キャベツ畑でつかまえて（物理）｜リアクション

キャベツ畑でつかまえて（物理）

●猫鳴館の片隅で揺れるキャベツの花は世界征服の夢を見るか

　数日後の猫鳴館の朝。
「おはようございます、天野さん。ご精が出ますね」
　寮の畑に出た蓮は、先客に声を掛けた。
「おはよう、森。君も水やりかい？」
「はい、今日は先を越されちゃいましたね」
　あの日、月詠から受け取った数枚のスケッチブックから、天野はわずかに二桁に満たない数の触手つきキャベツを取り出した。
　それは今日も、猫鳴館の畑の隅で元気に根付いている。
　新たに猫鳴館に『危険！』の看板を作るハメになり、実際、かじろうとした野生動物を触手で締め上げて大騒ぎになる、なんてエピソードを生みながら。
「植物ってさ、本来は外敵から身を守るために毒があるのが普通なんだよ。ずっと昔は、野菜は生で食べれるようなものではなかったんだ」
　天野の視線は、ただキャベツを見つめている。気の利いた返答を求めているのではないだろうと察して、蓮はただ頷いて先を促した。
「それに人間が手を入れたり、代わりに外敵から守ってやるようになって、野菜は自分で毒を作る必要がなくなって、段々毒性を弱めていったんだ」
　まだ少し、冷たい風が通り抜けて。
「力が欲しいな……」
　少年の呟きを、風はただ静かにさらっていった。

　終

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あとがき

担当マスター：メシータ
ファンレターはマスターページから！

　「お疲れ様です、キャベツです。やりやがったな！
　キャベツ畑の真ん中でド派手に転ぶような、個性的なアクションの数々……おいしゅうございましたッ。

　もれいびキャベツは君達のがんばりで、一部をのこして綺麗に収穫されました。
　神魂はキャベツを抜けて、また別の厄介な事件を起こすかもしれません。やったね！
　やーい、やーい！　君達の日常なんか、全部ブチ壊しにしてやんよ！
　キャベツを見るたび、思い出せッ！　アハハハハハハハハァッ――！！！」

　以上、キャベツ代表でした。

　ゴールデンウイークのお供に、春キャベツ。少しでも、お楽しみいただければ幸いです。
　それでは、皆様。良いゴールデンウイークを……。2828。
　このたびは、ご参加まことにありがとうございました。
　お送りしたのは、メシータでした。

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