ここは図書室だ。
北校舎(特別教室棟・3階建て)の3階に位置するため見晴らしもいい。
生徒数に見合って図書室も広く本も豊富なようだな…。長机で勉強するのもいいだろう。
図書室では静かにな。
いや、別にそんなこと思ってないが…
それより、君が目標を持っていることに
俺は嬉しいと思ったが…
…今…お前が、カウンセラーに、なる前に…
…お前に、カウンセラーが、必要、だろうって…
…思ったでしょ…?
なんとかしよう、という努力をしているのなら問題ないさ
いつかその加減も理解できるようになる
…カウンセラーか、素晴らしい夢だな
なにか、目標を持つことは素晴らしいことだ
是非ともがんばってくれ
…そう…。
…頼り過ぎは、良くない…。
…私はその加減が…上手く、ないの…。
…頑張り過ぎたり…頼り、過ぎたり…。
…時間があったら…是非…。
…将来のこと…今まで、あまり…
…考えたことがなかった、けれど…
…心理学の本を、読み始めてから…
…カウンセラーの資格、とってみたいなって…
…思うように、なったの…。
そうか…ならよかった
…頼りすぎはいけないことだが…俺でよかったらなんでも相談してくれ
できる限り手を貸そう
心理学か…なるほど、そういう風にも心理学は役に立つのか
俺も時間が合ったら習ってみるかな…
…変じゃない…
…貴方は、変なことなんて、少しも言っていない…。
…嬉しい…ありがとう…
…最近…心理学の本を…沢山、読んでいるの…
…自分の心を、理解して…愛せるようになる為の…
…ヒントを本から、学ぶの…。
…自分を理解したい…。
…許し…受け入れたい…。
…そうできるように、なれれば…
…私はもっと…成長できる…。
…今よりもっと…強くなれるの…。
ふむ…なら
崩れないように、俺が先輩のことを支える努力をしよう
今、先輩に向けて俺ができるのはこれぐらいだからな
自分を愛するようになるまでの道のりは険しいだろう
だが、それを手伝うことは俺はできない、それは自分でなんとかしなければいけないからだ
…だから、俺はそうなれるように全力で応援する、挫折しようになったら全力で助ける
…変なことばかり言ってるな、俺…すまない
…私も…笑顔を見る方が…好き…。
…でも…場合によっては…
…本当の幸せを、手にいれる為には…
…悩まなくては、いけない…と、思う…。
…私も、そう思う…。
…だから私は…自分を愛せるように、ならなくてはいけない…。
…昔よりは…愛せるように、なった…
…でも、まだ…
…なるほど…それも一理あるな
まぁ、俺としては人が悩む姿よりも笑う姿のほうが見たいからそういっただけだ
…悩む人間は、つついただけで崩れることがあるからな
…自分を愛することができなくなった、か
…前言撤回させてもらう…
自分を愛せない人に、他人を愛することは俺にはできないと思うぞ
…同時に…それはとても哀しいことだと、思うよ…
…深く悩まず、生きる事は、気楽…
…いい生き方…だけれど同時に、逃げでもある…と思う…。
…孤独の原因は…きっと…
…私が私を、愛していないから…
…それと…一番愛しい人が…
…離れて行ってしまったから…かな…
先輩は深い事を考えるんだな…
…本当の答え…か…
そうやって求めることは悪いことじゃないさ
好かれ、好こうとすることは全然悪いことじゃない
人は、孤独のままでいられないからな
…まぁ求めているということは、先輩は心のどこかでまだ孤独を感じているということなんだろう
…悩みすぎるなとも…よく言われる…。
…私の、欠点…。
…でも…悩み…苦しみ…迷った果てに…
…本当の、答えがある…。
…私には…そうも、思える…。
…私は、充分幸福…。
…家族にも、友人にも、恵まれている…。
…愛され、好かれている…。
…とても…とても幸福…。
…これ以上を、求めることは…
…きっと…罪になる…
…罪になると、わかっていても…
…求めてしまって、いるけれど…。
(さみし気に微笑んで
呪い…か
…それのなにがいけないんだろうな
いや、初対面の俺に悩みを打ち明けてくれたといことは
俺をある程度信頼してくれたということだ
気にするな
忘れてほしいと言うのなら忘れよう
だが、あまり悩むな、悩み過ぎると自身を追い詰め、自身を見ることができなくなるからな
…世の中、先輩のような人ばかりだといいものだがな
まぁ、俺としては先輩が傷つくよりは俺が傷ついた方がいいと考える
…幸福である権利は、先輩にもあるものさ
…。
(目を伏せ
…私の持つ愛は…純粋では、ない…
…重苦しく…不純物に塗れて…
…愛というより、呪いの様で…
…。
(緩々と首を振り、微笑み
…変な話をして、ごめんなさい…
…忘れてくれると、嬉しい…
…できる事なら……物語の中の…幻想世界の様な…
…誰も傷つかない世界で、あって欲しい…
…私が傷つくのは、構わない…
…でも…他の人たちは…幸福で、あって欲しい…
…純粋な愛か…
…それはすでに、持っているんじゃないのか?
…正気なまま純粋な愛
どちらもとても難しいものだな、愛を持つのを自覚するというのはもうクリアしているようだが
その愛を純粋なものにかえるというのはすでにクリアしているんじゃないか?
俺は…あなたの悩む姿がまさに純粋な愛を持っているものだと確信しているよ
なにより今の先輩の目…くもっていない、純粋な目をしているじゃないか
…我儘…それなら俺も我儘…だな
俺もその考え方には激しく同意するよ
…。
…純粋な愛情を持つには、どうすれはいいかを…
…ずっと…ずっと…考えているの…。
…見返りなく尽くす事が…純粋な愛、だとして…
…尽くす事で…尽くしたい、という欲を満たせば…
…それは、見返りを…受け取ったことになる…。
…それなら…それは、純粋では、ない…。
…正気を保ったまま…純粋には、なれないのか、を…。
…不思議って…よく言われる…。
…私は、優しいんじゃなくて、我儘なだけ…。
…誰かが、痛む姿を見るのは…好きじゃない…それだけ…
(さみし気に微笑んで
ん、それは違うぞ
欲というのは結局全ての行動に結び付く
行動することはそれは欲があるからだ
欲がないと人は動けない、でも欲は行動するからこそ生まれる
愛もその人の形だ
それに…欲は、どんな形にもなれるもの
だから、純粋な愛というのは、誰にでも存在するものだ
それに俺はただ行動を欲に結びつけているだけだからな…人によっては、その形が違う風に見えるものさ
欲とは言ってるが、結局、思い方をそういう風に表しているだけ
言い方も考え方も人それぞれ、だから俺の中にも愛がある可能性もある
俺は優しさをこういう風に捉えてしまうだけだ
……
…なんというか…先輩は不思議な人だな…
…あなたのような人を、優しい人、と言えるんだろうな
…。
…純粋な愛は…存在しない…か…。
(目を伏せ呟き
…そう…。
…大切なもの…無くしてしまうと、辛い…
…世界は、それだけじゃないと、わかっていても…
…貴方の苦しみが…少しでも、和らぎます様に…
(両手を組みそっと祈る
別に優しいわけじゃないさ
ただ、俺は自分の欲望に忠実なだけ…
人の助けになりたいっていう欲に、な
…当たり前の日常を失った…それだけさ
(顔を窓に向ける
…ありがとう…。
…優しいんだね…。
…。
…昔に何か…あったり、した…?
…なんだか…そんな雰囲気…。