お題SS第2弾
(拾った)
(拾ってしまった)
制服からして、寝子高の生徒だろうか。
手をポケットに突っ込んで、そわそわと辺りを警戒する、怪しい少年が一人。
場所はキャットロードの裏路地。
複雑な構造の狭い路地で、今の所すれ違うのは猫ばかりである。
骨のカケラを奪い合う、黒斑と茶トラ。興味無さそうに、エアコンの室外機に寝そべるシャム。
そんな、いつもの様子に安心したのか、セカセカと忙しかった少年の足取りは、ウキウキと弾む様な歩調に変わっていく。
「拾っちまった」
少年の口から、呟きが漏れる。
視線は、手を突っ込んでいる右のポケットである。
少年 ”握利平”のズボンは両のポケットが、突っ込まれた手によって膨れていた。
だが、良く見れば右と左では膨らみに差がある。
右には手以外のナニカも入っているのだろう。
ともかく彼は立ち止り、後方を確認すると、そろそろと右手を外に出した。
握られていたのは……。
握の右手に握られていたのは……。
ちょっと名前がややこしい。
その右手には、白い布地が握られていた。
彼の無骨な手には似合わぬ、清潔で柔らかそうな布地である。
小さな赤いリボンが付いた、三角の布地。
誰がどう見てもそれは、女性物のパンツであった。
それを見つめる握の両頬が、だらしなく緩んでいく。
「拾っちまったぁ~」
何度目だ。
著者から思わずツッコミが入る。
そんなツッコミなど聞こえていない彼は、同じ言葉を三度繰り返し、ようやく違う言葉を吐く。
「よっし、早く帰ってアレやコレしようっと♪」
ウキウキである。
握は再び右手をポケットに突っ込み、スキップ気味に歩き始めた。