木箱の中に入れられたアンティーク調のノート。
木箱の中には青薔薇の飾りがついた
ボールペンも一緒に入れられている。
ノートの一ページ目には
「言の葉ひらひら。
吐き出せないなら書き出して。
あなたの想いで私を埋めて。」
と丁寧な字で記されている。
*落書きや誰にも言えない想いなど
ご自由に書き込みをどうぞ。
『カミサマは人を救う為に存在するものではないと仮定する。
現にクローネは混沌をもたらそうとしている。
この世の者全ての願いが叶う世界など、混沌に他ならない。
そこに秩序は存在しない。
クローネは私にとって害悪だ。
彼女の目論みは阻止しなければならない。
そういった意味でテオと私の利害は一致している。
けれど腹立たしい。
私はフツウの少女で有りたかった。
だというのに、呪いの様な力を押し付けられ
フツウの少女ではなく、化け物へと変えられた。
神魂を世界にばら撒き、私を化け物へと変えたののこが憎い。
フツウではない私にフツウを護れと
責任を押しつけるテオが憎い。
けれど、彼らに悪気がある訳ではないのだろう。
そうであるならば、私は彼らの所業を許すべきだ。
神を名乗り強大な力を身に宿すテオ。
彼一人でもばら撒かれた神魂によりに起こる数々の事件を
解決することは可能であるように思える。
にも関わらず、彼は私達に事件の処理を命ずる。
それは一体何故なのか。
そこには何か理由があるのか。
わからない。わからない。
現状では納得が出来ない。
彼らを許す事が出来ない。
現時点の私には、彼らに対する知識と理解が不足している。
ののこにアプローチをかけることは無駄だ。
彼女は自身が神であるということを忘却している。
ならば、テオにアプローチをかければ
何か有益となる情報が得られるだろうか。
私は納得がしたい。
私が今以上の化け物へと変わらずいられるように。
胸の奥で煮えたぎる負の感情を沈めるために。
必ず答えを見つけてみせる。
貴女と私の根本の考えは一致していると私は考える。
人を真に救うのは神ではない。人だ。
この世界は神が統治する世界であってはならない。
人が統治する世界で有るべきだ。
貴女と私、互いの答えへと辿り着くために
可能で有るならば、貴女と協力関係を結びたい。』