陽がすっかり落ちたころ、工場と寝子電の騒音に混じって自家発電機の駆動する音が聞こえる。
穴と言う穴をキャンバスやベニヤ板でふさがれた第3倉庫――夜な夜な殴り合いの試合や、会合のようなものが開かれているという噂のここが、音の発信源のようだ。
自家発電機の電力で中は照明があるが、薄暗い。
そんなところで、今日も今日とて誰かしらがここに集まりにくる。
ひゃはは、散々出し渋ったバチだっつーの。
精々消化不良で悶々とした夜を過ごしやがれ。
もしくは――
(ツイ、と視線のみを常闇に向けて)
そこなニンジャにでも相手して貰ったらどうだ?
よォ、こんばんは。「いい匂い」のするお嬢ちゃん。
まぁ理屈で分かってても感情は如何ともし難いしな。
せめて後悔しない選択肢をとる努力をするこった。
(溜息を吐いて)
俺は基本的に姉ちゃんズの味方だが……
あの時は流石に元カレくんに同情したね、男として。
色々か。そりゃ誰しも生きてりゃ色々あるわな。
ではでは今日からオトモダチって事でひとつ。
あ、そのスマホ赤外線出来る?
(ポチポチ携帯をいじりながら)
気が合うな、俺も相当我が儘なんだ。
苦労するほど大変だったら勝手に離れてくから安心しとけ。
仲良くしたくなったらまた勝手に戻ってくるしな。
人付き合いなんざそんなもんだろ。