『MIBU』と書かれたシンプルな掛札のかかった扉がある。
5階、エレベーターから出て左手一番奥。
5階、東階段を上って目の前。
中に入ると、広い間取りの玄関と、その先に続く廊下。廊下の先にはこれまた広いリビングが。
花を生けた花瓶、絵画、各種インテリアが置かれたその部屋は綺麗に整えられており
埃ひとつない、とは比喩にもならないほど。
玄関前の廊下から分かれる客間、その部屋の一番奥にあたる寝室ですら、日々の掃除を怠ってはいない。
そう、『彼女』の性格からはとても想像がつかないほどに。
キッチンから香ばしい匂いがする。
その匂いの主は、彼女の作ったクッキー。もはや、彼女の日課となっているものだ。
来客があれば、気だるそうに玄関へと向かう。意外にも彼女は綺麗好きだったのだ。
「あぁ、いらっしゃい……ふあぁ…ねむ」
―――尤も、その身嗜みを除けば、だが。
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壬生 由貴奈の個人部屋トピックです。
原則、非入居者の方を含めどなたでも入室可能です。
彼女が何かしらのんびりやってますので、ご自由にお入りください。
やっほぉ、どうしたの急に。連絡してくれればこっちもいろいろ用意してたのに。
……あ。
(昨夜に寝たきり、寝間着のままだったことに気付く)
……まぁいいか。で、どうしたのねむねむ―――
(箱に詰まったダックワーズを見て、すとん、とソファに腰かけた)
おー、これまた美味しそうな……ってそんな、うちのクッキーなんかにお礼なんていいのにさ。
高かったでしょ?これ。……まぁ、せっかく持ってきてもらったものだし、頂くけど。
(と言いつつダックワーズに手を伸ばす)
(声を聞いて笑顔で扉を開け)
どうやら居留守みたいなんで勝手に上がっちゃいますよ〜
(テーブルの上に箱を置いてソファに腰掛け)
これ、前来た時に焼いてくれたクッキーのお礼
行きつけの洋菓子屋さんのダックワーズだよ。
クッキーみたいで美味しいから食べて見て!
……ぐー…ぐごっ。
(呼び鈴の音で、居眠りしていたソファからゆっくり起き上がる)
ん…誰だろ……。(インターホンのカメラを見る)
…ねむねむ? どうしたんだろ、こんな眠れる昼間っから。
(受話器を取って、いつも通りの口調で)
もしもーし、居留守でーす。勝手に入ってどーぞぉ。
(お菓子の入った袋を手に持ち家の前に立ち)
う~ん、やっぱりあらかじめ連絡してからくればよかったかなぁ
(そっとブザーのボタンを押す)
(返答に嬉しそうに笑顔を浮かべ)
そっか、ありがとう。これからもよろしくね・・おや?
(携帯の鳴動に気づき画面を眺めて)
・・時間が経つのは早いなぁ、ホントはもう少しここに居たいけど
バイトの時間だから今日はひとまず帰らなきゃ
(コーヒーカップを流し台に持っていき軽く水洗いし玄関の方へ)
じゃ、今日はひとまずさようならかなぁ。でも、また遊びに来るよ
焼きたてのクッキーもコーヒーもとっても美味しかったからね。
それじゃ、またね・・由貴奈さん。(ドアノブに手を掛けゆっくり扉を開けながら)
気分乗らないとサボること多いんだよねぇ。体育とか、体育とか。動きたくないし。
でも何だかんだ、単位落とさない程度には出席してるんだよぉ。出てもほとんど寝てるけど。
けど確かに、似た者同士かもね。お互い寝不足だし。
……あんまり寝ないもんだから、他人より老けてる気がするよ、うちは。
身体はそうでなくても、精神はどんどん年寄りに近づいてると思うなぁ。
さて、うちも新しいの淹れてくるかな。紅茶まだあったかなぁ……。
(ソファを立ち、キッチン食器棚下段から紅茶の葉を取り出しながら)
恋心はいつまで引っ張っても面倒くさいだけ……なんてよく言われるけど、
気持ちに区切りをつけて、その後どういう風に付き合うか、ってところが大切なのかもね。
…なーんて、経験の無いうちが言うのもなんだかアレだねぇ。
まぁそうだねぇ、お付き合い飛ばしていきなりお嫁さんにしてなんてハードル高いもんねぇ。
じゃあ、ねむねむのお友達からだねぇ。これからもよろしく。
うちでよければ、またクッキーご馳走するよぉ。
…って言うと、なんか「これから毎日ご飯作ってあげる」みたいに聞こえちゃうよね。
(紅茶を淹れながら、すこし茶化すように、照れ隠しするように笑う)
あー・・そういう意味じゃ高級マンションも一長一短て感じなのかも
にしても学校サボっちゃうとは壬生さん、中々強者だね・・
寝坊で遅刻ばっかしてる僕もあんま人の事言える立場じゃないけどさ
案外似た者同士なのかな、僕たち・・
お、コーヒーありがとうね。頂くよ
(2杯目のコーヒーにそっと口付けて)
うん、普通に美味しいよ。壬生さんの淹れたコーヒー
って壬生さんだってまだ若いじゃない。僕と2歳ぐらいしか違わないでしょう?(笑顔を浮かべながら)
・・結果的に僕は振られちゃったんだけどさ。ひとつだけ分かった事があるんだ
どんな形であれ誰かを好きになるってことは素敵な事なんだって
僕とあの子との関係性は、今となっては初恋から親友へと移り変わってしまったけど
それって相手を見る角度が変わっただけで、その人が好きだって気持ちは変わらないんだよねえ・・
今の僕はそれで満足なのさ。(言い終えた後チョコクッキーを一口かじり)
はは、柄にもなく熱く語っちゃったね。これはねむるさんらしくないや・・
今の僕にはまだ、新しい恋をはじめる勇気なんてないけどさ。
そんな僕でよければまず友達になってくれないかな?
壬生さんのクッキー、また食べたいしね(にこっ)
人に惹かれるって、長所短所ぜんぶ含めて惹かれるのかもねぇ。あいにくと、そういう人にはまだ出会ったことないけどさ。
そもそも、うちにはあんまり人付き合いが無いからねぇ……このマンション、セキュリティ性高いぶんお隣さんとも話したことないし。
学校もサボること多いから、あんまり友達いないんだよね。…尤も、今年度に入ってからは他人と絡む機会増えたけど。
(淹れたてのコーヒーを持って、リビングへ戻ってくる)
はい、コーヒー二杯目だよぉ。
あんまりいい豆じゃないしまだうまく挽けないから、味は勘弁してね。普段自分で飲むのは紅茶ばっかりだし。
しっかし、ねむねむも好きな子いたんだねぇ……いいねぇ、若いって。(残っていた自分のコーヒーを口に運びながら)
恋するって感覚、今まで一度も経験してないからなぁ……興味ない訳じゃないんだけど、どうもね。
心の底から好きって言えるのは両親くらいだったからねぇ、そういう気持ちなれる人と出会えたっていうのは、それはそれでちょっと羨ましいね。
で、ねむねむの新しい恋はいつ始まるのかな?(にやにやしつつ、バニラクッキーを一枚口に放り込む)
あー・・確かにないこともない、かな?
むしろ僕の場合短所の方が多いかもね。けど言わんとしてることはよく分かるよ。
少なくても僕は誰かの長所より短所に惹かれるってとこはあるし
何もかも優れている人って、要は誰の力も借りる必要のない人って理屈になるわけで
確かにそういう人が仮に実在するなら、気味が悪いかもね。
いやー・・全然もてないですよ。(手を横に振りながら)
何だかんだで寝子高はイケメン率高めだからねえ。
それに僕自身奥手だからそういう類は全然免疫なくってさ(苦笑しながら)
・・ビビっちゃってるのかなあ。誰かを好きになるって事に
まぁ、白状するなら好きな人はいたんだよ。
けど七夕に告白して振られちゃったのさ。
その子とは今でも親友だし、諦めはついてるんだけどねぇ
極めていく、かぁ……。自分の中では『これしか』できなくて、ずっと続けてたら上手くなってきたんだよねぇ。
その代わりなのか、運動はからっきしだけどね。天は二物を何とかかんとか、ってやつかも。
まぁ……その辺は、誰だって似たようなものじゃない?
ねむねむだって、客観的に見て他人より優れてるところがあるって思う部分はあるでしょ? 当然、その逆も。
寧ろ何でもそつなくこなせる人は、うちにとっては逆に気味悪く感じちゃうよ。
うちの性根がひねくれてるっていうのもあるかもしれないけど。
(真面目に返答されて思わずリビングの方へ顔を向けて)
……テキトーに言ったんだけどなぁ、そこまで真剣に考えられると……何というか、反応に困っちゃうねぇ。
何もそんな、いきなり結婚後の話に飛んじゃったら意味ないでしょぉ。ねむねむってばそこまで考えてくれるんだね。
(心なしか嬉しそうな表情を浮かべて)
って言ってもねむねむハンサムだし可愛げもあるから、年上年下問わずモテそうじゃん?
好きな人とかいるんじゃないの?
(再び手元へ視線へ戻し、コーヒー豆を挽く)
(部屋を見回す壬生さんの様子を見て納得した様子で)
あー・・なるほど、確かにクッキーの材料よか家賃の方が高そうかも。
クッキーにしても機械いじりにしてもそうだけど、壬生さんは職人気質な感じだね。
好きなものはトコトン追求して極めていく感じ。すごいなぁって思うよ・・
え、僕が・・?(予想外の返答に驚いた様子で)
いやぁ、今の僕じゃ壬生さんをお嫁さんにはできないよ。
実家の手伝いで雇われ店長してるとはいえ小遣い程度しか貰ってないしさ・・
(コーヒーカップを口元に寄せながら)
・・た、ただ、3年後なら考えちゃったりするかも・・(赤面しながら凄く小声で)
どうだろうねぇ? 手作り始めてから、あんまり市販のクッキー食べたことないし。
作り方調べて、美味しいと感じなかったら自分がイイと思える分量まで調整したり材料変えたり……。
まぁ、今となっては完全に自己流だねぇ。
お金取れるほどのものじゃないと思うよぉ? 別に、ねむねむからお金取ろうだなんて思ってないから、安心していいよぉ。
……そもそも、お金には困ってないしね。今のところ。
(レーズン入りクッキーを一枚口の中へ放り込み、部屋を見回す。
『こんな広い部屋使えてるし?』と言いたげな視線で)
(マグカップを手にキッチンへ戻り、お湯を沸かし始める)
ん? 別に傷ついたとか、そういうことじゃないよ。ただ単純に、自分には魅力が無いって自覚があるだけ。
…でも、励ましてくれてありがとうねぇ。
どうせなら、ねむねむがうちをお嫁さんにしてくれればいいのに。それで万事解決じゃん。
(お湯を沸かしている横で、コーヒー豆を手挽きしながらしれっ、と)
え、5年間ほぼ毎日??す、すごい・・
てか壬生さんコレ普通にお店のクッキーより美味い気がするんですけど
・・た、タダで食べちゃっていいのかなぁ
なんだか申し訳なくなってきちゃったよ。
あ、うん。それじゃもう一杯頂こうかな。
何から何までありがとうね、壬生さん。
oO(地雷踏んじゃったかな・・壬生さん傷つけちゃったかも)
えっと、ほら。何から何まで完璧である必要はないんじゃない。
出来ないことがあるってのもまた、その人の魅力になり得る訳だし
それでも朝起きて、目の前に焼きたてのクッキーとコーヒーが用意してあったら
嬉しいのかなぁ・・って思ったのさ、傷つけちゃったのならごめんね。
ふっふっふ、そりゃあ伊達に5年もクッキー作ってないよ。
1人暮らし始めてからはほぼ毎日作ってるからねぇ。失敗したことも多かったけど、結果的には実入りの方が大きいかなぁ。
おかげで、料理作るのには困らなくなったねぇ。
(お嫁さん、という言葉でぴたりと動きを止め)
……お嫁さん、かぁ。こんな女拾ってくれる婿さんなんて、果たしているのかねぇ。
料理と洗濯と掃除ができるくらいじゃいいお嫁さんになんてなれないよ、きっと。
…あ、コーヒーおかわりあるからね。豆はたくさんあるし。
そか、んじゃお言葉に甘えて(ソファに腰掛け)
あら、コーヒーまで淹れてくれたの?ありがとうね・・
さてとまず最初はどのクッキーを食べよっかなぁ。
あ、これにしよう!(バニラのクッキーとコーヒーを交互に口に運び)
やっぱり甘いお菓子にはビターなコーヒーが相性バツグン!
クッキーもコーヒーもすごく美味しいよ。
これは壬生さん、いいお嫁さんになれるねえ(笑顔で口をもぐもぐさせながら)
あぁ、適当にソファとかあるし、好きに座って大丈夫だよぉ。
広すぎて一人じゃ持て余してるくらいだし、たまにはそういう家具使ってあげないとねぇ。
……はい、完成。
(皿に盛り付けたクッキーとコーヒーに入ったマグカップ二つを持ってリビングへ)
さっきコーヒー好きって言ってたから勝手にコーヒー淹れたけどよかったかな?
本日のクッキーはバニラ、チョコ、イチゴ……あとレーズン入りだねぇ。
お先にいただき。(イチゴ味を一枚口に放り込む)
お、焼きたてのクッキーの匂いかな?(鼻をくんくんさせ
んじゃ、お邪魔しま~す・・
(リビングに入って床にあぐらをかいて座り)
ふー……あぶないあぶない。流石に脱いだの見られるのはよろしくないしねぇ。
(何事もなかったように戻ってきて)
あっ、どーぞ上がっていいよぉ。リビングこっちね。
(指でリビングの方向を指して)
ラウンジ前にクッキー焼いたばっかりだから、ちょうどいいのがあったかな……。
(と、キッチンへ向かってミトンを両手に嵌める)
うわあ・・なんだか小さな美術館みたいだね。
(辺りをきょろきょろしながら入室し)
それに美味しそうなクッキーの匂いがする・・
oO(僕んちとは全く別世界って感じ。すごいなあ)
※昨日の服の投げ入れに関しては気づいてない様子
(また別の時間軸、オープンラウンジから帰ってきた)
(ガチャリ、とカギが開くと、由貴奈がゆっくりと部屋へと入る)
ふー……ここも廊下も、空調効いてていいねぇ。外に出ると汗だくだもの。
さ、どーぞねむねむ。うちの家だよぉ。
(そのまま扉を開けっ放しにして)
……あっ、いけないいけない。
(部屋にさっさと上がると、その辺に脱ぎ捨てていた昨日の服を拾い上げ、洗面所に放り込む)