参道商店街の隅にひっそりと佇む小さな店。
手動の扉を押し開けたのなら、雑然と並んだ数列の書架と古本の独特な匂いが客人を歓迎してくれる。
狭い店内に溢れんばかりの沢山の本が、大雑把なジャンルごとに棚に収まっていたりはみ出していたり。
いちばん奥のカウンターでは、ぼややんとした雰囲気の初老の男性が。
──あるいは客を追い払いでもするかのような鋭い目付きの少年が、客人を待ち構えている。
立ち読みはご自由に。休憩用の小さな椅子も、備え付けられている。
暇を持て余した少年に愚痴を零すもよし、棚に溢れる本の中から目的のものを探すもよし。
本を愛する全ての人に、坂井書房の扉は開かれている。
お前っ、忘れてるっつってんだろ……!(片手を膝に付いて荒い呼吸を整えながら)
代金だよ、代金! ……10円、足りてねえんだよ。
ったく、秋風のせいで赤っ恥かいたじゃねえか……
(大声を出したせいで集まる商店街の人の視線に少し恥ずかしそうにしながら、じとりと秋風を見据え)