夕暮れの旧市街、そのレトロな街並みの中に
すっかりと溶けこむ一軒の豆腐屋があった
古びた外観、辺りに漂う大豆の匂い
・・どこからかあの独特な笛の音が聞こえてくるような感じさえする
そんな豆腐屋の中を覗いてみると、一人の男性が笑顔で声をかけてきた
「いらっしゃい、今日は何をお求めかな?」
あたし、岩手から来たんです。此処は、とても良い所ですね。
(そっと目線を合わせてにっこり微笑み)
そ、そんなものですっ。昔からお母さんのお手伝いしてたので。
でも、未だに包丁の扱いは危なっかしいって言われます。
(ちょっと苦めの笑いに眉と口許歪め)
へぇ…あの、今度お時間ある時でいいので卯の花とかドーナツの作り方教えてもらえませんか?
あたしは台所班の中でも普通に食事作る係で滅多にお菓子は作らないけど、クッキーも作れたら皆の勉強のお供にきっと合う筈だし。
(電話番号をメモした後、電話は6時以降、とも書き加えてからお店の名前も付け足し)
…うん、これでよし。
あ、そうだ今日のお代。(メモ帳とペンを仕舞って、代わりにエコバッグの底に入れていた財布取り出し)