ダンシングで人類愛な祭りの準備｜リアクション

ダンシングで人類愛な祭りの準備

【ダンシングで人類愛な祭りの気配〔御剣刀の場合〕】

　御剣刀は部活帰りに祭りの準備が始まった気配に気づいた。

「ああ……。みんなもう準備を始めいるんだな」

　あちこちから聞こえてくる生徒達の会話の端々から祭が近づいている雰囲気をひしと感じる。

（せっかくだし、うちのクラスでもみんなで協力して何か出し物をやりたいな。飲食店とかウケそうだし、喫茶店とかどうだろう？）

　道すがら刀はそんな思いを巡らせる。

（材料はシーサイドタウンに行けばどうとでもなりそうだ。それに人手。給仕に調理、それに買い出しとかのために緊急用の人手なんかもあると安心だ。あとは――）

「……インパクト？」

　刀がそう呟いたのと、たまたま通りがかった『職員室』のプレートが彼の目に留まったのはほぼ同時のことだった。

「あの、島岡先生はいらっしゃいますか？」
　刀はほとんど思いつきのままに職員室に飛び込んでいた。
「あら、御剣くん。島岡先生なら今ちょっと席を外しているんだけど」
　久保田美和教諭の言葉に刀は「そうですか……」と少し肩を落とす。
「何か伝言があるなら伝えておくけど？」
「ああ、それじゃあお願いします。じつはクラスの出し物を島岡先生にも手伝って欲しいと思っていて」
「あら、島岡先生まで巻き込むのね。ふふ、いったいどんな出し物なのかしら？」
　刀の言葉に、美和はいたずらっぽく笑って言った。巻き込む――というのは随分な言われようだったが、この場合は間違ってはいないだろうと刀は思う。
「わかったわ。ちゃんと伝えておきます。約束はできないけれど、たぶん島岡先生なら快くＯＫしてくださるんじゃないかしら」
「はい、よろしくお願いします」
　一礼し、刀は職員室から廊下へ出て、扉を後ろ手に閉めた。
　そして、

（ごめんなさい、先生）

　と、心の中で島岡先生に謝罪の言葉を述べた。
　というのも、

（いや、うちのクラスには元気すぎるというか面白過ぎる奴もいるから、さ。何かひどい事になりそうで。……いや、多分俺がやる）

　自覚はある刀だった。
　だが、それも含めて祭りだと彼は思う。

（……まあ、でも結果的にみんなが楽しめればきっと許してくれるよね）

　自分の中でそう結論づけて、刀は意気揚々と学校を後にするのだった。