陽がすっかり落ちたころ、工場と寝子電の騒音に混じって自家発電機の駆動する音が聞こえる。
穴と言う穴をキャンバスやベニヤ板でふさがれた第3倉庫――夜な夜な殴り合いの試合や、会合のようなものが開かれているという噂のここが、音の発信源のようだ。
自家発電機の電力で中は照明があるが、薄暗い。
そんなところで、今日も今日とて誰かしらがここに集まりにくる。
いやいや俺は一度寝たら朝までグッスリだからな。
案外サクッとやられるかもしれないぜ?
(ニヤリと笑って自分の首を手で刎ねるジェスチャー)
そりゃ勿論強いに決まってんだろ。地上最強の格闘技が空手だ。
刃物で俺に勝ちたきゃ宮本武蔵でも連れてこいっつーの。
1つ助言するとすれば、自分の身を守る一番の方法は「自ら危険に近づかない事」だぜ。
それが出来ない人種が少なくないのは困りモンだが。
(やれやれ、とでも言うように肩を竦め)
あー俺は上に姉貴が5人いてなー。
よん姉……、もとい4番目の姉ちゃんがそりゃもう無茶苦茶するヤツでなー。
一昨年彼氏にフラれたときなんか――
(と、そこまでヘラヘラと話していたのだが急に脂汗をかきはじめて)
――いやホント、女ってすごいよね(遠い目)
まあ紅葉っつっても春生まれなんだけどな俺は。
へぇ、サキね。金髪碧眼だし外国人かと思ったが早とちりだったか。
ともあれ美少女とお友達になりたくない男子高校生は居ねぇのさ。
(言いながら携帯を取り出す。未だにガラケーだ)
なァに気にすんなフラれんのは慣れてる。
ま、精々嫌われないよう頑張りましょうかね。
(ケタケタ、とどこか楽しげに肩を揺らした)
(ロボに向けていた闘志を唐突に引っ込めて)
あー確かにあいつらは強いわなー。
完成直前のトランプタワー崩されたときは流石の俺も膝を屈したわ。
やっぱ今日はお前いいや、その気が無い奴とバトってもつまんねぇし。