蜩の鳴き声がする。
盛夏特有の長い昼もそろそろ終わり、目を見張るほどの橙色が街を満たしていた。
帰り道を急ぐ学生や、買い物鞄を片手に談笑する主婦、少し疲れた顔のサラリーマンなど、様々な者が行き交う中で、ふと目を惹く虹色に足を止めることもあるだろう。
ぷかり、ぷか。
虹色のシャボン玉が漂っては弾けて消えていく。
視線だけで出所を探せば、其処は崩れかけた廃墟だ。
はて、此処は廃墟だというのに、いったい何処からきたのだろう。
首を傾げて、けれど然程の興味も湧かず去りゆく者もいるだろう。
あるいは、好奇心からそっと中を伺う者もいるだろうか。
もし、貴方が中を伺ったのなら。
『立ち入り禁止』の黄色いテープの向こう、すっかり崩れかけ苔むした廃屋の、その縁側に小さな子供が座っているのが見えるかもしれない。
オレンジ色の陽光に照らされて、ふう、とシャボン玉を飛ばした子供は楽しそうに笑った。
◆RPスレ
◆苔むした縁側でシャボン玉を拭く。
吹かなくてもいい
夕暮れ。飽きたら帰るといい。
むぁ?
(突然の女性声に、緑色の筒を咥えたまま子供が目を丸くした。それからぴょん、と縁側から飛び降りて)
えっと、こんにちは、なのだ!
(それから小雪をしげしげと眺めて、首をこてんと傾げた)
んと、おねえさんはだれなのだ?
じーちゃんとばーちゃんのしりあい?
あっ、それとも、迷子さんなのだ?だったらトーチカ、地図描いてあげるのだ!
(幼子が故に矢継ぎ早に質問を忙しなくしてから、じっ……っと期待に満ちた目で小雪を見る。どうやら、久しぶりの客人に舞い上がっているようだ)