何年も前に引き払われた、とある個人商店の前
「貸店舗」の3文字の真下に冷めたハチワレみたいな女が1人、陣取っている。
べっこべこにヘコんだシャッターにべったり寄っかかってあぐらをかいて
まばらになった人の流れを無気力な眠い目でぼーーっと眺めている。
ボロいギターケースにすりきれたズタ袋、煌々と光るランプが傍に置かれ
ナニを聴いているのか、ヘッドホンを着けたまま…誰かが来るのを待っている。
…
(唐突ですが助っ人が到着次第、助っ人と市子の2人で1曲歌います
時間帯は夏場の暗くなり始めた頃合い
帰宅途中、夜遊びに行きがてら、ただの通りすがり、ご近所さん…
どなたも、良かったらちょっとだけ足を止めて、聴いて行きませんか?
もしも感じることがあったなら、足跡を残してくれると嬉しいです
演者は歌い終えるまで会話できませんが、ナニカ反応はする…かも
チナミに歌や演奏の飛び入り参加はごめんなさい今回ナシの方向で…)
(歌に尋ねられた眼差しは細められて。悲壮。
少しの間聴衆へ。その後地面へ。
独白めいた。耳打ちめいた。絞って固めたような声を、拡げてゆく)
いつも一緒だった 大切にしてた
なのにあの木の下! 置き去りにしたのさ…
(眺めているうちに目が合って、なんとなく微笑んだ顔がぴしっと固まる。
背筋にぞくっとくる。
最初たどたどしいかとも感じた音色に、どろっと濃密なものが乗っかったような……)
あは。こわーい……
(内心びっくりしたものの意地で薄笑いを貫いて、微かな声で呟く)
(引き続きじっと聴き入る。
今誰かに声でもかけられようものなら飛び上がっちゃうかも、なんて頭の隅では考えつつも。
けして心地いいようなものではないのに、引き込まれる)
落ちては熱く こごえる涙は何故?
午前二時にわらう つめたい二つの虚ろ
待ちびと捜しては うらやみ…連れてく
(汗ばむカラダを冷やす風に乗った二重奏は、谷底に落ちて。
ランプの明かりがぱたぱた揺れた。
すんと息を吸う。はらっとうつむき。まぶたを開けて。
けれど影に覆われた両目は、ぽっかりと洞が2つ空いたよう。
なのにソレは聴き手の2人を、目の合ったカノジョを、確かに…見ている。
生っ白い顔が闇の加減で薄く笑って見える。
そして、口が、かすかに開いて。ひそやかに。オモムロに…)
……!
(見知った顔に気が付きはっと目を見開いた後、照れくさそうに微笑む
一呼吸置くと集中するように口元を引き締め視線を落とし、鍵盤に指を滑らせる)
(一歩一歩ギターを追って確かめるように流れるピアノの調べ
やがてピアノはギターに追いつき、支えるような主旋律が徐々にトーンを落とす
小柄な楽器なのに重々しく、夏だというのに寒気すら覚えるほどの……)
(PL:レスが大幅に遅れてしまって申し訳ありません……!)
あれ、こんなところで・・・?(足を止める)
あの子、どこかで見たことあるな?(鳴さんを見ながら)
あ、打ち上げのときのアシスタント仲間だ・・・
(じっと聴きいる)
………へえ。
この場所で、こういうの……。
(ちょうど前を通りかかった時、ギターの音を耳にとめ。
その場にしゃがみこみ、静かに演奏に耳を傾けている……
演者と目が合うようなら微笑んだりはするかも)
……♪
(少しささくれたような感触の音に、耳をくすぐられる……)
(調整の様子をチラ見)…!(一瞬だけマジかよコイツ的表情。肩をすくめて)
………………。
(目を、閉じた。
合図するように3度、爪弾く。そのまま流れを作る。
スローテンポでノスタルジックなメロディの、しっとりしたイントロ。
ただ、奇妙な手つきのコードがちょっと頼りなくて…ぶっちゃけへたっぴな。
でも。一丁前にリードを気取った、熱っぽくて。
少し、つらそうな音が。夜の商店街に染み込んでいく…)
(市子の溜め息にふっと笑みを漏らすと、持って来たケースを開けショルダーキーボードを取り出す
小振りなそれは30年ほど前のモデル、薄闇の中で鮮やかな赤が異彩を放っている
改造により単体でも音が出るようになっている
静かに構え、指を慣らすように動かしつつ細かな調整を行う)
………おお。
(鳴に目配せ。ヘッドホンを首にかけて。ふすーーっとめんどくさそうな溜め息ひとつ。
のろのろと傷だらけのアコースティックギターを取り出して、空いたケースにスマホをポイ。
ギターは右用。弦も張り換えていないのに左構え。ちょこちょこともてあそびながら)
(何かを探すように視線を彷徨わせながら現れる
光るランプに目を留めると微かに笑みを浮かべ、傍に近づく
肩に担いだ荷物を地面に置き、隣に腰を下ろす)
……お待たせ。
…………………(スマホいじいじ。ねこったーに投稿しているようだ)