「こっくりさん」
誰もがそれを聞いた事があるだろう。
中には、実行してみた・それに混ぜられた人もいるかもしれない。
寝子島高校のフツウの生徒・恵御納夏朝もその1人。
ある怪談話の時、語り手に合わせ相槌を打つようにこう言った。
『僕も、中学校でやったことあるよ。流行ってたもん』
ならば、やってみた時の状況はどうだったのか。
とじられた項をめくり…一部分を明かしてみよう。
A-2
少し経って、夏朝は恐怖心が長引いたからか
若干のふらつきを感じていた。
そして…何が原因によるものか。
突然、己の中に強烈な衝撃が発生し…
そのダメージで、立っていられなくなる!
(駄目だ、10円玉から手を放せば…)
せめて指だけは離しちゃ駄目…!
指を乗せた左手と、机のふちにかけていたもう片方の手に力を集中したが
足と体までは支えきれず、倒れかけ―
「―なさん!」
「―御納さん、大丈夫!?」
夏朝は…結果としては、倒れなかった。
両隣の生徒が異変に気づき、とっさに空いた手で夏朝を抱き留め
さらに、参加せず見ているだけだった別の生徒が
後方から支えた事により、倒れる寸前で留まったのだ。
「ごめ……ゆび、は…?」
10円玉から手を放せば―それを事前に聞いたがゆえに、
周囲への脅威を恐れながらも立ち直して指を見れば…
…指は、10円玉から離れてはいなかった。
夏朝の指も、それ以外の生徒達の指も。
ある意味…ささやかな「奇跡」だったのかもしれない。