれかひとつを選んで、
必ず「キャラクターの行動」欄の冒頭に【A】【B】【C】と記入してください。
【A】『ヒーローズ・プロジェクト』所属
【B】『アーク』所属
【C】その他
また、所属勢力を選んだ上で、この世界でのPC様の設定は基本的にご自由にどうぞ。但し、
・『決して負けることのない最強無敵の』エージェント
のような、他の参加者様の設定を間接的に決定づけてしまう設定等はご遠慮ください。
問題があると判断した設定は、調整の対象となります。
自分以外のPC様が中心となっている組織への所属も、該当PC様の許可が必要となりますのでご注意くださいませ。
なお、設定は可能な限り詳細にアクションにご記入いただくことをお勧めいたします。
性格や口調等も、現実世界とは全く別のものに設定していただくことが可能ですが、
こちらご希望の場合はその内容を必ずアクション内にご記入くださいませ。
なお、前回ご参加いただいた方も、全く別の役柄を演じていただくこともOKです。
また前回のあとがきにてお伝えしたように、前回の個別コメントにて何らかの手札を獲得された上で、
このガイドの公開までに、コメントページ にて手札を公開されたPC様は、今回、その手札をご利用いただけます。
どのようにご活用いただくかは、自由に設定することが可能です。
但し、あまりにもチートな場合等に調整が入ることはございます。
このシナリオでできること
市街地の三箇所で同時に起こる事件を収め、ユウの野望を阻止するのが本シナリオの一応の目的です。
3つ全ての事件を解決すれば、《魔女の遺産》は完全に力を失います。
こちらも下記からPC様がどこへ向かうかをひとつを選んで、
必ず「キャラクターの行動」欄の冒頭に【1】【2】【3】【4】と記入してください。(例:【A-1】)
【1】ビルの屋上
市街地の中央付近に位置するとあるビルの屋上。広いです。
ここでは《魔女の遺産》の《器》である太陽が、洗脳された高野に守られています。
太陽と不完全ながら融合している《魔女の遺産》を取り除けば、ここでのミッションはクリアです。
太陽との接触は、ロッコーンを用いて戦う高野によって阻まれます。
【2】謎の倉庫
市街地に位置する、何に使われているのか不明の倉庫。
ここでは五十嵐が、洗脳された一般人を引き連れてPC様方を迎え撃ちます。
五十嵐が手にしている《魔女の遺産》を稼働させる装置を破壊すれば、ここでのミッションはクリアです。
多数の一般人を剣や盾とし、五十嵐は後方からハイパー・ロッコーンを駆使して戦います。
【3】廃墟の遊園地
情勢の悪化と共に、廃園となった遊園地。
ここでは《魔女の遺産》の操り手であるユウが、PC様方を待ち受けています。
ユウを倒す、或いは(難易度は跳ね上がりますが)説得することができればここでのミッションはクリアです。
戦闘の際は、ユウはハイパー・ロッコーンを用いてトリッキーに戦います。
また、ナイフ類も複数隠し持っているようです。
【4】その他
1~3のどこにも向かわない、という選択も可能となっております。
どう動くも自由ですが、活躍が難しい高難易度ルートとなるかと存じます。
ですが、勿論チャレンジは歓迎です!
登場NPCについて
○野菜原 ユウ
どの組織にも所属しない謎の青年。
争いのない世界を作り出すという強い盲信の下、暗躍の最中です。
ロッコーンは『ウインクをすることで物質の重力を操作することができる』。
ハイパー・ロッコーンは『能力の対象に生物が加わり、一度に複数の対象の重力を操作できるようになる』。
○南波 太陽
『ヒーローズ・プロジェクト』所属のモレイビーで、元・やり手のエージェント。
記憶や人格の多くを失っていることに目をつけられ、《魔女の遺産》の《器》となりました。
ユウによって、胸元に《魔女の遺産》を埋め込まれています。
ロッコーンは『移動したい先を視認し手を叩くことで瞬間移動ができる』。
○高野 有紀
『アーク』所属のモレイビーでベテランのエージェント。
今は《魔女の遺産》に操られ、ユウの命に従っています。
ロッコーンは『己の手の甲にキスすることで身体能力を一時的に向上させる』。
○五十嵐 尚輝
元・『アーク』所属のモレイビー。
実験により《魔女の遺産》を完成させ、自身の利益の為にユウに力を貸しています。
ロッコーンは『危機を察知した時に小鳥型の爆弾を召喚できる』。
ハイパー・ロッコーンは『爆弾を自身の意思で、一度に大量に召喚し操ることができるようになる』。
○泉 竜次 博士
『ヒーローズ・プロジェクト』所属のモレイビー。
ハイパー・ロッコーン技術を完成させた天才技術者兼一流のエージェントです。
ロッコーンは『掌を広げ念じることで掌を中心に攻撃を跳ね返すバリアを張る』。
皆様のアクション次第で、ここに名前があっても登場しないNPCが出てくることもございます。
また、このシナリオでは登場NPCと関係を結ぶこともできます。
生き別れの兄弟・戦友でライバル・恋人同士等々基本的に設定は自由ですが、
・『唯一無二の』親友
・『一番』弟子
等、他の方の設定に影響を及ぼしてしまう設定は採用いたしかねます。
なお、特定のNPCに恋人が二人、のような状況も起こり得ますので、
その点ご了承の上でNPCとの関係は設定してくださいませ。
また、このシナリオでの関係は現実世界での関係とは一切関わりがございません。
パラレルな世界の行く末は、皆様の行動次第となっております。
ご縁がありましたら、よろしくお願いいたします!