とある休日の昼下がり。
お客さん同士の雑談中は、我々はお邪魔致しません。
店員の事は気にせず、お好きにお喋りしていって下さいな!
(ヴィシソワーズとパンケーキに口を小さく開けて「おお…」と感嘆。
ナイフと蜂蜜、フォークとメープルシロップを器用につまんで、だばーっとケーキに注ぐ)
いい心がけだ。
(6等分に切りつつ竦めた肩の向こうをチロっと見て)…ヘーワがイチバン。
(話した内容に「共同体」「現代」といったワードを使って認識を示したこと、
また、因習に対する考え方そのものに、なぜか、心地よさそうに目をつむって)
まー聞け。ナニもケチつけよーってんじゃねー(真上から5枚ざくっと貫き)
オマエサンのゆーとーり「仕方のない」コトすよ。…「とりあえず」はな。
「西中の赤鬼」クンとやらも「西中の赤鬼」じゃねーとホカのヤツらが困んのさ。
でだ。
ウチ…シジマのご先祖もいつ悪玉にされてもおかしくない存在だった。
もしくはとっくに悪玉にされてたか………まーそりゃーこの際どっちでもいい。
とにかく「鬼」扱いされるコトに危機感抱いたままアチコチ旅して回ってた。
でも疲れた。当然だ。いつ何時イノチ狙われたりするかも分からんし。
だからそのうち考えるよーになった。ヒトにとっての善玉で居続けられる方法をな。
ソコで目ーつけたのが寝子島ってワケ。
なんせ寝子島にゃーマジモンの神サンが居るってもっぱらの評判だったし。
なら神サンにもヒトにもツゴーのいい「役目」についたら安泰じゃね?って寸法だ。
コレが大当たり。
モトモト白拍子だったシジマは神のヨメとしてウメーコト島に「嫁いだ」。
神のヨメなら見えない友達と喋ったって誰も文句言わん。だって神のヨメだし。
そのうち生きてるヤツもそーじゃねーヤツもナニカあるとシジマに相談するよーになった。
ソイツらをそのツド導いたりしながら…っても大抵はカンタンなアドバイスだけど。
ホカにもときたま湧いた悪玉を改心させたりムリなら退治したりとかした。
そーやって信頼を積み重ねながら輪に溶け込んでって。シジマはやっと安住の地を得た。
…シジマって姓もね。最初は「寝子島」だったんだと。
なんか島民に味方アピールするためらしーよ。…必死だったんだろーねきっと。
「寝」の字を「獅」に換えたのはある程度の地位築いてからだって聞いてる。
シジマは獅子島。魔除けの念を込めて。シジマは静寂。鎮めに通じる音として…。
(5枚重ねの一角が刺さったままのフォークを前へ向けて)ホラあーんしろあーん。
そしてイモくれ(そのままナイフを置いて山盛りのポテトににゅっと手を伸ばす)