陽がすっかり落ちたころ、工場と寝子電の騒音に混じって自家発電機の駆動する音が聞こえる。
穴と言う穴をキャンバスやベニヤ板でふさがれた第3倉庫――夜な夜な殴り合いの試合や、会合のようなものが開かれているという噂のここが、音の発信源のようだ。
自家発電機の電力で中は照明があるが、薄暗い。
そんなところで、今日も今日とて誰かしらがここに集まりにくる。
そうね、無謀だわ。
貴方って子は…。
あんまり危ない事をしては駄目よ。
取り返しのつかない事になったらどうするの。
あんまり心配させないで頂戴。
(溜息をついて
どんな獲物より…。
空手ってそんなに強いの?
刃物よりずっと強いのかしら。
(子首を傾げ
確かにそういう言葉もあるけれど、ね…。
傷つけ合う事は趣味ではないけれど
自分の身を自分で守れる様にはなりたくてね。
無茶は…そうね。しているかもしれないわ。
もう染みついてしまっていて、どうしようもないのよ。
…貴方の周りにもきっとそういう人がいるのね。
(何処か悲しげに視線を落とし
確かに女性の様な名前ではあるけれど
貴方に良く合っていると思うわ。
貴方が見せてくれた闘志も
紅葉も同じ赤いものだから。
私の名前は花風冴来よ。
メールアドレス?
ええ、構わないけれども…。
私とお友達になってくれるの?
さっきは好みじゃない、なんて言ってごめんなさいね。
私、貴方の事結構嫌いじゃないみたい。
きっと好きになれると思うわ。
(柔らかに笑んでみせる