【終業式】始めようと思ったときが始まり｜リアクション

【終業式】始めようと思ったときが始まり

【生徒会主催クリスマスパーティー〔準備編〕（１）】

　その頃。
　寝子高講堂では着々と生徒会主催クリスマスパーティの準備が続けられていた。
「はーい、みなさん。立食パーティー用のテーブルはキチッと揃えて並べましょうねー。ツリーのオーナメントもガンガンつけちゃってくださーい」
　講堂の中心では丸めた本をメガホン代わりにした屋敷野梢が、準備のために集まった生徒会役員や、助っ人の生徒達にてきぱきと指示を出していた。
（いやー、校長先生の話が終わらないときは無事に開催できるか不安だったんですけど、無事に開催できそうでよかったですねー）
　生徒会副会長である梢はパーティースタッフの一人であって、パーティーの主役ではない。
　それでもこの生徒主催の盛大な催しを梢も梢なりに楽しみにしていた。
（まあ海原先輩が校長先生の頭を引っ叩いたときはさすがに焦りましたけどねー。あの長話、確かに無駄に長いですけど、見てて和むから私は好きなんですよねー）
　とはいえ、海原茂もまたパーティーを無事に開催するまでにこぎつけた功労者の一人には違いない。
（あとで飲み物とお菓子の差し入れぐらいは持っていってあげなきゃですねー）
　そんなことを思いつつ、頭にたんこぶを三段重ねにした状態で受付に立つ茂の方を梢はチラと見やる。
（まあ、それはそれとして今はキッチリ準備しないとですね！）
　梢は自分に心の中で言い聞かせると、再び本メガホンを片手に声を張り上げる。
「あ、呉井せんぱーい、そのツリーの星の飾り、ちょっと傾いてるから直しといてくださーい」
「あいよぅ」
　キツネコスをした生徒会書記の呉井陽太が、脚立をヒョイヒョイヒョイと持ち運ぶと高身長をいかして、素早く星の飾りの位置を整える。
「あ、華道部のみなさーん、お花の差し入れどうもですー。なんかもの凄く『ＴＨＥ在庫』感がありますけど、気のせいですよねー？」
「……違いますよ？　さっきの大掃除で出た大量の在庫の処分のためとか、そんな事実は一切ありませんよ？」
　華道部部員で芸術家肌の本条小萩が、綺麗なフラワーアレンジメントを会場に設置しつつ、棒読みの台詞でそんなことを言う。
　と、そこに生徒会室から戻ってきた志波武道もやってきた。
「お、梢ちゃん、ジングルベール！　ホラ、あんまり叫ぶと喉渇いちゃうＹＯ☆」
　すでに武道はサンタコスに着替え終えていて、スタッフとしてパーティーを盛り上げる気満々だった。
「あ、志波先輩。気合入ってますねー。あ、お茶、ありがとうございまーす。ありがたく頂戴しまーす」
　サンタ武道に手渡されたコップのお茶を、梢はお礼を言いつつ一気に飲み干す。実際、喉が渇いていたので、こういう気遣いは本当にありがたい。
「お、いい飲みっぷり☆　よし、それじゃあ俺は他の子達の応援に行ってくるねー」
「お願いしまーす。あ、そのまえにお茶もう一つもらえます？　ちょうど受付に行く用事があるので、ついでに海原先輩に持っていってあげようかと」
「お、了解☆　あ、それだったら俺からも『校長の頭叩いてくれてありがとうございました』って伝えといてくれない？」
「はいはい、了解ですよー」
　こうして、梢と武道はそれぞれの方角に向かって歩きだし、パーティーの準備は着々と進んでいく。