とある休日の昼下がり。
お客さん同士の雑談中は、我々はお邪魔致しません。
店員の事は気にせず、お好きにお喋りしていって下さいな!
……………。いんだよ(かすかに、震えた声で。少し顔色を染めて、うつむいて)
いくら喋ったって減るモンじゃねーし。だってこのハナシは…
ぜ ん ぶ ゆ う べ か ん が え た し
(最低のオチを言いながらブフっと噴いて目元を覆う。
肩を小刻みに上下させて。口角は上がっていないけど、絶対笑ってる。
でも相手がケーキを食べるや否やフォークを引っ込めた。
そして逆手でポテトをわしづかみにして、1本ずつもぐもぐやり出す)
イヤ悪かった。カンベンしてくれカエデ。…う(ひく、ひく)
「あんたの口からあたしの側面語らす」ためにちょいとシカケたんよ。
でも…だから全部が全部ウソってワケじゃない(メガネに指を入れて目じりを拭き)
経緯はともかく獅子島のイミとモトが寝子島だったのは多分ホント。そー聞いてる。
かなりムカシっから婆サマの代まで拝み屋なんだ獅子島は。敷地に社あったし。
ルーツが「白拍子」「神のヨメ」っつートコはあたしの想像…だけど
中坊んときウチにあった古い謄本見たら爺サマも曾爺サマも「居なかった」から。
神秘性保つためにずっと「そうやって」子作りしてたんかな…ってさ。
あ。言っとくけどあたしにゃー父ちゃん居たからねいちおー。
ソレと母ちゃんは占い師。演技スゲーうまくて…ホントは劇団入りたかったらしい。
婆サマはお茶・お華・日舞のセンセーもやってて三味線や琴も得意だった。
ンなカンジでウチは「ソレ系」のニンゲン輩出しやすいみてーで。分からんけど。
ココが「色事」「宗教芸能」。あたし見て「女優」になれるとも言ったな。
チナミに(肩を指差し)ソコにゃー「カゲ」があるだけ。「昼間」だし当然だろ。
けど「鬼」として流れ着いたコトは…「事実」がソレっぽっちしかねーなら
今話したあたしの想像聞いた時点で勝手に類推すんだろ。オマエのアタマなら。
だし「改まって話す事でもねー」「説話集にでも載ってそうな話」。…そーゆーコト。
(ふーっと息を吐いて脱力。
種明かしの最中にポテトを食べ尽したのにすぐヴィシソワーズを口に含む)
…正直ココまでうまくハマると思わんかったし(う、くくっ)
あーあ。ホントは最後まで作り話っての伏せとくつもりだったんだけどなー。
なんかワリーしやっぱ「フェア」にいかして貰うわ。…イミ。分かるな?カエデ。
質問の答えは………こっからだ(緊張感のある声で。でもホットケーキを頬張って台無し)