陽がすっかり落ちたころ、工場と寝子電の騒音に混じって自家発電機の駆動する音が聞こえる。
穴と言う穴をキャンバスやベニヤ板でふさがれた第3倉庫――夜な夜な殴り合いの試合や、会合のようなものが開かれているという噂のここが、音の発信源のようだ。
自家発電機の電力で中は照明があるが、薄暗い。
そんなところで、今日も今日とて誰かしらがここに集まりにくる。
やってみたいこと、というのは、そこにいるスーツ男が言った『ファイトクラブ』そのもののことだ。
最近じゃ品行旺盛純粋培養の発想力欠如も良いところで、人生すべてが甘美なものだと信じ切った紳士淑女ばかりになってる。
そこにちょっとしたスパイスを盛り込みたいと思ったんだ。
まあ、結果はどうなるか分からんが、きっと面白いことになる。
試してみる価値はあるだろう。
武勇伝を語るほど、あいつらは強くなかった。
血を見るのに慣れてないんじゃないか、ああいう手合いは。
歯が折れただの血が出ただので、大騒ぎしてたぞ。