夜歩く人たちのある日の記録。どんな事が起きたのやら。
ええ。
私は昔、今の私ではなかった。
今よりも醜く矮小な人間だった。
もし貴方が今宵出会ったのが昔の私であったなら
貴方は私の事を蔑みの目で見たことでしょう。
そう…。とても嬉しいわ。有難う。
(柔らかな声で礼を言い微笑む)
貴方の言う通り、私は沢山の人に護られている。
心配と面倒を掛け続けているのに
それでも見捨てずにいてくれている…。
感謝してもしきれないわ。
そうでしょう?
私もこれで結構苦労をしているんだから。
人に好かれるというのも楽じゃないわ。
(戯けた口調で返し、くすくすと楽しげに笑う)
「自分一人が真実を知っている」という夢は
甘美な優越感を齎すでしょうけれど
それは結局の所、独りぼっちだということよ。
…自分を理解して貰いたいのであれば
自分自身も他人を理解しようと努力しなければならないわ。
傷つけられるのが恐ろしいと言うのならば
私が貴方を守ってあげる。
…そう…。
だから貴方は、そんなにも苦しそうなのね…。
(切なげに目を細めて従夢さんを見つめ)
…よしよし。大丈夫。大丈夫よ。
(従夢さんをそっと抱きしめようとする)