広々とした室内の片隅から音が聞こえる。調子は忙しなく、硬い物を刻むような音が静かに満ちていく。
椅子の背もたれが軽く鳴った。
八神 修は参考書から目を離した。持っていたシャープペンシルは机上に転がす。
「疲れた」
一言、漏らす。やや顔を上げた姿で目頭を揉んだ。程なくして両腕をだらりと下げる。空白の時間を過ごし、ふらりと立ち上がった。
薄暗い中を歩いた。窓辺に近づき、カーテンの隙間から外を窺う。艶やかな黒。烏の濡れ羽色の世界がどこまでも広がっていた。
修は黒と真摯な態度で向き合う。目は遠くを見詰めて、ぽつりと口にした。
「……いろいろあったな」
体験したことを思い出す。表情は柔らかくなり、時に引き締めた。溢れ出す記憶が様々な感情を呼び起こした。
間もなく目に揺るぎない意志が込められた。窓辺から離れ、部屋の明かりを消した。
修は着ていたカーディガンを脱ぐと速やかにベッドで横になる。
急速に訪れる眠気に身を任せた。緩やかに瞼を閉じていく。
――明日は休日だ。久しぶりに、あの、思い出の、場所へ……。
意識は深い眠りの中に溶け込んでいった。
思い出を辿る一日が始まろうとしていた。
八神 修さんの登場となりました。ありがとうございます。
本シナリオに参加される場合はガイドに縛られることなく、自由にアクションを書いてください。
さて、今回のシナリオは休日を利用して過去を振り返る、というものになります。
実際に参加したシナリオの内容を膨らませるのではなくて、
秘められた過去を明かすシナリオになります。
例えばですが、寝子島の天宵川を見て溺れた弟のことを思い出したり、
休日を利用して実家のある国に帰った時、出会った活発な少女に自分の過去を重ね合せたり、
いろいろな場所で秘められた過去を明かしてください。
☆舞台☆
1:本土を含んだ寝子島の全域。
2:国外の全域。
※電脳世界や異世界は除く。
簡単ではありますが、説明は以上になります。
秘められた思い出があなたに彩りを添えますように(皆々様のご参加、お待ちしております)。