陽がすっかり落ちたころ、工場と寝子電の騒音に混じって自家発電機の駆動する音が聞こえる。
穴と言う穴をキャンバスやベニヤ板でふさがれた第3倉庫――夜な夜な殴り合いの試合や、会合のようなものが開かれているという噂のここが、音の発信源のようだ。
自家発電機の電力で中は照明があるが、薄暗い。
そんなところで、今日も今日とて誰かしらがここに集まりにくる。
(折るつもりの極めをあっさり外されて意外そうに)
おお、関節外しも出来んのか。器用なヤツだな。
(即座に追い打ちを掛けようとするも降参の意を受けて立ち止まり)
あァ? んだよもう終わりかよー、ちょっと楽しくなってきてたのによー。
何か奥の手とか無ぇの? 刃物でも銃器でもいいからさァ。
(ぶちぶちと不平を漏らしながらもひとまず納得した様子で頭を掻き)
バァカ、空手に弱点なんか無いんだよ。
まーでもお前なかなかイケてたぜ。
喧嘩齧っただけの素人だったら再起不能にしてやろうと思ってたが、ちゃんと考えて動いてたしな。
ただその嵌め直した関節はあとでプロに診てもらったほうがいい。故障するかもしれんぜ。
(名前を聞かれて)
俺? 俺はナルカミカエデだ。
音の鳴るにゴッドの神、紅葉の楓。覚えたか?
で、そういうお前はどちら様だよ。
(花風の言葉にケタケタと笑い)
そうかァ? こんなもん軽い運動だろ。
女の方が色恋沙汰が絡むとよっぽど無茶するじゃねーか。
しっかしコロコロするのも駄目怪我するのも駄目じゃあもう口喧嘩くらいしか残らねェな!