『MIBU』と書かれたシンプルな掛札のかかった扉がある。
5階、エレベーターから出て左手一番奥。
5階、東階段を上って目の前。
中に入ると、広い間取りの玄関と、その先に続く廊下。廊下の先にはこれまた広いリビングが。
花を生けた花瓶、絵画、各種インテリアが置かれたその部屋は綺麗に整えられており
埃ひとつない、とは比喩にもならないほど。
玄関前の廊下から分かれる客間、その部屋の一番奥にあたる寝室ですら、日々の掃除を怠ってはいない。
そう、『彼女』の性格からはとても想像がつかないほどに。
キッチンから香ばしい匂いがする。
その匂いの主は、彼女の作ったクッキー。もはや、彼女の日課となっているものだ。
来客があれば、気だるそうに玄関へと向かう。意外にも彼女は綺麗好きだったのだ。
「あぁ、いらっしゃい……ふあぁ…ねむ」
―――尤も、その身嗜みを除けば、だが。
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壬生 由貴奈の個人部屋トピックです。
原則、非入居者の方を含めどなたでも入室可能です。
彼女が何かしらのんびりやってますので、ご自由にお入りください。
どうだろうねぇ? 手作り始めてから、あんまり市販のクッキー食べたことないし。
作り方調べて、美味しいと感じなかったら自分がイイと思える分量まで調整したり材料変えたり……。
まぁ、今となっては完全に自己流だねぇ。
お金取れるほどのものじゃないと思うよぉ? 別に、ねむねむからお金取ろうだなんて思ってないから、安心していいよぉ。
……そもそも、お金には困ってないしね。今のところ。
(レーズン入りクッキーを一枚口の中へ放り込み、部屋を見回す。
『こんな広い部屋使えてるし?』と言いたげな視線で)
(マグカップを手にキッチンへ戻り、お湯を沸かし始める)
ん? 別に傷ついたとか、そういうことじゃないよ。ただ単純に、自分には魅力が無いって自覚があるだけ。
…でも、励ましてくれてありがとうねぇ。
どうせなら、ねむねむがうちをお嫁さんにしてくれればいいのに。それで万事解決じゃん。
(お湯を沸かしている横で、コーヒー豆を手挽きしながらしれっ、と)