木々の葉の間から温かな光が弱く差し込む。
心地よい静寂に満たされたその場所は、周辺の猫たちの集会場所になっているらしい。
猫好きな人なら、集う猫たちに誘われて、この場所を訪れることができるかもしれない――
…お休みなさい、可愛い子。
貴女の眠りは私が守るわ。
(糸が切れた様に眠り込む儚い少女の髪を撫で
「守る」とそう、柔らかな声に確固たる意志を込めて口にする。
「家においで」と、そう言ったけれど。
自分や義妹がそれを許そうと
彼女の心が彼女自身にそれを許すのは
容易いことではないだろう。
もしかすると彼女は今後も独りきり
恐怖に怯え、凍える様な生活を続ける道を選ぶのかもしれない。
だとしてもせめて、今だけは。)
ーー貴女に幸福が在ります様に。
(彼女の眠りを妨げぬよう、静かな声で口にして
自身の指に咲く青の薔薇へと口付ける。
その想いと行動は青薔薇の少女がその身に宿す
神魂の力を呼び起こすには十分なもので。
不可思議によって押し上げられた運気が何を招くか。
それは不確かなことではあるが
眠りに落ちた少女が幸福な夢を手繰り寄せる為の
手伝い程度にはなるだろう。)