木箱の中に入れられたアンティーク調のノート。
木箱の中には青薔薇の飾りがついた
ボールペンも一緒に入れられている。
ノートの一ページ目には
「言の葉ひらひら。
吐き出せないなら書き出して。
あなたの想いで私を埋めて。」
と丁寧な字で記されている。
*落書きや誰にも言えない想いなど
ご自由に書き込みをどうぞ。
泉の水を口にした、男の子の事を想う。
私が泉に浸る姿を見ていたにも関わらず
彼はためらい無く、泉の水を口にした。
汚れているとは思わなかったんだろうか。
彼の目に私は、汚れているものとしては
映らなかったのだろうか。
そんな事を想う。
あの行動に、私がどれだけ驚き、安堵し、救われたかなんて
彼は知る由もないのだろう。
嬉しかった。嬉しかった。
本当に、本当に、嬉しかった。
濡れた私の身を案じ、タオルを差し出してくれた。
話を聞き、慰めようとしてくれた。
優しい子だと、想う。
彼に愛されている猫は、幸せだろう。
あの子もきっと、彼が好き。
だからああして、一緒にいる。
穏やかで美しい、尊い関係。
私もあんな関係を築くことができたらいい。
誰かと…いや、誰かと、ではなくて
世界で一番愛しく想う人と
あんな関係を築くことが、できたらいいな。