(コンクリート剥き出しの殺風景な部屋。間接照明で薄暗い。
スチール机にデスクトップパソコン。椅子に座ってキーを打っていた男が振り返る)
……なんだあんた、お客サンか。
ご覧のとおり此処は廃墟の雑居ビル。付近の住民からはシーサイド九龍って渾名されてる。昔そんな名前のスラムの複合団地があったんだってな。
ホームレスやガキがよく潜り込んで困ってる。勝手に間借りしてる身でうるさく言えねえが……
なんでも昔殺人事件があったとか。自殺騒ぎはザラ。飛び降りる瞬間を見ちまったヤツはゴシュ―ショーサマ。
地下一階五階建てだが、一部異空間に繋がってるって都市伝説が囁かれるよーなカオスな場所。
興味本位で潜りこむのは構わねーが、迷子になったり行き倒れても面倒見ねーぞ。
自己責任ってヤツだ。
ま、明るいお天道様の下でやったら手が後ろに回るよーな事をしたい連中にゃいいんじゃねえか。
俺?
……ワケあって横浜から逃げてきた。今は情報屋やってる。欲しいネタありゃ言いな、料金は応相談だ。
名義上はコミュの管理人て事になってるが、特に何をするでもねえし、トピ立てはお好きにどうぞ。
タイトルの最初に「〇階」って階数を入れるとわかりやすいかもな。
……んじゃ、もう一眠りすっか(雑誌を顔に被せてソファーに寝転がる)
カルマか…ふぅん『宿命、業』、か。まぁよろしく。
色んな奴らなぁ。全くだぜ。ここまで出揃ってキャラが被らないのが驚きだ。
…見た所高校生も多いようだがポリ公に補導されても知らねーぞ? 俺が言えた話じゃねーけどよ。
ん? このCDか?
おう、暇な大学生の特権っつーことでバンド組んでてな。
『lie』っつーんだ。シーサイドタウンの『寝子島loosey』で時々ライブやってる。
このCDも星ヶ丘で展覧会やるっつーから、出品と宣伝用に作ったものだ。
まだ結成二ヶ月目で知名度もねーからな。100枚程度無料配布しようかと。欲しきゃそんときにやるが…。
これで次回のライブで人が集まらなかったら、メンバーは数日絶食だ(苦笑
>情報屋
女に恵まれなさすぎて男に走るって奴もいるからその口かと(冗談めかして
ほい、約束のデモCDとフライヤーだ。ついでにチケットも一枚つけた。
いらなかったらいらないで捨てずに誰かに渡してくれると嬉しいが。
お、それがいいな。どうやら興味持ってくれた奴らもいるみてーだし。
(黒いジャケットのCDと封筒を渡す。ダークファンタジーな“白雪の君”と、恋人を想ったバラード曲の“No ending”の二曲が収録されている)