ひび割れた窓ガラスを透かして、うっすらと差し込む月の光に照らし出される、猫鳴館のとある個室。
「…………んん……」
机に突っ伏したまま眠り込む
鷹取 洋二の横では、消し忘れたテレビの画面が、さああああ。さああああ。と耳障りな雑音をかき鳴らしながら、モノクロの砂嵐を明滅させています。
そして。
唐突に、番組は、始まりを告げるのです。
『ミッドナイト・フリーキー・ショウ!』
どこか不安をあおるような不気味な音楽、超現実的で不条理な風景映像。暗闇に浮かび上がるネオンサインのような、極彩色のタイトルバック。
新聞のテレビ欄に掲載された放送局のタイムテーブルはとうに終了し、次に始まるのは、早朝のさわやかなラジオ体操と一日の天気予報……そんな放送終了後の空白の時間に、ぬるり、と入り込むように、その番組は幕を開けるのです。
「…………んふふっ」
こつり、こつりと響く足音。
真っ暗な画面の中から染み出すように現れた、16~7くらいに見えるその女の子は、黒い皮手袋をはめた手でついとスカートの裾を持ち上げ、どこか繕ったような慇懃な仕草で一礼し。目を細めてにんまりと笑みを浮かべると、粘着質な音を立てて口を開き、語り始めます。
「こんばんは。陰鬱な深夜のひとときを鮮やかに彩る番組、『ミッドナイト・フリーキー・ショウ!』へようこそ。わたくし、これより皆様を不可思議な世界へとご案内させていただく、ストーリーテラーの
胡乱路 秘子(うろんじ ひめこ)と申します。どうぞよしなに……んふふ!」
秘子、と名乗る女の子はそう言い、怪しい含み笑いを一つ漏らすと闇の中を再び歩き出し、カメラがそれを追って移動します。
「さて。人はいつか、死ぬ……死は誰にでも訪れる、共通の終着点です。そこには、お金持ちと貧乏人の区別も無く、上司や部下の関係もなく。例え一世を風靡する芸能人であろうとも、名も無き一般人であろうとも、王様であろうと奴隷であろうと、たどり着く先には違いなど何もないのです」
唐突に現れたのは、暗闇の中でぽっかりと浮かび上がる、はっとするほどに白いスタンドテーブル。
女の子は、こちらへ悪戯っぽい視線を投げると、
「……ですが、んふふ。死、そのものに違いはなくとも、そこへ至るまでの過程は、実に千差万別。老衰で? 車に轢かれて? 高いビルからの落下死? 病気に苦しんだ末の死かもしれませんし、誰かに刺されて死んでしまうのかもしれません」
テーブルの上に置いてあるのは、一枚の……何かの書類用紙です。
その用紙をしばしまじまじと眺めてから、それを顔の前にぴらりと持ち上げて見せ、女の子は再び、んふふっ! と笑うのでした。
「あなたがいつか人生の終着点へとたどり着く、その瞬間。あなたの死には、一体、どんな物語が添えられているでしょうか?」
「ふわ……ぁああ」
夜が明けて、傍らのテレビで流れるラジオ体操の元気なかけ声に目を覚ました洋二は、ひとつ大きなあくびを漏らします。机に向かったまま疲れて眠り込んでしまったらしく、痛む節々に顔をしかめながら、洋二は大きく伸びをします。
「? なんだ、これは……?」
そして、洋二はふと、気づくのです。知らぬ間に机の上へと置かれている、A3サイズの、一枚の用紙。
そう、彼自身の『死亡申告書』に。
初めまして! 新人マスターとして『らっかみ!』の世界に携わることになりました、墨谷幽(すみたに ゆう)と申します。よろしくお願いいたします~!
●『ミッドナイト・フリーキー・ショウ!』とは
深夜、テレビ局の放送が終わった後に始まる、謎の番組。不可思議で不条理な出来事と、それに関わった人々の行動やその顛末などが紹介されます。
いつも決まった時間に始まるわけではなく、また誰でも見られるわけでもなく、たまたま波長が合った人にだけ見ることができるようです。
●今回のシナリオの概要
突然あなたのもとに届く、『死亡申告書』。そこには、あなたの名前と、あなたがいつどこで、どのような死を迎えるのか、その死因が記入されています。
あなたがその内容を一通り読み終えたとき、あなたの意識は遠のき、目覚めたときには、申告書に書かれていた内容の通りの死をリアルに体験させられることになります。
死の体験を終えるとあなたは現実に戻りますが、そのリアルな痛み、苦しみや絶望は、克明にあなたの記憶へと刻まれているのです。
アクションには、あなたのPCが受け取った死亡申告書に書かれている内容(どのような状況で、いかにして死ぬか)をお書きください。
なお、内容は概ね、誰もが望まないような不幸な死に方や凄惨な死に方が書かれていることが多いようです。
【追記】
※このシナリオにおいて描写されるのはあくまで『死の体験』であり、必ずしもPCの未来を予言したり確定するものではありません。
●参加条件
特にありません。寝子高生の方でも、社会人の方でもOKです。
●舞台
お好きな場所、シーンをご指定してくださって構いません。
●NPC
・『胡乱路 秘子(うろんじ ひめこ)』
謎のテレビ番組『ミッドナイト・フリーキー・ショウ!』のストーリーテラー役を自称する、16~7歳くらいに見える女の子。
んふふっと怪しく笑います。
●その他、備考や注意点など
※NPC、及び今回のシナリオには参加していないPCに関するアクションは基本的に採用されませんので、あらかじめご了承ください。
※死因は『おまかせ』にしても構いません。その場合、あなたのPCは理不尽だったり、不幸だったり陰惨だったり、主に後味の悪い死を体験することになります。良くわかんないけど、ホラー映画みたいに派手に死んで見たい! なんて方はぜひおまかせで。
以上になります。
皆様のご参加を、お待ちしております!